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月光校庭のエクスカリバー
聖剣破壊計画です!1

 Side イッセー


 「嫌だぁぁぁぁ!俺は帰るんだぁぁぁぁ!」

 悲鳴を上げて逃げようとしている匙。それを小猫ちゃんが掴んで話さないでいた。
 俺がエクスカリバー破壊作戦を提案したら、小猫ちゃんはしばし考え込んで「私も協力します。祐斗先輩のことですよね?」と察してくれた。
 匙の方は聞くなり青ざめて逃げようとした。それを小猫ちゃんが捕縛した。

 「兵藤!なんで俺なんだよ!お前ら眷属の問題だろう!?俺はシトリー眷属だぞ!関係ねぇ!関係ねぇぇぇぇぇぇ!」

 「そう言ってくれんなよ。俺が知ってる悪魔で協力してくれそうなのはお前ぐらいなもんだったもんよ」

 「ふざけんなぁぁぁぁ!俺がてめぇの協力なんてするわけねぇぇだろぉぉぉぉ!殺される!俺は会長に殺されるぅぅぅぅ!」

 会長ってよほど怖いんだな・・・・・・。

 「お前んとこのリアス先輩は厳しいながらも優しいだろうよ!でもな!俺んところの会長は厳しくて厳しいんだぞ!」

 そうか、厳しいのか、よかった。
 俺は一つの決意を持って、小猫ちゃんと匙とともにゼノヴィアとイリナを街中で探していた。
 小猫ちゃんと木場の復讐について話し合いながら街を歩く。今回は部長や他の部員には内緒での行動だ。

 「小猫ちゃんは降りてもいいよ。匙も危なくなったら逃げろ」

 「いま逃げさせろぉぉぉぉ!最悪じゃないか!エクスカリバー破壊なんて勝手なことしたら、会長に殺される!絶対に拷問だぁぁぁぁ!」

 まあまあ、泣かずに付き合ってくれ。危なくなったら逃げていいから。
 とまあ、そんな感じで街中を探すこと二十分。極秘任務で白いローブを着た女性二人なんて簡単に見付かるわけ―――。

 「えー、迷える子羊にお恵みを~」

 「どうか、天の父に変わって哀れな私たちにお慈悲をぉぉぉぉ!」

 簡単に見付かった。
 路頭で物乞いする二人の美少女。目立つ目立つ滅茶苦茶目立つ。
 なにやら困っているようだ。

 「なんてことだ。これが超先進国であり経済大国日本の現実か。これだから信仰の匂いもしない国は嫌なんだ」

 「毒づかないでゼノヴィア。路銀の尽きた私たちはこうやって、異教徒どもの慈悲なしでは食事も摂れないのよ?任務は危険だしゼロとは仲直りできないのにこんなのないよ~(泣)」

 「ふん。元はといえば、お前が詐欺まがいの壷を購入するからだ」

 ゼノヴィアが指差すほうになんだかよくわからない壷が置いてあった。

 「だってだって!これがあれば仲違いした異性と寄りを戻せるって言うんだもん!」

 「わかった。わかったから泣くな。今度会った時に私からも何か言ってみるから。嫌われたか憎まれているわけじゃないんだ、きっとなんとかなる」

 「うぅぅぅぅ。そんなのわかんないよ・・・・・・目を合わせすらしてくれないんだよ?」

 ぐぅぅぅぅぅぅ・・・・・・。
 少し離れていても聞こえてくるぐらいの腹の虫。

 「・・・・・・まずはどうにかして腹を満たそう。そうしなければ任務どころではない」

 「そうね。それじゃ、異教徒でも脅してお金もらう?主も異教徒なら許してくれそうなの」

 「寺でも襲撃するか?それとも賽銭箱とやらを奪うか?どちらもやめておけ。ここは剣を使って大道芸でもしよう。どの国でも通じるインターナショナルな娯楽だ」

 「それは名案ね!エクスカリバーで果物でも切れば路銀はたまるはず!」

 「まあ、その果物がないわけだが。仕方ない。その壷を斬るか」

 「ダメぇぇぇぇ!これはダメなのぉぉぉぉ!」

 俺は頭を抱えつつ、気を取り直して二人のところへ歩いていく。
















 「うまい!日本の食事はうまいぞ!」

 「うんうん!これよ!これが故郷の味なのよ!」

 ガツガツとファミレスで注文したメニューを腹に収めていくゼノヴィアとイリナ。
 見事な食べっぷりだ。本当に教会からの刺客さん?
 ファミレスに到着するまで「私たちは悪魔に魂を売ったのよ」「これも信仰を遂行するためだ」などとぶつぶつ言っていた。

 「ふぅー、落ち着いた。君たち悪魔に救われるとは、世も末だな」

 「奢ってもらってその態度とは、覚悟はあるか?」

 「いや、なんの覚悟だ?」

 「ここで食事の代金を払ってほしくば―――」

 「「うっ」」

 俺の言葉に顔を引きつらせる二人。

 「まあそこまで行かないけど、交渉しに来たんだよ」

 「交渉?なんの?」

 イリナが首を傾げながら聞いてくる。

 「あんたら、エクスカリバーを奪還するために日本に来たんだよな?」

 「そうだ。それがどうした?」

 食事を摂ったばかりか、ゼノヴィアもイリナも敵意は無い。
 まあいざ戦いになっても俺と小猫ちゃんなら何とかなるだろう。

 「エクスカリバーの破壊に協力したい」

 俺の告白に二人は眼を丸くして互いに顔を見合わせた。
 数秒間の沈黙のあと、ゼノヴィアが口を開いた。

 「そうだな。一本ぐらい任せてもいいだろう。破壊できるのであればだがね。ただし、そちらの正体がばれないようにしてくれ。こちらもそちらと関わりを持っているように上にも敵にも思われたくは無い」

 すんなり許可するとは意外だな?

 「ちょっと、ゼノヴィア。いいの?相手はイッセーくんとはいえ、悪魔なのよ?」

 異を唱えるイリナ。まあ、普通の反応、と言うか予想していた反応だ。

 「イリナ、正直言って私たちだけでは三本回収とコカビエルとの戦闘は辛い。いや、不可能に近い」

 「う・・・・・・」

 「破壊も出来ずに私たちのエクスカリバーが奪われる可能性もある。最低でも私たちは三本とも破壊して逃げ帰ってくればいい。私たちのエクスカリバーを奪われるぐらいなら、自らの手で壊せばいいだろう。奥の手を使ったとしても無事に帰れる確立は三割もない」

 コカビエルって言うのはそんなに強い相手なのか。

 「だから、悪魔の力は借りない。代わりにドラゴンの力を借りる。上もドラゴンの力を借りるなとは言っていない」

 ゼノヴィアの視線が俺に向けられる。
 ―――ドラゴン。俺の左腕に宿る赤龍帝。

 「まさか、こんな極東の島国で赤龍帝と出会えるなんて思わなかった。悪魔になっていたとはいえ、ドラゴンの力は健在だ。伝説通りなら、その力は最大まで高めれば魔王並みになれるんだろう?実際あの時は数秒だけだが並みの上級悪魔なんて屁でもなかったぐらいだ。この出会いも主のお導きと見るべきだね」

 ゼノヴィアは嬉々としていった。

 「確かにドラゴンの力は借りるなと入っていなかったけど。屁理屈過ぎるわよ!前々から思っていたけど、あなたの信仰心は変だわ!」

 「変で結構。しかし、イリナ。彼はキミの古い馴染みであり私たちの想い人の弟分だぞ?信じてみようじゃないか。ドラゴンの力を」

 ドキッとしてしまいそうな笑みを浮かべながらゼノヴィアは言う。
 イリナもゼノヴィアの言葉に黙り、承知の空気を出していた。
 まあ、魔王クラスの力になるには時間を掛けるか逆に短時間しかできないかのどちらかになっちゃうんだけどね。実際無理くさい。

 「OK。商談成立だ。俺はドラゴンの力を貸す。じゃあ、今回は俺のパートナーを呼んでもいいか?」

 俺はケータイを取り出し、木場へ連絡を入れた。











 「・・・・・・話はわかったよ」

 木場は嘆息しながらもコーヒーを口につけた。

 「いま、例のエクスカリバー使いの二人と会っている。木場にも来てほしい」

 と伝えると文句も言わずに顔を出してくれた。

 「正直言うと、エクスカリバー使いに破壊を承認されるのは遺憾だけどね」

 「随分な言い様だね。そちらが『はぐれ』だったら、問答無用で斬り捨てているところだ」

 睨み合う木場とゼノヴィア。

 「やはり、『聖剣計画』のことで恨みを持っているのね?エクスカリバーと―――教会に」

 イリナの問いに木場は目を細めながら「当然だよ」と冷たい声音で肯定した。

 「でもね、木場くん。あの計画のおかげで聖剣使いの研究は飛躍的に伸びたわ。だからこそ私やゼノヴィアみたいに聖剣と呼応できる人工の使い手が誕生したの」

 「だから?今の研究なんてどうでもいい。だからと言って、計画を失敗と断じて被験者のほぼ全員を始末するのが許されると思っているのか?」

 木場は憎悪の眼差しをイリナに向ける。
 確かに処分はひどい。あまりに残酷だ。神の信徒がやるにしては非人道的すぎる。

 「その事件は、私たちの間でも最大級に嫌悪されたものだ。処分を決定した当時の責任者は信仰に問題があるとされて異端の烙印を押された。今では堕天使側の住人さ」

 「堕天使側に?その物の名は?」

 「バルパー・ガリレイ。『皆殺しの大司教』と呼ばれた男だ」

 そいつが木場の仇敵ってわけか。

 「堕天使を追えば、その者にたどり着くのかな」

 木場の瞳に新たな決意みたいなものが生まれていた。明確な目標がわかっただけでも前進できたわけだからな。

 「僕も情報提供したほうが言い様だね。先日、エクスカリバーを持ったものに襲撃された。その際、神父を一人殺害していたよ。やられたのはそちらのものだろうね」

 「「「「「!!」」」」」

 この場にいる全員が驚いた。当たり前だ。まさか、木場のほうが先に接触していたなんて。今まで黙っていたのは何故?

 「相手はフリード・セルゼン。この名に覚えは?」

 あのクソ神父!俺は十分に覚えがあるぜ!

 「なるほど、奴か」

 「フリード・セルゼン。もとヴァチカン法王庁直属のエクソシスト。十八歳でエクソシストとなった天才。悪魔や魔獣を次々と滅していく功績は大きかったわ」

 「だがやつはあまりやりすぎた。同胞すらも手にかけたのだかからね。フリードには信仰心なんてものは最初からなかった。あったのは化け物への敵対意識と殺意。そして、異常なまでの戦闘執着。異端に掛けられるのも時間の問題だった」

 やっぱりそちらでも手に余ってたのね。わかりましょ。その気持ち。

 「そうか。フリードは奪った聖剣を使って私たちの同胞を手にかけていたのか。あの時、処理班が始末できなかったツケを私たちが払う事となるとはね」

 やっぱりフリードって嫌われてるんだなぁ。当然か。

 「まあいい。とりあえず、エクスカリバー破壊の共同戦線と行こう」

 ゼノヴィアはペンを取り出すと、メモ用紙にペンを走らせ、連絡先をこちらによこした。

 「何かあったらそこへ連絡してくれ」

 「サンキュー。じゃあ、俺たちのほうも―――」

 「イッセーくんのケータイ番号はおば様からいただいているわ」

 母さん・・・・・・いつの間に?

 「では、そういうことで。食事の礼、いつかするぞ。赤龍帝の兵藤一誠」

 そう言うとゼノヴィアは席を立った。

 「食事ありがとうね、イッセーくん。ゼロとの仲直りを手伝ってくれると嬉しいな。それじゃあね」

 笑いながらイリナはお礼を言って立ち上がる。
 二人を見送り、残された俺たちはたまらずに息を大きく吐いた。





















 Side ゼロ


 「イッセー、最近集まりが悪いぞ?どうしたんだ?」

 「え?ゼロ兄?い、いや、なんでもないって」

 残念。俺、しょっちゅう遠目に監視してます。

 「ところで二人とも、例のボウリングとカラオケをする会合どうするんだ?」

 元浜とか言うメガネが割り込んできた。
 俺とイッセーを含むエロ三人組、アーシアにクラスの桐生、さらに木場と小猫とかを誘って休みの日に半日遊び倒す計画を立てている。

 「アーシアと桐生も来るし、小猫ちゃんも来るよ」

 「ちなみに俺はロスヴァイセに声を掛けた。同年代だしいいだろう?」

 「うおおおおお!アーシアちゃんに塔城小猫ちゃん!これだけでもテンションが上がるのに天才美少女教師のロスヴァイセさんまで来るのかぁぁぁぁ!テンションマックスだぜぇぇぇぇ!」

 叫ぶ松田とか言う丸刈り。涙まで流して、そんなに女子との会話に飢えていたのか?
 スパン!
 松田の頭を叩く者がいた。丸刈りだからいい音がなる。

 「悪かったわね。私も行くことになって」

 不機嫌そうに言うメガネ女子は確か桐生とか言ったな。

 「ふっ。お前はアーシアちゃんのオプションさ。メガネ属性は元浜で間に合っているが、まあいい」

 「なによ、松田、その態度は?そこの変態メガネと一緒にしないで。属性が穢れる」

 「こいつめ!元浜のメガネは女子の体のサイズを数値化できる特殊なものなんだぞ!?お前とは違う!」

 しかし、桐生は松田の発言を聞き、不適に笑う。

 「まさか、その能力が元浜だけとでも?」

 「「「ッッ!?」」」

 なんだ?桐生の視線が俺たちの股間に?

 「なるほど、なるほど」

 なんだ?なんなんだこの危機感は?見ればイッセーや松田たちが股間を隠している。まさか!

 「ふふふ、私のメガネは男子のアレを数値化できるのさ。極小サイズから、ごん太まで」

 む、無駄だぁぁぁぁ!無駄な能力だぁぁぁぁ!元浜もそうだが才能の無駄遣いもいいところだぁぁぁぁ!
 恐れおののくイッセーの肩に手を置く桐生。

 「大丈夫よ。あんたはそこそこあるほうだから。大きすぎると女性は困るけど、それなりにないとねぇ。うん、あんたの大きさならアーシアも満足できるわ!問題はゼロくん、あなたよ!」

 「俺!?そこで俺が出てくるのか!?」

 ビシッと指を差される。

 「ゼロくん!あなたはかなりの絶倫且つデカ○ラよ!」

 「堂々とセクハラするなっ!!」

 パアンッ!
 何故か手に持っていた出席簿でアタックをかます。前世のMFロボットアニメの最強鬼教官を思い出すな・・・・・・。

 「あなたの精力には三、四人程度の女性では全くといっていいほど付いていけないわ!」

 「だから止めんか!」

 パアンッ!




















 「最近白音の様子がおかしいにゃん」

 「イッセーと祐斗関連でなにか企んでいるみたいだぞ?それには生徒会シトリー眷属の匙元士郎とか言う奴も一枚噛んでいるな」

 自室で黒歌とロスヴァイセの三人で談笑しているところだ。

 「リアスさんには報告しないんですか?」

 「少しぐらい泳がせるさ。もしかしたらコカビエルが尻尾を出すかもしれないしな」

 「ところでゼロさん、一体何を飲んでいるんですか?」

 俺の手元にあるワイングラスを指差しながらロスヴァイセが聞いてくる。

 「酒じゃないから安心しろ」

 「見た感じどう見てもシャンパンなんだにゃ・・・・・・」

 黒歌がテーブルにおいてあるビンを見ながら言う。

 「ノンアルコールだ。飲むか?」

 「いただきます!」

 「私ももらうにゃん」

 「我も」

 「「「ッッ!!」」」

 突然現れた少女に俺たちは驚く。
 いつからそこにいたんだオーフィス?

 「?」

 「なんでお前がここにいる!」

 「我、暇。遊びに来た」

 「「「・・・・・・」」」

 本当の出番ずっと先だもんな。







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