東北のニュース

焦点 非常食、品薄深刻 沿岸部再備蓄に苦慮

フル稼働状態で生産している「缶入りパン」。関東や西日本の自治体、事業所からの発注が多い=6日、栗原市一迫柳目

 アルファ米や缶入りパンなど非常食の需要が全国的に高まり、品薄状態が深刻になっている。首都直下地震や東海地震などに備え、関東や西日本で大量に調達する自治体や企業が急増し、供給が追いつかないためだ。東日本大震災で被災した沿岸部の市町は、非常食を再備蓄しようにも納品が大幅に遅れ、計画に支障が出始めている。(田柳暁)

<納入に5ヵ月>
 水を加えるだけで米飯になるアルファ米製造の先駆けで、国内シェア6割を占める尾西食品(東京)には震災後、全国から注文が殺到している。
 大崎市の宮城工場は震災11日後に稼働を再開。震災前の約2倍の月120万食を生産するが、担当者は「納入に5カ月ほど待ってもらっている」と言う。9月までに生産ラインを増強し、月産量の2割増を目指す。

<必需品と認識>
 大幅な需要増は、首都直下や東海・東南海の大地震に備え、関東や関西、九州、四国などの自治体や企業が備蓄に乗り出したことが影響した。東京都が3月、企業に3日分の非常食や水の備蓄を求める条例を制定したことも一因とみられる。
 尾西食品の林紳一郎専務は「大震災をきっかけに非常食は必需品との意識が全国に広まった。個人の注文もあり、需要増は続くだろう」とみる。
 栗原市の社会福祉法人「栗原秀峰会」が手掛ける5年間保存できる「缶入りパン」にも注文が相次ぐ。震災前は知的障害者約20人が年間20万缶を作っていたが、震災後の2011年度は職員も手伝って8割増の35万缶を生産した。
 増産に向け、7月初めに製造ラインの一部を機械化した。同法人の二階堂明彦部長は「商社に卸しているが、関東の自治体や事業者の注文が多いようだ」と驚く。

<計画再検討も>
 震災時に提供した非常食の再調達を図る被災自治体では、納入の大幅遅れや計画の再検討に苦慮している。
 仙台市は昨年7月、アルファ米40万食、クラッカー20万食、飲料水18万9000リットルを発注したが、全量納入までに半年かかった。気仙沼市も2月、アルファ米の備蓄を検討したが、納入に時間を要するため粉ミルクに切り替えた。
 石巻市はレトルト食品などを毎年1万2500食、4年で計5万食の備蓄を目指す。市防災対策課は「早めに注文して対応するしかない」と話す。


2012年07月15日日曜日


Ads by Google

△先頭に戻る

新着情報
»一覧
特集
»一覧
  • 47NEWS