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   旅立ち(2)
「レン! 遅いよ!」
 少女は腰程まである白髪をフワフワと逆立てながら、少年こと、レンに言った。しかし、レンはと言えば、少女が怒っていること等、何処吹く風。先程と同じ笑顔で、
「えへへ。ごめんごめん。コフィーの家族にはお世話になったからさ、しっかり挨拶しとかないとね」
 と、答えた。
 コフィー、とは、先程店の前でレンと言葉を交わしていた少女のことだ。
 レンの両親はどちらも冒険者だったが、十年前の魔物大侵攻の際、魔物たちのボスを倒すという、大偉業を成し遂げるのと引き換えに、この世を去った。この当時、二人はまだ二歳であり、幼くして路頭に迷うか、と懸念されたが、二人の両親と昔からの親友であった、コフィーの両親が、二人を引き取り、育ててきたのだ。
 今日は、そんな二人の十二歳の誕生日である。
 双子の兄のレンは真名をセイレンというが、近接戦士であった父親の才能を色濃く受け継いでおり、同年代の子供には最早並ぶ者はいない。十歳にして既に、一人で同時に五体の《ツノガエル》とを倒すことが出来たと聞けば、みな驚くだろう。
 《ツノガエル》と言えば、新米冒険者がよく力試しに挑む下級モンスターである。が、それも、多くて二、三体だ。元々素早さが高い《ツノガエル》が五体も集まれば、新米冒険者ごときが一体ずつの動きを見切ることは難しいだろう。ましてや、その幼い身体では、一撃でも当たれば、即致命傷になりかねない。
 つまり、レンという少年は、文字通り全方位から襲い来る攻撃を全て避けきり、しかし、敵を確実に叩く、という身体能力と技術を十歳にして会得していたのだ。
 そして、レンの双子の妹。真名はレイスイだが、みんなからはレンとセットで、レイと呼ばれている。兄と同じ白銀の髪を腰まで伸ばし、性格を表すように、少々キツめの目。それでいて、どこか愛らしさを思わせる顔立ちをしている。
 ただ、酷い人見知りで、レン以外とはまともに口も利かないという、欠点がある。特に、何故かコフィーに対しては、より冷たく接している節がある。
 と、少し歪んだ美少女ではあるが、彼女の秘める膨大な魔力は、生前、ハイプリーストとして名を馳せた母を思わせる。
 勿論、その魔法の威力たるや、無くした片手を再生させる程である。
 そんな二人は、今日で十二歳となり、漸く冒険者としての第一歩を踏み出したのだった。
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