ピクシー「３万人来い、命令だ」

　名古屋グランパスのドラガン・ストイコビッチ監督（４７）が１３日、サポーターに対し前代未聞の命令を出した。１４日の仙台戦に向けたトヨタスポーツセンターでの最終調整後、報道陣に対して「少なくとも３万人は来てほしい。これは私の命令だ」と熱弁。観衆３万人が来場するようメッセージを発した。優勝戦線生き残りを左右する首位との大一番で、指揮官自ら強烈なアピールだ。

　打倒仙台へ、３万人集結せよ−。恒例の試合前日会見、力強く質問に答えていた指揮官が、前触れなく自ら切り出した。そしてその口調は、急速に熱を帯びていった。

　「明日（１４日）は２万人は来るという話は聞いているが、十分ではない。少なくとも３万人は来てほしい。サポーターのフルサポートが必要だ。日本のサッカーファンにとって今季最も重要なゲームと理解してほしい。試合の価値を考えれば、来なければいけない。土曜の午後だから仕事に疲れたとか、言い訳は通用しない。これは私の命令だ」

　求めた、というレベルではなく「命令」とはっきり口にした。さらに「サンマン」と日本語で強調した。スタッフによると過去にも来場を呼び掛けたことはあったが、命令となると就任後初。自らのカリスマ性を懸け、「彼らに対する私のアピールだ」と言った。

　豊田スタジアムでの３万人超えは、優勝した２０１０年には４度達成した。しかし昨季と今季はない。１３日正午時点でのチケット発券状況は約２万２千枚。３万人到達は極めて厳しいが、可能性はゼロではない。

　もちろん勝つために指揮官として打てる手は打ってきた。１１日には長時間の紅白戦で戦術を確認。前日にはミーティングで前節柏戦の映像を見せいいイメージを刻み込むとともに、ＭＦ藤本の疲労を察知し休養を指令した。そしてこの日は左脚内転筋痛で今週の練習を休んだＤＦダニエルに対し、自ら１対１のドリブル突破を仕掛けて状態をチェックするなど、細部に気を配った。

　「仙台は現時点でベストなチームだが、弱点もある。前回は０−４で負けているので、明日はリベンジのチャンス。仙台のドアをこじ開けたい」。スタンドを真っ赤に埋め尽くせ、そしてともに戦え−。すべてを懸けた決戦にふさわしい舞台を、ピクシーは待ち望んでいる。　（宮崎厚志）

　指揮官からサポーターへの前代未聞の命令に、これを聞いた選手たちも鋭く呼応した。ＤＦ闘莉王は「マジで！？　えらいな監督！」とビックリ。ＦＷ金崎も「それだけ来たらモチベーション上がるし、僕らもやらなきゃいけない」と意気込んだ。また、主将のＧＫ楢崎は「もちろんいっぱい入ってほしいし、それに見合うくらい魅力のあるサッカーをしないといけない」と、試合内容にもこだわる姿勢を見せた。