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2012年7月14日23時23分

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《いじめている君へ》玄侑宗久さん

写真:玄侑宗久さん拡大玄侑宗久さん

■軽々しい同調やめよう

 周りがやると、空気を読んで、いじめに加わる。他人に軽々しく同調する。それが後にどれだけとんでもない結果を招くか、君は考えたことがあるか。

 人生には失敗もあれば挫折(ざせつ)もある。やり直しもできる。しかし、やり直せないこともある。いじめられて人生をゆがめられた人間は、君を許さない。謝(あやま)っても決して許されない。君は見ないふりをするかもしれないが、その事実は変わらない。これは君が考えるよりずっと重たいことだ。

 君の親は、我が子が被害者になることは心配するが、加害者になるかもしれないとは思っていないのだろうか。親は子をつぶさに観察し、いじめがあれば断固(だんこ)として叱(しか)らなければいけないんだけどね。君だって本当は叱られるのを待っているんじゃないか。

 東日本大震災では、かけがえのない家族、友人、財産、思い出を失った人たちが己をなげうって助け合った。被災地・福島に住む私は、巨大な危機の中で、人々が争いではなく、助け合いの道を選ぶ姿を目の当たりにしてきた。

 人の心には光と闇(やみ)が重なり合う。でも、奥底にあるのはやはり光だ。もちろん、君の心の奥にも光がある。自分の意思で行動する力も備わっている。

 人生を一つの作品ととらえて励む。それを修行という。誰だって過(あやま)ちは避けられない。過ちが作品の味わいとなることもある。だが、誰かをひどく悲しませる過ちを犯すと、自分という作品に決定的な亀裂(きれつ)ができる。君自身が自分を嫌って生きることになる。

 他人に安易に同調するのはやめよう。誇(ほこ)りを持ち、君の意思で君らしい作品(人生)を作り上げていけ。(げんゆう・そうきゅう、作家・僧侶)

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