『黄巾†無双』(R-18)とともに、人気次第でどちらを優先して書くかについて調べるための第1話のみの試験的投稿のため感想を頂ければありがたいです。
処女作『真・恋姫†無双-白龍翔天-』他もよろしくお願いします。
第一話
※尺:一尺は日本換算で約30センチ。つまり八尺で約180センチ。Wikiでは七尺七寸で177センチほどと書かれている「
※榻頓の「榻」:本来は「きへん」ではなく「あしへん」、環境依存文字のため代用
「なんだよ、これ……」
幼馴染と遊びに出かけ、帰ってきた先で見たのは燃え盛る自分の村。幼い彼らに出来ることなど無く、火が収まるまで立ち尽くすしかなかった。
いっそ自分も殺してくれたらと何度思ったことだろう。
けれど、彼は強かった。
(オレみたいな境遇の子供がこの世界には何人いるんだろうか)
いや、彼が冷静になれたのは、隣で泣き声をあげる幼馴染がいたからだったのかもしれない。
もし彼一人しかいなかったのなら。
ほぼ間違いなく、生きる希望を失って果てていただろう……
* * *
時は後漢。
王朝の権威はもはや形骸化し、各地には私腹を肥やす役人が跋扈する。その横暴に耐えかねた民草は立ち上がる……体の一部に黄色い布、『黄巾』を巻き付けて―――
1.旅人
一人、男が荒野を歩く。
齢はおそらく二十歳前後。身の丈は八尺(※)程だろうか、腰には一対の刀―――青い鞘のほうを蒼龍、赤い鞘を炎龍と言った―――を、逆側には水筒である竹筒をぶら下げている。
旅人とは思えない装備であると、誰もがそう思った。
傍目から見て鍛え抜かれた筋肉とはいえ刃物を通さぬはずはなく、傷を負うは必然。しかし本人は「大丈夫だ、問題ない」と言い張り、他人の心配を余所に旅を続けていた。
彼が鎧の類を身に着けない理由。
それは、『氣』である。
氣を自在に操ることができ、体中に均等に纏えば見えない鎧として。それは通常の鎧より少し堅い程度だが、一点集中すれば―――人はそれを硬気功と呼ぶ―――如何なる猛将の得物さえも通さない。ただ、場所を外せば豆腐のようにさっくりスパッと斬れてしまうという諸刃の剣ではあった。
さて。
彼は傭兵として、定まった主を持たず各地を転々とする。
まだ黄巾賊は存在しなかった幼い頃、に賊の襲撃を受け壊滅した青州東莱郡黄県にある故郷を起点に、気の向くままに行ったり来たりを繰り返す。
「どこに行こうか」
自らの手で形だけ復興させた故郷を背に呟く。
「大陸の中央部は一回行ったし、というかまずは愛馬が必要か……正直ずっと徒歩は辛い。なら資金繰りをしないとな。ま、こんな世の中じゃ引く手数多ですぐに貯まりそうだけど」
ならば幽州か涼州と、青州から近い幽州を選んだ。どちらにせよ涼州も訪れるつもりではあったが。
「んじゃ、行ってきます」
その言葉は、邑に住むちびっ子たちと、幼馴染へ向けて。
呟いて、彼は歩を進めた。
2.幽州
……どうしてこうなった。
「お前らが任官希望者か!?」
目の前にいるのは桃色の髪をした少女。
「然り。ですが仕官ではなく客将として扱っていただきたく」
隣にいるのは水色の髪をした少女。
「隣のお前もか?」
「ん? ああいや、オレは傭兵だ。基本的にはそうなんだが……あんな高札を見たからにはしばらく客将としていろいろ手伝おうか、と思ってな」
「じゃ、とりあえず武を見せてもらおうか。実力を見せとかないと新参者には兵たちが従わないだろうから」
それはいいんだが……彼女が相手をするようだ。子龍にせよオレにせよかなり強い部類に入るんだが、太守が負けるところを堂々と見せていいんだろうか。……まぁいいや。
「姓は太史、名は慈、字は子義だ」
「某は趙子龍と申す」
「子義に子龍か…私は公孫賛。字は白珪だ。よろしくな」
外見は申し分ない。美人と言っても過言ではないだろう……が、美人なのに普通という印象を受けるのはどうしてだろうか。
「着いたぞ」
白珪に促され訓練場へ向かう。……城内はなかなか綺麗だ。綺麗と言っても整理された、とか物が少ない、という意ではあるが。
「さて、どっちから始める?」
「では某から。勝った方が子義と戦うというのは如何ですかな? 子義、すぐ行くから少し待ってろ」
先にさっさと終わらせたかったんだが。しょうがないか。
「……随分な自信だな? よし、子義。審判を頼む」
訓練場を囲んでいる兵たちを見渡してたら審判役を仰せつかった。必要ないと思うんだけどな。
「それでは……始め!」
合図と同時に子龍が地を蹴り一足で白珪の間合いに。
一閃。子龍の槍が首筋を目掛けて放たれる。
「くぅっ……!?」
白珪はそれを辛うじて剣で弾く。正直一撃で終わると思ってたけど。
だが子龍は反撃の隙を与えない。
「ハイハイハイーーーっ!」
子龍の武における要は速さである。
つまり残像が残り槍が何本もあるかのような速さと手数で相手を惑わし本命の一撃で相手を突くということだ。
……あいつ本気出してねぇ。
口元が笑ってるし。
「次は私の番だ! くらえぇっ!」
槍は懐に入られてしまうと攻撃が出来ない/し辛いため、白珪は槍を掻い潜ろうとするが子龍は当然それをさせない。
「甘い!」
「くそっ……」
悔しがる白珪。だけど……
「なぁ子龍、白珪をいたぶって楽しんでないでさっさと終わらせてくれよ。腹減ったんだけど」
「すぐ行くとは言ったがあまりにも早いのもどうかと思った故、少し遊ぼうと思ったのだがな。仕方あるまい……行きますぞ、白珪殿」
「あ、あれで手加減してたのか……?」
「それは自身の目で確かめられよ。……ふっ!」
「なっ……!」
まさに神速の連撃が放たれ、白珪に為す術は無く。
「うわっ!」
持っていた剣が弾き飛ばされ槍が首元に突き付けられた。
「そこまで! この勝負、趙子龍の勝利とする!」
「本当に手加減してたんだな……私は本気だったのに」
相手が悪かったとしか言いようがないな。それに最初がいい勝負に見えていただけにあそこまでの力量差を見せつけられたら落胆も激しいだろう。まったくもって、
「子龍は性格が悪いな」
「口に出てるぞ。それと、褒め言葉として受け取っておこうではないか」
褒めてねーよ。白珪がいじけて地面に文字書いてるぞどうしてくれるんだ。オレは気にしないけど。
「では子義、始めようか。ああ白珪殿、審判を頼みましたぞ」
「いいだろう。ま、今回もオレが勝つけどな」
腰元から蒼龍を抜き、構える。
「そう言っていられるのも今のうち、だ」
それに応えるように子龍も槍を構え、
「始めっ!」
仕合が始まった。
最初は様子見のようで仕掛けてこようとしない。……ならこっちから行くか。
1歩。
また1歩。
子龍との距離を悠々と歩き、詰めていく。
……そろそろ間合い、だな―――
ふっ、相も変わらず余裕を見せつけてくれるな。
自らの武に自信を持つ者にとってそれは憤懣遣る方ないものであるが……
力量差を知らずして踏み込むは愚者、それを理解して尚且つ進むは強者。
極稀に例外として力量差を理解しながら進んでくる無謀な者もいるのだが、子義は強者だ。
そろそろ子義が某の間合いに入るが、間合いに入った瞬間の一撃などくれてやらんぞ―――
『ふっ!』
予想通り。一見待ちに構えてはいるが間合いに入るのを待つのではなく自ら間合いを詰める。妥当な考えだが……お前の性格の悪さは知っているさ。
キィンッ、と甲高い音を立てて槍が外に弾かれる。
そこへすかさず横撃をくらわせて―――
(くっ!?)
横撃を何とか防いだは良いがこのままではやられかねんな……
体勢を立て直すため退こうとした、その刹那。
「っ……!?」
槍を、完璧に手元から弾き飛ばされた。
(何故だ! 横撃は防いだはず―――)
「横撃を防いで油断したな。はなっからその一撃は囮、本命は……鞘だ」
……そうか、そういうことだったのか。
「フッ……やられたよ、子義。さすが、某の認めた男……恋人として申し分ないな」
「……は?」
「うん? ああ幼馴染がいるのか。ならば愛人でも構わんよ」
「子龍にそんなことを言われたのは初めてだよ」
言ってなかったか。子義の反応を見る限りそのようだな。
「ならば今ここで―――」
「えっと、いいか?」
「―――むぅ。白珪殿、空気を読むべきところではないですかな?」
「いやえっと……。と、とりあえずこの勝負、太史子義の勝利!」
しかし、子義には敵わんな…毎回毎回、武人としての矜持を傷つけられたようであり、このような強者がいたのかと、嬉しく思う気持ちもある。
「これでいいか?」
「ああ……十分だ。各地に黄巾を迎えながら烏丸や鮮卑を相手にするのはかなりつらかったし兵たちの士気も下がってた。お前らの加入で盛り返すと思うよ。じゃ、明日までに役割を決めておくから今日は歓迎会にでもしよう。部屋については後で案内させる」
ふぅ、これで一先ず衣食住には困らないな。
「近接戦闘もできるが俺の本業は弓だ。そこらへんも考慮に入れておいてくれ」
「わかった。じゃ、行くぞ」
子義……弓が本来の得物だと今知ったのだが?
3.烏丸
白珪の下に居ついてから七日。
隊の編成も終わり、オレの指揮のもと訓練を行っている。
そして、今から軍議。客将が軍議に出ていいのかと言われるとダメなんだとは思うがやはり人が足りないのだろう。
「よし、ここらで切り上げるぞ。武具の手入れを怠らないこと、いいな?」
訓練が終わった後は兵たちに手入れをさせるように言う。もちろん長持ちさせるためであるが、それ以外にも戦場での生存確率を少しでも上げることが出来たらと思いやらせている。
『はっ!』
「いい返事だ。じゃ、いってくるわ」
『行ってらっしゃいませ!』
議題は『異民族』、烏丸について。
ここ暫く国境周辺にある邑への襲撃がなかったため、そろそろ来る可能性が高いらしい。新参者が、頭の固い―――偏見だが―――文官どもに力を示す絶好の機会。あわよくば昇給で愛馬購入。もしかしたら恩賞で愛馬獲得。あるかもしれない。
「それで、国境周辺に子龍と子義を配置、襲撃があったら出陣。細かな裁量は二人に任す。いいな?」
「承知」
「わかった」
「よし……私にとってこの幽州の民は家族同然。その命を奪われてたまるか」
「……」
家族、か。
「……ふむ。では、我々は軍備を整えに行きますゆえ失礼致す。行くぞ、子義」
「ああ」
促され、部屋を出る。子龍は俺の横に並び、歩調を合わせて歩く。
「先程はどうした?」
流石、というかなんというか……鋭いな。
「『異』民族ってなんだろうと思ってな」
「ほぅ? それはどういうことか詳しく聞かせてもらえまいか」
難しいことじゃなく、説明すれば誰でもわかる。誰でもわかることだが―――普段は意識しないこと。
幽州に限らず、異民族という言葉がただ単に自分らと生活様式や言語が違うということではなく、平静下でも排除すべき対象とされている現状に大いに疑問を抱く。
「言葉や肌の色が違うから異端扱いされる。何故だ? 同じ『人間』じゃないか」
此方から烏丸に行って略奪するということはあまりない。だが此方には、賊―――この場では食うに困って蜂起した者たちを表す―――がいて他者から略奪行為を行う。
悪いのは誰だ。生きるために奪うことを罪とするならば地主や県令か、その原因を作り出した王朝か。
子龍は言葉を発さず、視線で続きを促してくる。
「賊と違って烏丸は烏丸にしかない物を持っている『かも』しれない。住んでいる場所が違うからな。だから、休戦でもして交易をした方が互いにとってもいいだろうと思ったわけだ。功績をあげてない新参者が言える話じゃないからさっきは黙ってたけど」
烏丸は基本遊牧民族であり、食料を求めてたびたび移動する。
定住せずそのため殆ど食料を生産しないから、不足が生じれば略奪という手を使ってくるのだ。
では人的交流や、向こうの資源と此方の糧食などを例として交易による物資の交換などをすれば相互にさらなる発展をもたらすだろうし、理解しあえる部分が出てこないとは限らない。
それに騎馬主体の幽州軍が同盟を結べば向かう所敵なし状態だし、騎射などの技術も向上させることが出来るはずだ。
「……そうか。では尚更今度の戦は重要になるな」
老若男女いればオレと同じような考えの奴がいてもいいはずだから、そして、無為に犠牲者を増やさないためにも、オレは戦う。
殺された命への恨みは決して消えるものではないだろう。だがそれを乗り越えていけるならば、互いの未来はきっと明るい。
しかし、かといって今回の戦で負ければ奪われるし、引き分ければ何度でも襲ってくる。
勝って実力を認めさせ、交易を持ちかけるのが最良か……当然対等な条件で。
「……そういえば子義は何故愛用の弓を持っておらぬのだ? 本業と言っていただろう」
「ん? ああ、普通の弓じゃ俺の力に耐えきれず三、四回打つと壊れるからな。俺が使える弓とはまだ出会ってないんだ」
「なんとまぁ……」
驚いたような、呆れたような視線が俺に向けられる。
「次の戦じゃ弓を多めに用意してもらって乗り切るさ」
「白珪殿も大変だな、財政的に」
「それに見合う成果を出せばいいだけだろ」
「それもそうか。……おっと話し込んでしまったな、もう某の私室前だ。では、またな、子義」
「ああ、おやすみ」
さて、オレも刀の手入れをして寝るか……
軍議の翌日、早馬が届く。
『襲撃がありました! 現在国境警備隊が応戦! 善戦中ではありますが、至急応援を頼むとのこと!』
だそうだ。
「しかし昨日の今日で出陣か」
「良いではないか。力を発揮する機会が早まったのだ、子義の考えが現実のものになるのも早い方がいいだろう?」
今現在、国境周辺に救援として到着、烏丸を押し返し始めているところである。
「……そうだな。行くぞ、子龍」
最後の一押しをするために戦場へ向かおうとする。
「子義」
子龍に止められた。振り返れば子龍の目は真剣な光を宿しており、普段のような様子は欠片もない。
「貴公は某の背中を預けるに足る、信頼できる人間だと、共に過ごした日々は少ないながらもそう感じた。―――故に、我が真名を預けよう」
言葉を区切った子龍の両手が俺の頬を包み込み、彼女の顔が近づいてきて―――
「んっ……ふぅ。某の真名は、『星』だ」
唇に温かく柔らかな感触。
「……オレの真名は『迅』だ」
「『迅』か…良い名だな。某と相性が良さそうなところがまた」
『迅』とは速さ。確かに間違っていない。
「俺自身は速さとはかけ離れてるんだけどな……」
オレは力と技術―――それも星との戦いで鞘を使ったような小手先のものだが―――に重きを置く。かといって速さを無視していいわけでないからそれなりに速いはず……星には敵わないけれども。
「無粋なことは言わず迅の真名と某の特長が一致したということで良いではないかな。それに、互いの短所を補い合うのもよかろう」
「だな、確かに星の言う通りか、済まなかった」
「気にするな。では、行くとしようか、迅」
「ああ」
4.交渉
「私が酋長の丘力居でございます。……して、お望みとは如何に?」
我々は漢で内乱が多発しているのと同様に決して一枚岩ではない。
今回は丘力居様をはじめ私も部下の暴走を止めることが出来ず、幽州軍と対峙することとなった。
そのまま幽州の軍と一戦交え、敗北。多数の捕虜は解放するため交渉の場を持ちたいとの使者が送られてきた。
不思議に思う。今までならば捕虜は殺されるか、奴隷として苦役を強いられてきた。
加えて前線の二将―――二人とも初見だ―――は今までの幽州にはなかった“圧倒的な”武を発揮し、戦況がいとも簡単に覆されたのだ。
ならば我々を追い詰めることも容易いだろうに、彼らはそれをしなかった。だからこそ、興味深い。傾聴しようではないか、目の前にいる男の口からどのような言葉が紡がれるのかを。
「我々の望みは――――――交易だ。対等な立場でのな」
「……それは具体的にどのような?」
交易、それも『対等』ときたか……面白い。
「そちらは特産物、動物の毛皮や馬、何でもいい。騎射技術が伝われば一番ありがたいがな。主に此方は糧食などを提供しよう。『飢える』から『襲う』のだろう? あとは人的交流。相互の価値観を理解して今後うまく付き合っていくための、な」
「……それは」
面白い、どころではない。そんな陳腐な言葉で言い表すことは出来そうもない。
他と比べて随分と毛色が違く―――
「この話を断ったとしても捕虜を害するという気はない。如何だろうか。今結論を出してもらわなくとも構わないよ」
―――興味深いと、この男のことをもっと知りたいと。そう、思ってしまった。
「一筋縄ではいかないと知ってのことですか」
「無論。幽州太守は人が良いからな、彼女が率先して君たちと関わっていけば自ずと民もついてくるだろうさ」
「では、今この場で返答を。いいでしょう……その話を受けさせていただきます」
交渉は、応じた烏丸と幽州軍の両陣営の中間地点で行われる。互いに護衛は一人だけ。
烏丸の長はどんな大男かと思っていたら、来たのは短髪に中性的な顔立ちの……どっちかわからん。女性ならば美女と言っていいだろうし、男性なら美男といっても過言ではないだろう。
ともかく此方の要望を伝え、その返答を待つ間、護衛の少女から視線をずっと感じていた。
それは不快なものではないが好意的なものでもなく、興味といった部分が大きいように思われる。
さて。
今、結論を出す必要はないと伝えたのだが……
「いえ、今この場で。いいでしょう。その話を受けさせてもらいます」
大多数の生活が保障され、かつ対等という条件ならば即断即決ときた。
若くして長となった判断力と胆力は伊達ではないようだ。
「そうか。それなら我々は捕虜を解放し、幽州の太守にこのことを伝えよう。国境周辺の住民を納得させるまで時間がかかるだろうから、兵は配置させてもらうけど。いいか?」
「ええ、かまいませんよ。では、榻頓!」
「はっ!」
「貴女には捕虜受け取りの見届けのため、彼への同行を命じます。よろしいですね?」
「承知いたしました」
他に人を呼ぶのではなく自分の護衛を同行させるのは、信用されているととって良いのだろうか。まぁ、そこは俺の関知するところじゃない。
「オレは太史子義だ。では行こうか、お嬢さん」
「榻頓です。以後お見知りおきを」
榻頓はオレから見れば小柄な女性、だが物怖じすることなく毅然とした態度、眼差しで此方を見据えてくる。
……護衛兼次代の酋長候補と言ったところか。彼女の価値観が少しでも多様化するならば、今後化ける可能性が高いな。
子龍と、丘力居と少し言葉を交わした榻頓を伴い、自陣への道を歩む。
さぁ、白珪に伝えに行こうか。
5.旧知
「確かに細かな裁量は任せるとは言ったけどなぁ」
「争いはなくなるし国は富む(かもしれない)し、内政と賊に専念できるんだから一石四鳥だろう」
「今、小声で『かもしれない』って付けなかったか? ……まぁいっか。服従という形じゃないのには主に文官どもにとやかく言われそうだがそこらへんは上手く纏めてみせるさ」
人が良い白珪に話を通し、捕虜を解放するように言った。
予想通りというかなんというかそれを受け入れてくれ、榻頓の所へそれを報告に行くところである。
……っと。
「失礼します! 太守様にお会いしたいと、太守様の友人を名乗る三人連れの者たちが面会を願っています! 如何致しましょうか」
「友人……三人連れ?」
「はっ! 特徴で言えばその少女は……桃色の髪をしていました!」
「桃色? ……あっ」
心当たりがあるのだろうか、白珪は走り去っていってしまった。
「どうする?」
「そうだな、我々も行こうではないか」
星も興味があるようで、折角だしついて行くことにした。
文官の任官希望者なら白珪も少しは楽になるんだろうけど。
武官なら手合わせしてみたい。そろそろ星にも負けそうだ、手は尽きてきたし。
何かを掴む切っ掛けになれば。
そんなことを考えているうちに城門へ辿り着く。
兵士の言った通りそこにはふわふわした雰囲気の桃色髪の少女。それに加えて偃月刀を携えた黒髪の美人と背丈に合わぬ蛇矛を抱えた赤髪の少女。
偃月刀はいいとして、蛇矛か、あのちびっ子……趣味悪いと言うかえげつないと言うか。
刀身のくねくねした蛇矛で斬り付けたれたら治療もろくに出来ずに化膿やら感染症やら、楽には死ねないだろう。
ま、そんなことより。
「……かなり強いな、あいつら」
「ふむ。いい勝負と言ったところだろう」
話が終わったようで、白珪が満面の笑みで近づいてくる。
「紹介するよ子義、子龍。彼女は同学の旧友、劉玄徳。後ろの二人は旅の途中で出会った者たちで、義姉妹の誓いを結んだそうだ」
「劉玄徳です」
「関雲長と申します」
「張益徳なのだー!」
おお、元気がいいな。やっぱりちびっ子は元気があってこそだ。
……いかん、思考がオヤジっぽくなってしまった。
まだ二十歳過ぎたばかりなのに。
「太史子義だ。よろしく」
「某は趙子龍。以後お見知りおきを」
さて、手合わせでも頼み込むとするか。
尺についての説明は後ほど訂正いたしますのでご容赦ください。
環境依存文字の代用文字以外で誤字脱字がありましたらご一報ください。
感想を頂ければ幸いです。
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