http://news.livedoor.com/article/detail/4960434/
全力でやるからこそ何かが起きる。観客を感動させることもできる。その意味で、今大会、印象に残った3人の選手を紹介したい。 一人目は聖光学院の背番号17・中村将太。履正社戦の6回1死一塁、伝令がマウンドに行くと、中村はブルペンへと走った。投球練習をしていた芳賀智哉に何事か伝えに行ったのかと思いきや、そうではなかった。「あのときは浜風が強く吹いていたのに、ライトが定位置にいたんです。風で前に落とされるのが嫌だった。ベンチから叫んでいたんですけど、聞こえなかったので近くまで行って伝えました」 ベンチから飛び出したのは自分の判断。それも理由があってのことだった。「甲子園は(ベンチから出ると)注意されるじゃないですか。だから、ブルペンに行く感じにしたんです」 大きな声、ジェスチャーでも指示が伝わらない。かといってベンチから出るわけにもいかない。考えた結果の行動だった。4年連続出場の常連校らしい好判断。中村の指示の後、ライトに打球は飛ばなかったが、素晴らしい気づき力だった。
二人目は天理のライト・井上昇亮。チームとしては、ほぼカバーリングの意識がない天理だが、井上だけはバックアップをくりかえしていた。レフト前安打でレフトが二塁に返球する際にも、レフトとセカンドの延長戦上に入る。ファーストのすぐ後ろまで来ていたこともあった。「2年生の秋にレフトを守っていたとき、ライト前ヒットの後のセカンドへの返球がそれたことがあったんです。そのときはカバーに行っていなくて、バッターランナーを二塁まで行かせてしまった。それ以来、どんな打球でも進ませないためにやっています」 センバツでは背番号16だった井上。背番号9で戻ってきた甲子園で1打数1安打1四球2犠打の活躍ができたのは、こういう小さなことを積み重ねてきたからに他ならない。「試合に出させていただくことがありがたいんです。だから、たとえ打てなくても、ミスをしてもひたむきにやっていこうと思っていました」 奈良大会ではライトの守備位置に落ちている枯葉などを拾っていたという井上。他人がやらないから自分もやらなくていいということはない。周りに流されず、やるべきことをしっかりやることが大事。野球の神様は、どんな小さなことでも見ていてくれている。
そして、三人目は関東一の宮下明大。3回戦の早稲田実戦のこと。8回無死一塁で捕手へのファールフライに終わるが、アウトになり、ベンチに戻る前に捕手のマスクを拾い、そっと手渡したのだ。打席途中にはしばしば見かける光景だが、アウトになった後に拾うのは珍しい。しかも、この日の宮下は死球が2つ。内角をたびたび要求する捕手に怒りを覚えてもおかしくない状況だった。「いがみ合ってもしかたがないじゃないですか。相手だからって、冷たい態度をとることはないです。死球で怒り? 全然ないです」 四番に座り、1、2回戦で2試合連続本塁打を放った宮下。打力はもちろん、態度や行動も主砲にふさわしいものだった。
ちょっとした行動、ちょっとした気遣いが見えるだけでも心が動かされるのが人間。それがスタンドからわかれば、見ていて幸せな気持ちになれる。野球だけうまければいいのではない。野球がうまくて、人としても気づける人間――。そんな球児が増えれば、必ず野球のプレーや内容も変わってくるはず。来年は、一人でも多くの“気づける”高校球児に出会えることを期待しています。
(文=田尻 賢誉)
left wing
のだらけた伊藤塾ができて経営者が金満になってから
国内社会は変質したのか?
天理高校の森川監督は
もう二度とこんな今回のようなチームはつくらないと
言っていたそうだが
だらけたプロ意識の蔓延した今回の甲子園についての
指摘を見れば決してその指導も間違っていたとは
言えないと思う。
全力でやるからこそ何かが起きる。観客を感動させることもできる。その意味で、今大会、印象に残った3人の選手を紹介したい。 一人目は聖光学院の背番号17・中村将太。履正社戦の6回1死一塁、伝令がマウンドに行くと、中村はブルペンへと走った。投球練習をしていた芳賀智哉に何事か伝えに行ったのかと思いきや、そうではなかった。「あのときは浜風が強く吹いていたのに、ライトが定位置にいたんです。風で前に落とされるのが嫌だった。ベンチから叫んでいたんですけど、聞こえなかったので近くまで行って伝えました」 ベンチから飛び出したのは自分の判断。それも理由があってのことだった。「甲子園は(ベンチから出ると)注意されるじゃないですか。だから、ブルペンに行く感じにしたんです」 大きな声、ジェスチャーでも指示が伝わらない。かといってベンチから出るわけにもいかない。考えた結果の行動だった。4年連続出場の常連校らしい好判断。中村の指示の後、ライトに打球は飛ばなかったが、素晴らしい気づき力だった。
二人目は天理のライト・井上昇亮。チームとしては、ほぼカバーリングの意識がない天理だが、井上だけはバックアップをくりかえしていた。レフト前安打でレフトが二塁に返球する際にも、レフトとセカンドの延長戦上に入る。ファーストのすぐ後ろまで来ていたこともあった。「2年生の秋にレフトを守っていたとき、ライト前ヒットの後のセカンドへの返球がそれたことがあったんです。そのときはカバーに行っていなくて、バッターランナーを二塁まで行かせてしまった。それ以来、どんな打球でも進ませないためにやっています」 センバツでは背番号16だった井上。背番号9で戻ってきた甲子園で1打数1安打1四球2犠打の活躍ができたのは、こういう小さなことを積み重ねてきたからに他ならない。「試合に出させていただくことがありがたいんです。だから、たとえ打てなくても、ミスをしてもひたむきにやっていこうと思っていました」 奈良大会ではライトの守備位置に落ちている枯葉などを拾っていたという井上。他人がやらないから自分もやらなくていいということはない。周りに流されず、やるべきことをしっかりやることが大事。野球の神様は、どんな小さなことでも見ていてくれている。
そして、三人目は関東一の宮下明大。3回戦の早稲田実戦のこと。8回無死一塁で捕手へのファールフライに終わるが、アウトになり、ベンチに戻る前に捕手のマスクを拾い、そっと手渡したのだ。打席途中にはしばしば見かける光景だが、アウトになった後に拾うのは珍しい。しかも、この日の宮下は死球が2つ。内角をたびたび要求する捕手に怒りを覚えてもおかしくない状況だった。「いがみ合ってもしかたがないじゃないですか。相手だからって、冷たい態度をとることはないです。死球で怒り? 全然ないです」 四番に座り、1、2回戦で2試合連続本塁打を放った宮下。打力はもちろん、態度や行動も主砲にふさわしいものだった。
ちょっとした行動、ちょっとした気遣いが見えるだけでも心が動かされるのが人間。それがスタンドからわかれば、見ていて幸せな気持ちになれる。野球だけうまければいいのではない。野球がうまくて、人としても気づける人間――。そんな球児が増えれば、必ず野球のプレーや内容も変わってくるはず。来年は、一人でも多くの“気づける”高校球児に出会えることを期待しています。
(文=田尻 賢誉)
left wing
のだらけた伊藤塾ができて経営者が金満になってから
国内社会は変質したのか?
天理高校の森川監督は
もう二度とこんな今回のようなチームはつくらないと
言っていたそうだが
だらけたプロ意識の蔓延した今回の甲子園についての
指摘を見れば決してその指導も間違っていたとは
言えないと思う。