「美輪子さん、美輪子さん」-。毛布にくるまれた変わり果てた姿に、家族のおえつが響いた。12日、土砂崩れで一家ら6人が生き埋めになった阿蘇市一の宮町坂梨の古木国隆さん(49)方の捜索現場。発生から約13時間後の午後6時すぎ、少し前まで呼び掛けに応じていた妻美輪子さん(48)が救出されたが、親族の声にも反応はなかった。
土砂崩れ現場から女性を救出し、搬送する消防隊員ら=12日午後6時30分ごろ、阿蘇市一の宮町坂梨
「誰かいないか」。消防隊員の呼び掛けに、家屋の奥の美輪子さんから「コンコン」と応答があった。「生存者がいるぞ」。隊員が集まり、重機とチェーンソーの音が鳴り響く。だが、折れた柱や土砂が遮り、作業は思うように進まない。
「頑張れ、もうすぐだ」。必死に呼び掛けながらの救出活動。4時間がかりで、ようやく助け出したが、毛布の隙間からのぞく右腕は反応がなく、家族は泣き崩れた。
棚田に寄り添うように民家が点在する坂梨地区。激しい雨音と濃霧の中で、土砂崩れが起きたのは午前5時半すぎ。「『ゴゴゴゴ』という轟音とともに、真っ黒な山津波が押し寄せた。大木が立ち並ぶ林ごと、土砂が迫ってきた」と近くの小林弘道さん(62)。
午前10時、到着した消防隊員らが目にしたのは、杉が突き刺さり、横倒しになった古木さん方。中には、古木さん一家5人と、長男健太郎さん(24)の友人の工藤静香さん(23)が取り残された。古木さんと健太郎さん、工藤さんの3人は、午後4時すぎに相次ぎ救出されたが、既に心肺停止。工藤さんの母二美さん(54)は「迷惑かけて」と毛布にくるまれた娘の後を追った。
同7時すぎ、4人目の美輪子さんに続き、残る2人も変わり果てた姿で見つかった。
古木さんの弟、光教さん(47)は「みんな助かってくれと願っていたが…」と肩を落とした。
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