社説
商大飲酒事故 因習断ち再起の覚悟を(7月15日)
新入生が急性アルコール中毒で亡くなる最悪の結末となった小樽商大アメリカンフットボール部の飲酒事故は、部員や山本真樹夫学長らの処分が出て、一つの節目を迎えた。
上級生から注がれた酒を新入生が進んで飲む。これが習慣化し、事故の原因を成した―。大学は事故調査報告書でこうした見方を示した。
上級生が下級生を隠然たる力で支配する。この因習を今度こそ断ち切らなくてはならない。
それができなくては、全国の大学で繰り返されてきた悲劇はこれからも根絶できないだろう。
学校は社会の縮図といわれる。社会人もそうした空気を職場でつくっていないか、一度胸に手を当てて考えてみる必要がある。
ただ、こうした習慣は認めつつも、大学は事故調査委員会で「上級生からの飲酒の強要はなかった」と結論づけた。
新入生は進んで飲んでいたというが、それは本当に自発的で、強要はなかったと言えるのか。報告書を読んでもすとんと落ちない。
大学が根拠の一つとしたのは、部員たちの証言だ。
「1年生で飲酒の強要があったと回答した者は皆無だった」「『無理やり注がれた』『(飲むよう)あおられた』という印象を持った学生は皆無に等しかった」「上級生から無理しないよう言われた」
一方で、報告書は、飲み会を開くに当たって新入生たちは「4年生に肉を持って行き、酒をついでもらい飲むように、という旨の説明」を受けたとする。
こうした説明が「指示」と受け取られる余地はなかったか。疑問は解消されていない。
結論を出したのは、大学の内部委員会だ。小樽商大は今月中にも学外の有識者で第三者委員会を発足させ、再発防止策を検討してもらう。
学外委員会には、飲み会の全体状況に強要が全くなかったかも合わせて議論してもらいたい。
これからという時にわが子を失った親や友人たちの悲しみはいかほどか。遺族の気持ちをくんで、再発防止を徹底してほしい。
小樽商大は飲酒事故防止の啓発に力を入れる一方、学生の自主性を重んじて、事故前は学内での飲酒を禁じてこなかった。
事件を受けてアメフト部は廃部が決まり、全学で飲酒が禁じられた。
ひとたびこうした事故を起こせば、自主や自由を自ら狭めてしまう。
亡くなった学生も含めて9人が救急搬送されるという度が過ぎた酒席を設けた学生たちには、強く自分を戒めてほしい。