アルパインクライマー佐藤裕介

- 大学生の頃にすでにヒマラヤを経験されて。

はい。2年生の夏にパキスタンの遠征に行きました。その時ぼくは実力がないんだけど、やる気だけはあって。連れて行ってもらったという形ですね。

- 昔から体力はあったほうですか。

目を見張るほどあったとは思いません。サッカー部でも補欠寸前でしたし、特別な運動神経があったわけでもありません。そんな中で持久力はあったほうだと思います。

- アルパインクライミングの分野で注目を集める佐藤さんですが、
フリークライミングでもかなりのレベルに達している。たとえば遠征の中でアルパインとフリーの登り方を関連付けることはあるのですか。

フリークライミングで挑む壁というのは本当の限界を試すところ。なので遠征中の活動では特に強いこだわりを持っていません。でもスピーディーにシンプルに壁を登ってゆくには絶対にフリーの能力が高くないといけないわけです。その自分の能力のなかで、フリーのほうが早ければフリーで、エイドが早いようならエイドでということになります。あと、やっぱり思うのはフリーの能力が高ければ高いほど、壁と向きあったときに余裕が出てくるんです。そこで時間に余裕が持てたり、ランナウトしても大丈夫ということにつながるんです。それと僕自身がスポーツ(フリー)クライミングを好きでやっているということです。クライミングをしている4月から11月くらいまでで、その中でスポーツやトラッド、沢登りなどを楽しみます(遠征以外)。ぼくはそれが義務感というよりは、それをやりたくて楽しくて。そしてスポーツクライミングをしている時ぼくはスポーツクライマーとして活動しているのです。なので、たとえば岩場で「アルパインクライマーにしてはけっこう登れるね」などと人に言われるとがっくりします。
フリークライミングは僕にとって遠征に行くためのトレーニングではなく、ぼくの人生の中でかなり多くのウェイトを占める特別なものなんでしょうね。

- ひとつのことに情熱を注ぎ続けることは苦ではない。

情熱を持つのをやめろと言われるのが苦ですね。もしも週末クライミングに行けなければ、それは苦痛以外の何者でもありません。なるべく自分の人生を充実させていくために、やりたいことを中心にやるしかないかなと。とはいえ子供が生まれて、平日にお風呂を入れているなどしていますよ。

- 自分自身のことをどんな性格だと思いますか。

いい加減な性格で飽き症です。ひとつのことだけを継続してやれと言われても飽きてしまって投げ出してしまうのでしょうけど、クライミングのいいところはアルパインから沢登り、スポートクライミング、トラッドクライミングもあってそれぞれに飽きる暇がないんです。それに追求すれば追求するほど深いものがあって、ぼくはクライミング全体に関わっていて本当によかったと思っています。

- クライミングに夢中になっている趣味は。

釣りは継続的に興味のある遊びなのですが、今はクライミングに忙しすぎてそこに時間や労力を割くことはできません。あとはスキーも興味があって登山の一部として活用できるので、高校生の頃はテレマークスキーをやっていました(現在は休止中)。もう少し時間に余裕が出来たら復活したいですね。

クライミングイメージ