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【社会】

いじめ自殺 なぜ防げない 文科省対策、常に後手

 大津市立皇子山(おうじやま)中学二年の男子生徒=当時(13)=が昨年十月に自殺した事件をめぐり、文部科学省の対応が後手に回っている。いじめ自殺が社会問題化するたびに、文科省はいじめの定義や調査方法を変えたり、緊急対応マニュアルを配ったりしてきたが、悲劇は繰り返されている。今までのやり方で本当に良いのか。自殺した子どもの遺族や学校現場から疑問の声が上がる。 (早川由紀美、加藤文)

 大津の自殺で文科省は、滋賀県教育委員会などを通じ、事実関係の聞き取り調査を始めていた。ところが、滋賀県警が十一日夜、中学校などを捜索したため、調査は事実上、宙に浮いている。

 十二日の定例記者会見で高井美穂副大臣は「県警に加えて文科省が直接聞き取り調査をするのはふさわしくない」と話し、捜査や遺族が学校側に起こした裁判の推移を見守る姿勢を強調した。

 いじめ対策の基礎的データとなる全国調査の方法を、文科省は二回、変更している。最近では北海道滝川市などでいじめ自殺が相次いだ後の二〇〇六年、それまで「継続的な攻撃」などの条件をつけていたいじめの定義を、被害者側が苦痛を感じた場合はいじめと認めるよう変更した。

 報告の対象も「発生件数」ではなく「認知件数」に。文科省が統計上の件数の減少にとらわれていることが、教委の隠蔽(いんぺい)体質につながっているとの批判を受けたためだ。いじめを発見するため、アンケートなどで子どもたちから状況を聞き取ることも求めた。

 しかし、大津市の事件では、いじめが見過ごされたうえ、自殺後のアンケートも、真相究明のために十分に活用されなかった。

 中学在学中のいじめが原因で高校生の娘が自殺した高橋典子さん(54)は「文科省は決まり事をつくるだけで終わっている。学校現場で決まり事が守られているかを責任を持って調べるべきだ」と指摘。「学校側の隠蔽体質が変わらない以上は、第三者による調査機関設置を義務づけるべきだ」と訴える。

 名古屋市の小学校教諭岡崎勝さん(59)は「子どもは以前より親に気を使って、いじめられていることを言わなくなるなど、指導は難しくなり、時間がかかるようになっている」と話す。「国は、言い訳的に事後に何かするよりむしろ、学校現場の困難な状況などを継続的に情報発信して、仕事をしやすい環境をつくってほしい。それが事件を未然に防ぐことにつながる」

 

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