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頭痛がひどい。一週間ぶりに投稿したからいつもより文章拙いかも。
サブタイなんて適当だし。

07 明かされぬ夜
 
 開発の波に取り残された建物。
 音といえば劣化したコンクリートの立てるモノのみ。

 だが今宵は違う。

 人の息遣いがある。
 ひっそりと佇む廃墟に彼女達はいたのだ。

「ぁ…………!」
「どうかしましたか、マダム?」

 しかし静寂で包まれていた廃工場。
 それが唐突に終わった。

 聖杯戦争が始まったその日。
 アイリスフィール・フォン・アインツベルンは日本に到着した。
 空港では黒髪の女性、切嗣の協力者である久宇舞弥がその出迎えをし、現在、共に潜伏していた。

「キャスターが脱落したみたい。……でもいくらなんでも早すぎるわ」
 
 舞弥は脱力し、倒れそうになったアイリスフィールを支える。
 華奢な体は今にも折れそうで、その額からは汗が一滴たれた。だが想定されていたアイリスフィールの変調に何一つ感慨を抱かない。それは心を持たない舞弥には不可能だ。

「……………」
 考えられる可能性としてはサーヴァントがマスターを裏切ったか、あるいは本当に他のサーヴァントに打倒されたか。

 前者は考えにくい。キャスターは四日ほど前に召喚された。裏切るならもっと良いタイミングがあった筈だ。なにも聖杯戦争が始まったその日にしなくてもいい。
 後者にしてもビデオカメラで捉えているアーチャーのいる戦場にいないメンツを考えるとほとんどが自ら積極的に出向くクラス、またはマスターではない。

 だが、あるいは資料にあった言峰綺礼なら…… 
 いや、考えすぎだ。切嗣が警戒しているのはそういう部分ではない。
 
 思考は遂行中の作戦のみに向ける。
 今は体調の悪化したアイリスフィールとどのように行動してかねばならないのかをシミュレートしなければ。



 魔術が飛び交う戦争。
 魔術師の戦場に持ち込まれた現代の兵器。
 しかし人が死ぬという事実に変わりがないのなら。


   ――静かに布石は打たれ、しかし運命は廻っていく――




「我が名は征服王イスカンダル。此度の聖杯戦争においてはライダーのクラスを得て現界した」


 御者台より屈強な肉体をした巨漢が姿を現した。
 燃えるような赤髪と同じ赤色のマントを羽織り、堂々と男は自身が何者であるかを明らかにした。
 その行為は戦闘を中断させた彼なりの礼儀なのかもしれない。


 だが、聖杯戦争において真名は重要な意味を持つ。本来なら隠すべきものだ。
 しかし世界に英雄として認められる程の猛者ならば、……意外と不思議ではないのかもしれない。
 
 まあ、真実そうだったとしてもそのマスターは、”現代人”だ。

「何を────考えてやがりますかこの馬ッ鹿(バカ)はあああ!!」

 英雄と同じだけの豪胆さなど持ちあわせていない。
 これがもし、戦闘を中断させた不届き者でなかったらランサー、アーチャーは騎兵(ライダー)のマスター、ウェイバー・ベルベットに心底同情していた。
 そして豪傑(ライダー)のデコピンを受け、悶絶するウェイバー。

「うぬらとは聖杯を求めて相争う巡り合わせだが……矛を交えるより先に、まずは問うておくことがある。
 各々が聖杯に何を期するのかは知らぬ。だが今一度考えてみよ。その願望、天地を喰らう大望に比してなお、まだ重いものであるかどうか」


「…………」
未だに理解は追いついてこない。だが、

「うむ、噛み砕いて言うとだな。ひとつ我が軍門に降り、余に聖杯を譲る気はないか? さすれば余は貴様ら朋友として遇し、世界を征する快悦を共に分かち合う所存でおる」

 その不穏な物言いにランサーは彼をきつく睨みつけた。
 そう、ランサー(マスター)アーチャー(マスター)の戦いはまだ終わってなどいないのだから。

「先に名乗った心意気には、まあ感服せんでもないが……その提案は承服しかねる。
 俺が聖杯を捧げるのは今生で誓いを交わした新たなる君主ただ一人だけ。
 ――――断じて貴様ではないぞ、ライダー!」

 一度は世界を征服しかけた男だ。その知名度はここ、日本でも高い。
 真名を曝したことで、ライダーは今現在最も他の参加者から標的として狙いを集めている。強力なサーヴァント。自身だけで勝てないなら手を取り合って倒そうとさえするだろう。
 
 ―――征服王は自分から死地に飛び込んだのだ。


「む? アーチャー、いったい何故黙っておるのだ。もしや我が軍門に」

「いや、私もランサーと概ね意見は同じといったところだ。
 そもそも聖杯は永遠に我らを現界させ続ける事はできない。もっと直接的に世界征服を願った方がいいのではないか? それともまさか、叶うはずがないと知りながらも世界を征する快悦とやらを求め続けるのかね?」

 アーチャーの言葉に征服王はにやりと口元を歪めた。

「よくぞ聞いてくれた、アーチャー。余の望みは転生したこの世界に一個の生命として根を下ろすこと。つまりは受肉したいのだ。
 もちろんそれは余の配下になった者も共に。
 ……なあ、本当に我が盟友になるのはいやか? お主らは体一つの我を張って、天と地に向かい合うことに魅力を感じんのか?」

 
「ふふ、は、はははははハハハーー」

 笑い声。それもおかしくて、可笑しくてたまらないと笑い続けるのは、アーチャーやランサー、ウェイバーでもなければライダー本人でもない。

 哄笑を上げ続けるのはこの場に新たに現れた第四のサーヴァントだった。
 その姿は黄金の髪と真紅の瞳を持ち、金の甲冑を纏っている。
 人を遥か上より見下ろす、一人の”王”。

「くく、―――は、(オレ)を差し置いて”王”を称する不埒者が、さらに器の卑小さを弁えず大望を抱く、か。
 気に入ったぞ、ライダー。お前のような阿呆(あほう)は大いに興じさせてくれるからな。
 二匹も贋作者を招き入れた聖杯戦争に見切りをつけるつもりだったが、このような事もあるとは。
 決めたぞ。―――お前はこの手ずから殺す」

 いまだ笑うことを止める事ができぬ黄金の騎士の言葉にもっとも反応を示したのはアーチャーだった。
 このままでは想定する中で、一番リスクの高い手段を採らなくてはいけない。
 

 だが。


「主……!?」


 突然、血相を変えてランサーが走り出す。
 他のサーヴァントの攻撃を甘んじて受ける彼ではないが、それでも注意力が散漫になったのは拙いとしかいいようがなかった。

 いや、それも仕方ないのかもしれない。三人のそれも英霊の挙動に気を配らなればいけなかったのだから。

 ランサーの左右に白と黒の光が迫る。
 迎撃を行った瞬間――― 

「―――壊れた幻想ブロークン・ファンタズム

 槍兵は爆発に飲み込まれた。 

 と。
 ほぼ同時にアーチャーの足元にあった中華刀も爆発する。
 こちらは煙幕だ。

 宝具は強大な神秘を有する。それはC-の宝具であろうともやりようによってはサーヴァント一人を倒すには充分。

「な――――に…!?」

 英霊の愛用する得物だ。誇りや誉を共に勝ち取ってきたそれを自分から放棄した事に驚愕するのは誰あろう英雄なら当然のコト。
 驚くライダーを無視し、アーチャーは姿を消す。
 
 だが、それを見逃す英雄王などいない。

()く往ね。雑種―――」

 ギルガメッシュの蔵、『王の財宝ゲート・オブ・バビロン』より大鎌が曲線を描き、剣が鋭い放物線を虚空に曳いてアーチャーへと排出される。

「”熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)”!」
「チィ――――! 薄汚い贋作者めがッ!!」

 弓兵は右手をかざし、魔力が集まると其処には七枚の花弁があった。
 唯の一枚さえ古の城壁なみの防御力を持つ結界宝具(たて)が展開されたのだ。―――その一枚にひびが入る。
 
 千の財を持つ英雄王は視ただけで魔術を把握する事が出来る。事実、彼はアーチャーが設計図(とうえいまじゅつ)を用意していることに気づいていた。
 ギルガメッシュが放ったのはあらゆる伝説、神話伝承に語り継がれる宝具のオリジナルだ。転輪を経ることでに純度を落とした英霊の宝具よりも強力である。
 
 しかし、推進力を失いアーチャーに傷一つ付けられなかった。
 当然である。
 投擲された武器に対してローアイアスはアーチャーの知る限り最強の盾。ひびが入ったのだけでも驚愕ものだ。

 残ったのは六枚となった弓兵の敷いた宝具。
 ならば―――
 
   ”壊れた幻想ブロークン・ファンタズム

 今度こそアーチャーは離脱する。
 残ったのはライダーとウェイバー、金色のセイバーだけだった。


「やれやれ……話はまだ最後までしていないというのに。
 あぁ―――もう、運が無い。おい、坊主。余のLUC(ラック)は本当にAなのか?」

「そうだよ、征服王殿。しかもAより上のA+だ。
 正直、ボクにはオマエについていった人間の気持ちがこれっぽっちも分からないんだが」

 ウェイバーは半眼でライダーを睨みながら嫌味を言った。

「まあ、それはおいおい魅せてやるとして。
 なにか勘違いしてないか坊主? 余はまだ一言も他の英霊を勧誘するのを諦めたなんて言っておらんぞ?」

「な、な、な。――何ィィィィいい!?
 総スカンされた分際でナニをほざきやがりますか、この馬鹿ッ!」

「うむ、そうだとも。馬鹿でなければ世界征服なんて野望、この歳になっても抱けんわい。
 ――――む。やはり、腹を割って話す必要があるな……」

 あごに手をあてセイバーがいるにもかかわらず考え込むライダー。

 ウェイバーは悟った。
 今、ライダーが考えている事はどうせ”ろくでもない”と。
 
 なんとしてでも止めてやる!

 意気込みはもはや強迫観念に近い。
 事前に防ぐためにライダーから訊きだそうとするウェイバー。
 しかし、そんな時間はなかった。


 ―――突然の漆黒の魔力放射と共に”影”が立っていた。
 新たなるサーヴァントのステータスを読み取ろうとするがまるっきり見えない。


 困惑にとらわれたウェイバー達をよそにおそらくはバーサーカーのクラスであろう英霊は黄金の騎士に向かっていく。
 贋作者と蔑んだ男を逃した英雄王の怒りが、彼にとって狂犬である英霊に絡まれることで爆発するのは当然だろう。
 

 やがて再び静寂が訪れ、満ちる。
 その日、明かされた事実は微々たる物だろう。

 そう。誰かが勝者になったわけではなく、誰かが敗者になったわけでもない。
 勝負が何処かで着いたとすればなにかが明かされるのは必然なのだ。
 とりわけ、この聖杯戦争では。


 だが大きく変わろうとしていた。

 正史と呼べる並行世界の歴史で後に起こる出来事(イベント)
 
 ”―――衛宮切嗣とロードエルメロイの対決”   
 ”―――ギルガメッシュの宣告”
 ”―――ジル・ド・レェ(キャスター)の退場”

 それを早めたのは誰だったのか。
 言うまでもない。だが、果たして――――?


   interlude out
ギルガメッシュは強引だったが作者的には色々筋通ってます。言葉にしろって言われると無理だけど。

それはそうと、干将莫耶はどこで士郎に見せよっか、次の日というのは唐突な先がするし。

ええ、そうです。話の流れを決めるなんてほざいといてこの話にその部分入れてないんですよ。
どうしようもねえなこの作者なんて思った方、批判感想お待ちしています。


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