大津いじめ “自殺を幇助した容疑者”心の叫び届かず…なぜサインは見逃されたのか
産経新聞 7月16日(月)13時19分配信
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いじめ問題について会見する自殺した男子生徒が通っていた中学校の校長(左)と澤村憲次・大津市教育長=14日午後、大津市役所(写真:産経新聞) |
大津市の中学2年の男子生徒=当時(13)=が飛び降り自殺した問題は、学校や市教委の「情報隠し」に批判が集まり、教育現場への強制捜査という異例の事態に発展した。学校側は“兆候”を把握しながら「いじめ」ではなく「けんか」と結論づけ、自殺した生徒の心の叫びは最期まで届かなかった。いじめのサインはなぜ見逃されたのか。
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■わずか15分で自殺と結論
自殺の6日前の昨年10月5日。校内のトイレで男子生徒が同級生に殴られているのを女子生徒が目撃した。女子生徒からの連絡で駆け付けた担任教諭が男子生徒から事情を聴くと、生徒は落ち着きを取り戻し、こう打ち明けたという。「大丈夫。でも今日のは少し嫌やった…」
同日夜には担任や学年主任、生徒指導を担当する教諭ら5、6人が出席し、緊急会議が開かれた。担任の報告などを基に「生徒同士のけんか」との判断に至ったが、結論を出すまでの時間はわずか15分だった。
今月14日に記者会見した校長は「誰一人、いじめとは疑わなかった」と釈明したが、「問題意識が形骸化(けいがいか)していた」と対応の甘さを認めた。
■あきれと憤り
一方、自殺した生徒の父親(47)は「いじめを認識しながら学校側は放置していたのか」と憤り、教育評論家の尾木直樹さんも「教師が『いじめ』を疑わなければ、いじめられた生徒の叫びが届くはずもない。学校側の対応にはほとほとあきれる」と嘆く。
なぜ生徒のSOSは見過ごされたのか。市教委の担当者は「強制力のない独自調査には限界がある」とした上で、「調査には、かかわった生徒すべてへの配慮が必要となり、いじめと認定するには相当の覚悟がいる」と話す。
文部科学省は昨年6月、「児童生徒の自殺が起きたときの背景調査の在り方について」を通知。調査の留意事項として「他の在校生に知られないように」と求めており、教育現場が「萎縮(いしゅく)」し、「調査が中途半端になることも多い」(教育関係者)という。
ただ、今回のケースでは、生徒の自殺後に実施したアンケートで、「自殺の練習をさせられた」などとする記述が昨年11月の公表当初は伏せられ、同月初旬に実施した2回目のアンケートは存在すら明らかにされなかった。
■“自殺を幇助した容疑者”
「情報隠し」とも言える市教委や学校側の対応に批判が集まり、滋賀県警は今月11日、自殺した生徒への暴行容疑で捜索した。捜査を指揮する満重(みつしげ)昭男・生活安全部長は「何があったのか事実や原因を徹底的に究明すべきと考えた」と捜索の理由を述べたが、遺族の被害届を3度受理しなかったことへの批判をかわす狙いも見え隠れする。
別の捜査幹部は言う。「市教委や学校の対応はあまりにずさん。極端な見方かもしれないが、(両者が)自殺を幇助(ほうじょ)した容疑者との見立てもできる」
教育現場への異例の強制捜査。夏休みに入る今週末以降、在校生らへの聞き取りが本格化するが「受験に影響が出る」と不安を口にする保護者も少なくない。
ただ、自殺を防げなかったことを悔やむ声も在校生からは多く聞かれる。自殺した生徒と幼なじみだったという女子生徒は、取材に涙ながらに訴えた。
「不登校でも引きこもりでも、生きてさえくれていれば…」
最終更新:7月16日(月)13時30分
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