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246で |
“直感”のようなものが働いたとしか言いようがない。
深夜0時頃だっただろうか。渋谷の円山町の近くの交差点でひとり信号待ちをしていた時のこと。
ボクはべろんべろんに酔っ払っていた。なにせそれまで友人たちとビアガーデンと飲み屋をハシゴ。
生ビールのジョッキだけで8〜9杯は飲んだ気がする。もう視界はぐるんぐるんだ。
その時、ボクの真横をひとりの若い女性が自転車で通過していった。本当に一瞬の出来事である。
その女性は面白いことにボクの右腕に何かこう、自分の身体をわざと触らせるように過ぎていったのである。
「あっ!」とその時、思った。「あっ!」ってなんだよ。わからない。とにかく「あっ!」なのである。
女性が山手通りへ向かう坂の方へのぼっていく。ボクは近くに自転車を停めていてそれを取りにいく途中。急いだ。
すぐに発進してその女性を追いかけた。何かわからないが、あの人のことが凄く気になったのである。
いた。ピンク色のおしゃれな自転車をこいでいる。タイヤが細い、本格的なやつだ。対するボクは赤いママチャリ。
その女性は髪をクリーム色に染めていて複雑にピンで止めている。ファッションもおしゃれだ。
彼女を追い抜いて、ボクはつかず離れずな距離を保ったまま自転車でそのまま進んで行った。
これまた不思議なことに、彼女も同じ246方面。ずうっと同じ方向へ走っていく彼女を見てボクはなぜだか「やっぱりなぁ」と思った。
そんな気がしたんだよ。246に出たあとは高速道路下の暗い国道をひたすら多摩川方面に進む。
池尻大橋で思い切って話しかけた。もちろん自転車に乗ったまま横からである。「すいません……」。
するとビックリしたような顔をしつつもどこか「話しかけられるのを知っていました」というような表情で「えっ?」と振り向く。
「渋谷のBunnkamuraのあたりから乗ってきてた人ですよね?」。すると戸惑いながら「え、えぇ、そうですけど……」
ボクは信号待ちをしていた時にあなたにぶつかられたんです。と話した。責めるような感じではない。それでなんとなく覚えていたんですと。
彼女は「え、覚えていません。すいませんでした……」と謝った。「いや、いいんです。そういうつもりで言ったんじゃないんで」。
しばらく併走しながら会話をする。同じ三軒茶屋に住んでいるとわかった。しかもかなりご近所さんだ。
「たぶんですけど、美容師さんかアパレル関係の方ですよね?」とも聞いてみた。すると「そうです! 美容師です。なんでわかるんですか?」。
仕事帰りだという。正直、内心、自分でもビックリしつつ「いやぁ、とてもおしゃれだしそうだと思いましたよ……」と答える。
段々、楽しくなってきた。深夜に246を走るのってホントはかなり退屈な時間。
それがこうやって初めて会った人とおしゃべりしながら帰っているのだ。彼女は相変わらず少し警戒しているように見えたけど……。
ビアガーデンで飲んできたんです。でもね、まわりの友人は社会人ばっかりでね。どこかノリが合わないんですよ。
こんな遅い時間になんですけど、よかったら飲み直したいんです。そんなことを話したと思う。ボクの本心である。
それで思い切って「よかったらボクか君の家で一杯だけ飲みません? 初対面の人にこんなこと言うの図々しいとわかってるんだけど……」。
すると彼女は意外にも迷ったような素振りを見せた。え、えぇ〜。てっきり徹底拒否されるかと思ったのに。
「別に一杯だけならいいかな……」みたいな感じだ。変わった人、というか、こういうノリのいい人もいるんだなと思った。
しかしその後、しばらく走っているうちに彼女もいけないと思ったのか、結局、ボクが知っているお店で飲むことに。
長くなるので詳しくは書かないが、結局、そのお店で1時間くらい話した。ボクはまたしてもビール、彼女はカルーアミルクを注文した。
「袖触れ合うも……」なんて言うけど、ホントにこんなことってあるんだ。なんであの時、ボクは彼女を追いかけたか?
わからない。やっぱり“直感”としか言えない。
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