立ち読み週刊朝日

射精は男の権利? 北原みのり氏、障がい者への「射精介助」に違和感


 コラムニストの北原みのり氏は、先日、脳性麻痺などで自慰できない男性のために射精介助するサービスを、テレビで紹介する様子をみて、違和感を覚えたという。その理由を次のように指摘する。

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 障がいを持つ男性への射精介助に反対も賛成もない。私は当事者ではないから。ただ、正直に言えば違和感が残った。"それがテレビに映る"ことの背景に、「射精=権利」「射精=ケアされるべき健康」とでもいうような、男性の性欲に対する揺るがない絶対感、みたいなのを感じたから。

 男性に聞きたいです。射精って、権利ですか? ちなみに私は、クリトリスへの刺激によって引き起こされる膣から尾てい骨に走る筋肉の収縮(強い快感を伴います)を、人としての権利と思ったことは、生涯一度も、ありません。

 テレビを観ながら思い出したことがあった。脳性麻痺の男性が出演するAVだ。「普通のセックスがしたい」と言った彼は介助されながら、「駅弁」(立ったまま女性を前に抱きかかえ接合)をしていた。駅弁......フツーじゃないよ、と思いながらも、彼の気持ちは痛いほど分かった。

 要は、"フツー"の男性ならやれることを、障がいがあるからと諦めることはないのだ。同じように、"フツー"の男性が「射精ケアされる権利」を行使しているのなら、障がいを持つ男性にもその権利はある。なんてったってこの社会には、射精に対する寛容さがある。射精は権利、射精はケアされるべき"本能"とでもいうか。

 性的快楽を享受する自由を保障する権利と、性的な快楽を享受する権利は違う。快楽享受の権利の名の下に、何が行使され、何が搾取されてきたか、女の立場からの話は尽きない。射精介助に、賛成も反対もないが、ただ強くゴロリとした違和感を抱えてる。

▼この記事は「週刊朝日」の連載「ニッポンスッポンポン」を、編集部で抜粋、再編集しました。全文は2012年7月20日号で読めます。

※週刊朝日 2012年7月20日号
タグ:社会