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アーチャーは今のところ干将莫耶オーバーエッジを二回使用しています。
一回目は単純に不意を突くために。
二回目はドーピング効果で神秘を落とすために。

それはそうと微妙に凛ルートでもそれっぽいのあるけどオーバーエッジかな?
11 交流
 店はシャッターが下りている。
 十年後はまだもう少し開いている時間が長かった。通りを見渡せばどの店も軒並み同じ。
 夜の街を歩く人はいない。おかげで戦車が道路に止まっていても問題がない。
 やはり、街の異常は隠し切れないほどになっているのか。

「む。やっぱり閉まってるか……」

 俺、セイバー、ライダー、ウェイバーはコペンハーゲンという居酒屋に来ていた。
 酒宴で飲み食いする物の調達のためだ。
 酒はやっぱり買うしかないにしても、つまみはここでアルバイトしていた経験もあって作れないわけではない。しかし時間は有限なのだから夜の一時をとっくに過ぎた今からでは諦めるしかなかった。
 ちなみにお金は俺が持ってきていた。

「ふむ、ここは征服王たる余の出番――」
「待て、まて、マテーーっ!!」

 セイバーが通訳をしてくれている。
 それでウェイバーの人柄が分かり、常識をもっているから苦労しているんだろうなと思った。
 それを俺もなんとか減らせ……ないだろうなあ。

「なんだ坊主。なにか問題でもあるのか?」
「おおありだ!」
「だがおぬし、世界地図のことは許したではないか」
「誰も、一言も、そんな事は言ってないッ!!」

 ライダーにブレーキが利かない。
 このままでは押し切られるのは目に見えている。
 
「そこまでだ、ライダー。それ以上の狼藉を働けば私は剣を抜かなければいけなくなる」

 だが此処には百万の蛮族より国を守った秩序の守り手がいた。

「物騒なコト言うでないわ、セイバー。細かい事、……嘘じゃろ?」

 剣を抜いたセイバー。風王結界が働いて不可視になった剣でも圧迫感は感じるだろう。
 そして冷や汗をながす征服王イスカンダル。
 どのような構図になっているのかは言うまでもない。
 ブレーキが利いた事で安堵したウェイバーは、その後すぐやっぱり慌てた。

「セイバー! 駄目だってそんな事したらっ!」
「これしか方法はないのですから仕方ないではないですか」

 断言するセイバーは、本気でそう思っている。
 まあ、ライダーを止めるには俺もそうするしかないとは思うけど。

「……ライダー、少し遠いけどもう一軒あてがある。そこに―――」
「うむ。諒解したセイバーのマスター。今すぐ出発しようか」

 そそくさと戦車にライダーは登る。
 そして残りの俺たちも。

 徒歩では酒宴までに時間が掛るとライダーは俺とセイバーまで一緒に乗せたのだ。
 危機感がないというよりも器が大きいというべきか。

「ああ、それと酒のつまみはそこだと用意できないんだ」
「そ、そんな、シロウ………」

 迷子になったような目で見つめてくるセイバー。
 かなり期待していたのだろう。
 
 最近は……グルメっぷりに拍車が掛かってきてたからな。
 昼は二人前、夜は三人前いけて、たまにもう一食追加とかあるし。

 その事に漠然と不安がよぎった時、
  
 (ケケケ。ご愁傷様だな、正義の味方)

 と聞こえてきた。いったいどうしてそういう電波が届くようになったのだろうか?

「がははは、残念だったな、セイバー」
「ぐぅ…………」

 先ほどのお返しとばかりに豪快にライダーは笑う。
 
 セイバーはとんでもなく悔しそうだ。
 だがそれはライダーに対してか、つまみを食べられなくなったコトに対してか。
 俺は両方ではないかと思う。

 帰ったらなにか作って食べさせてやりたい。

 ウェイバー(ライダーのマスター)は……なんだか死んでいらっしゃる。
 あくまで喩えとしてなのだが、侮れない。

 その理由はきっと、こう。


 ―――負けず嫌いのライダーは同じく負けず嫌いのセイバーと競い合い、
     相乗効果で被害が拡大。そしてもっとも近い位置にいる自分が真っ先に……

     セイバーは食事でなんとか出来るけど、ライダーは―――


「シロウ……?」
「坊主―――?」

「「な、なんでもないですっ!?」」

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――

 なんとか酒を一樽買い、運び込もうとしたところで、

「そういえば、ウェイバーって何歳なんだ?」

 ふと、年齢が気になった。
 お酒は二十歳からなんて固いことは言わないし、虎から薦められて飲んだこともある。
 だから本当に興味本位で聞いてしまっただけ。

「十九だ…………」

 小さい声だったので聞き逃してしまった。

「え?」
「だからっ、十九だって言ってるんだッ」

 いきなり怒りだした理由がわからない。
 どうしたのか、とライダーを見ると。

「ああ、それはな、小僧は身長を気にしとるんだ」

 なるほど。
 ウェイバーの身長はだいたい160もないだろう。
 だから気にしている。
 俺も高校生の平均身長を下回っているし、筋肉もついてるからあまり同学年の人間と比べられたくはない。共感できる悩みだ。

「聖杯に背丈を伸ばすのを願うらしい」
「勝手に決めるなよ! それッ!」

 ………? なにか違和感がある。

「勝手に決めるなって、つまり……」
「こやつはな、聖杯そのものを求めておらんのだ」
「じゃあ偶然、巻き込まれたって事なのか?」


「違う……僕が望むのは、ひとえに正当な評価だけだ。
 ついぞ僕の才能を認めなかった時計塔の連中にっ、考えを改めさせることだっ!!」


 そう叫ぶように宣言(?)したウェイバーはそのまま顔を俯かせた。
 
 聖杯戦争に参加するというのは、つまり”誰かを殺すかもしれない”という責任と”殺されるかもしれない”という覚悟を抱くことに直結する。
 
「おい坊主。言って恥じるくらいならもうちょっとスケールの大きいことでも―――」

 だから眉を少し顰めながら、

「別におかしくはないんじゃないか?」
「はあ?」

 良かったと安堵した。

「馬鹿にしないのかよ……」
「なんでさ? 誰だって他の誰かに認められたいって思ってるんだから、それのどこに馬鹿にするところがあるんだ?」

 俺だって頑張って褒められれば嬉しい。
 ウェイバーは努力を嫌う人間には思えない。むしろ魔術の探求のための苦労なら喜んでするタイプだろう。
 そんなところが遠坂に重なり、だから誰かを犠牲にする事を厭わないヤツではないと直感した。

「聖杯で、その時計塔の人間に仕返しをしようだなんて思ってないんだろ?」
「ア、当たり前じゃないか! この手で僕の才能を証明するから価値があるんだっ!」
「だったら、ほら、馬鹿になんて出来ないじゃないか」

「そうだけど――――ならオマエ、衛宮は何を聖杯に願うんだよ」

 聖杯に願うことなんてない。
 聖杯は願いを叶える物じゃない。

 ここでもし、聖杯が破壊しかもたらさない欠陥品の願望機だと教えたらウェイバーは、ライダーは信じてくれるだろうか? 
 
 無理だろう。
 どんなに破錠していない説明をしようと、セイバーが受肉していることを指摘されれば願いを叶えたんだと勘違いされるに決まってる。

「俺は聖杯なんていらないぞ」
「じゃあ、何のためなんだ?」
 
「――――シロ」
 そういえば誰かが言っていた。
 自分に返らない行いをする者は、いいように利用されるだけだ、と。
 
 セイバーが止めようとするのを見て、そんな言葉を思い出しながら、言った。

「ウ………!」
「俺が戦うのは聖杯戦争の被害者を出さない為だ」

「な、―――んだよ、それ…………」

「………はあ、シロウ、どうして貴方はそんなに……」
 
 そこまで深刻な顔をされるとは思わなかった。

「あー、やっぱりまずかったかな?」

 おもわず口が滑ったとしか言いようがない。
 だけど言った所でウェイバー達がどうにかするわけではないと思う。
 
「ほう、では何にも戦う理由なんてないではないか」
「いや、ある。あるさ」

 守りたいという気持ちが戦う理由にならないわけがない。
 ライダーの言いたいことは、つまり。

「欲がないって、言いたいんだろ」
「おうとも。欲のない戦いなどに意味は欠片もない」
「だったら、ちゃんとある。俺は誰かを、この街の人、すべてを守りたいんだから」

 欲がないという言葉に何故かむきになって反抗した。
 それだけで―――ここまで言ってしまった。

「ふむ……。どうやら貴様を測りかねるわい。いったい無欲なのか、強欲なのか……」

 ライダーは目を眇め、腕を組みながら俺を見た。
 が、それでもどうしようもないと止めた。

 無欲という言葉が頭に響く。
 何かを欲しいと思ったことなんてほとんどなかった。
 理想だけを追っていた。

 いや、理想を追っている事に変わりはない。
 そして俺がいま、やろうとしていることは―――――

「まずい、まずい。酒飲みながら話すことがなくなるところであったわ」

 ライダーのせいで脱力した。それは俺だけではない。
 本当にこのイスカンダルという英霊は王様としてやっていけてたんだろうか?
 
「さて。夜が明けんうちに早く、酒を飲もう!」

 前後関係を無視するライダーはどこか虎に通ずるものを感じる。
 その逆もまた?
 ……ヤバイ。藤ねえが王様になったらなんて考えなければよかった。







 遠くになった冬木の町。
 車輪の跡を盛大に作りながら到着する。

 森は空から見ようと深く、厚い。
 光りを寄せ付けない暗澹とした雰囲気が立ちこめている。

「――――――」
 ここは時が経とうと変わらない場所の一つ。
 静かに十年後を顧みた。

 イリヤに捕まり、監禁され、
 セイバーと心を重ね、
 バーサーカーと戦かった。

 そして、赤い背中は―――――。



”―――忘れるな。イメージするものは常に最強の自分だ。
     外敵など要らぬ。おまえにとって戦う相手とは、自身のイメージに他ならない”



 ……嫌いなやつの顔を思い出した。
 アーチャーとは決して相容れないもの同士。
 
 けれどアイツのおかげでアイツ以外の皆が助かった。
 嫌味しか言わなかったが意味のない事ではなかった。

 だから遠いあの姿を侮辱だけはしてはいけない。
 あの男だってなにかを貫いたのではないではないかと漠然と思う。

 回顧を打ち消し歩く。

「なんじゃ、シけた所だのう。城っていうから期待しておったのに」

 俺からすれば充分に凄いのだがどんな城に住んでたんだろうか。
 いや、そうではない。あまりにも人の世界から断絶しているこの空気の寂しさを感じ取ったのだ。
 そんな感慨を抱いて歩を進める。
 
 門をくぐった。
 此処までの道程をライダーの戦車で来なければかなり労力を消費する事になっていた筈だ。
 古城を囲む森には結界を備え付けていて、それには侵入者を察知できる機能がある。
 
 ライダーをこちらから挑発したのはそれを攪乱するためだった。
 酒宴に持ち込めば、どさくさに紛れることが出来る。切嗣の暗殺を警戒する必要をなくそうとしたのだ。

「しかも誰もおらんではないか」

 呼び鈴をライダーは鳴らす。
 しかし誰も出てこない。アインツベルンの城には誰もいない。

 ここはセイバーが仕えたアイリスフィールさんが拠点として使っていた。
 留守なのは初めから使っていないという事か、それとも偶然だからか。

 サーヴァントが脱落すればするほど、後戻りがやりづらくなる。
 だから早めに姿を確認しておきたかったのだが……

「マスターを入れて、三人ではなあ。よし、セイバー。後日、人数をそろえてからにしないか」
「―――その提案、賛成しましょう。その時こそはつまみを」

「そ、そうだ! 銀髪の女の人を最近見たことはないか、ライダー?」

 なんだか壊れていっている気がする。
 セイバー、そんなにつまみが食べたいのか……。

「いいや、無いぞ。それがどうかしたのか?」

 いや、別にと言って返した。それに対し探る目つきをライダーはする。
 だが答えられるものはもっていない。

「ライダー、出会ったサーヴァントにはどんなのがいたんだ?」
 
 話の方向を変える。
 こっちに喋る気がないのを読み取ったライダーは腕を組んだ。

「まず、もう一人のセイバー。とにかく金色なヤツで王を名乗っとった」
「そうか、彼がセイバーなのか……」

 気に入らないのかセイバーの眉が曇った。
 ギルガメッシュのクラスの変化は、赤いアーチャーを見た時から分かっていたことだ。
 あいつの剣技は俺とは比べ物にならなくてもセイバーには遠く及ばない。対応の仕方を変える必要は無いだろう。

「なんだ。もう会っとたのか。じゃあ次、二槍を使うランサー。そいつはなかなか足が速かったし槍術も卦体であった。見かけはなかなか優男そうであったが」

 ランサーは変わっていないのか。
 ん? なんだ?
「ちょーーと待てよ、ライダー。またオマエ、マスターを無視して―――」

「何本も双剣を持っとるアーチャー。
 しかも盾まで持っとったし。どうも宝具の多い英霊が集まったようだな」

 別にいいだろ? そう言って話し続けるライダー。
 ウェイバーは青筋を浮かべているがソレも無視。

 しかし盾なんて聖杯戦争で珍しいな……

「バーサーカーは黒い靄を纏っててよう見えんかった。
 ……で、そっちはどんなもんだ?」

「私はキャスターと戦い、首を討った」
「なに? おいおい、もうなのか?
 ―――はあ。勿体無いのう、まだ見ても、言葉を交わしてもおらんのに」

 肩をすぼめ、本気で残念そうにため息を吐いたライダー。
 それを見て、それよりも大きくため息を吐くウェイバー。

「……ふむ」
 一旦は下げていた視線を肩に抱えていた酒樽にライダーは移す。
 にやりと笑みを浮かべるその顔に嫌な予感を覚えた。

「しかし、ちょうどここに酒がある。残懐(ざんかい)はこれで洗い流すかなあ」

 やっぱり酒を飲む話にシフトチェンジした。
 だがしかし、予想をライダーは上回る。

「征服したわけでもない城で酒を飲むのは余の主義に反する。
 どれ、セイバーとそのマスターよ。おぬしらの拠点に案内してくれんか?」

 どうしたものだろう。なんだか朝までドンちゃん騒ぎをするライダーの姿が見える。
 もちろん打算も入ってはいるのだろうけど、そっちのけにしそうだ。
 十年後だったら藤ねえも何故か途中から加わってそうだ。
 ……やはり、ここは。

「なんなら俺が酒を保管しておこうか? やっぱり明日もやることがあるし。
 ―――な? セイバー」

 強引に酒を辞退する。
 アイリスフィールさんと会うという目的が達せられなかったのだから酒を飲むことに意味はない。

「ええ。シロウの言うとおりだ。案内をするのは構わないが酒を酌み交わすのはまた今度としたい」
「まったく、本当に釣れない奴よ。………ははあん。なるほど、得心が行ったぞ。ハハッ、召喚されてから僅か数日でサーヴァントを落とすとはやるではないか、セイバーのマスター! 帰ってすぐにセイバーと逢引したいなら、したいと早く言えばよかろうに!」

「な――――ち、違う。断じて違うぞ征服王っ!?」
「隠さんでもよいぞ、セイバー。いったいどっちから愛を告げたのだ? んん?」

 見た目だけなら親と娘くらいは歳が離れているのだが、ライダーのテンションは男子中学生なみだ。
 にやにやと赤くなった俺とセイバーを見ている。
 と、そういえばライダーは赤いマントを身に着けている。アカイあくまとか、あのヤロウとか。赤い服を着た人間は衛宮士郎にとって、とことん相性が悪すぎではないだろうか。

「うむうむ。やはり女は華咲くべきよ。
 おい、坊主。貴様も故郷に一人や二人や三人くらい―――何をしとるんだ?」
 
 話がそれてくれたので大きく深呼吸。火照った顔を冷やす。
 ライダーの視線を追う。
 その先で、ウェイバーはスコップやら試験菅やら実験器具の類を持って何かをしていた。

「見て判らないなら説明してやるが……魔術の痕跡を探して、此処を根城にしてる魔術師が居ないか調べているんだ」
「……ほほぅ。坊主――貴様は偉いっ!!」
「う、げほっ、げほっ!」

 バシーンとウェイバーの背中を叩いて褒め称えるライダー。強く叩きすぎて咳き込ませてしまった。ど突き漫才のように。
 まあ、でも。これはこれでかなりいいコンビなのではないだろうか。

「結界が張ってあったから使う予定はあるんだろうけど、それ以外の魔力の残滓はないから、かなり長い事、帰ってないんだろうなって、あ!?」

 ライダーに叩かれたショックでこちらに言わなければいい事までしゃべった事に気づいたようだ。
 ありがたいミスだけど、やはり申し訳ない。
 返せる物はないからどうしようもないけど……。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――
 
 この後、衛宮邸までライダーに押し切られたがなんとか酒宴は阻止した。
 そして見つける。
 庭には一本の矢と――――一枚の紙があった。

もう大事な話が進まないなんてサヨナラだ。手間暇かけて台詞を削らなくていい。これからはガンガンやる。キャラ崩壊してコレジャナイして(作者が)死んで死んで死にまくる。《中略》毎日毎日、感想に批評が飛び込んでくる!ひっきりナシの終わりナシに!「ああァッ、終わりませり、終わりませりィ!」
 
これから先、この後書きがどうでもいいくらいの展開するかも。見ようという方は覚悟してください。



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