Side ゼロ
決戦当日。
現在は午後十時、試合は二時間後の深夜零時丁度からだ。
今日は悪魔の仕事も休み、学校が終わってからすぐに帰宅となった。
三十分前に部室に集まる予定だから、あと一時間少ししたら学校に行かなければいけない。
『Appear』
不死鳥の炎をも消すことが出来る特殊な水をビンに入れる。対不死用のものも用意してある。
リアスとイッセーに使ってもらおうと思ってな。
俺はこんなものがなくても生身で一蹴り出来るが、みんなはそういうわけじゃない。
『Appear』
再度神器を使う。今度は朱乃と小猫、祐斗に使ってもらうためのアイテムだ。効果は本番までのお楽しみ。
イッセーとアーシアの二人はイッセーの自室で甘い雰囲気をかもし出している。部屋の外まで桃色の空気が見えた気がした。
「私も観に行きたかったにゃ・・・・・・」
「サーゼクスに頼んでテレビで見れるようにしてやっただろうが」
俺の部屋に置いてある薄型テレビの横によくわからない機器がおいてある。
「ところで黒歌、いつ会いに行くつもりだよ」
「・・・・・・試合が終わって一段落着いたら会いに行く」
なんでそんな風にしょんぼりしているんだよ。
サーゼクスの計らい(?)で黒歌は無実だと証明されているんだから大丈夫だとは思うんだがな。
もちろん小猫、ここでは白音と呼ぼう、もことの真相は知っている。
「それでもやっぱり拒絶されるのが怖いのよ!」
涙目で睨まれた・・・・・・。
旧校舎の部室、既に全員が集合して一番リラックスできる方法で待機している。
いくら相手が格下(?)とはいえ、試合前の緊張感は中々心地いい。
開始十分前になったころ、部室の魔方陣が光だし、グレイフィアが現れた。
「皆さん、準備はお済になられましたか?開始十分前です」
グレイフィアが確認すると、全員が立ち上がった。すでに用意していた物資は渡してある。
「開始時間になりましたら、ここの魔方陣から戦闘フィールドへ転送されます。場所廃空間に作られた戦闘用の世界。そこではどんなに派手なことをしても構いません。使い捨ての空間なので思う存分どうぞ」
リアスとイッセーがもう一人の『僧侶』について話している。まあ、あれは出れなくて当然だもんな、気になるのも仕方がない。
「今回の『レーティング・ゲーム』は両家の皆様も他の場所から中継でフィールドでの戦闘をごらんになります」
元々見世物の遊びだもんな。
「更に魔王ルシファー様も今回の一戦を拝見されておられます。それをお忘れなきように」
「「サーゼクス(お兄様)が?」」
俺とリアスの言葉が重なる。
イッセーだけでなく、他の皆もキョトンとしている。ああそうか、俺って魔王を呼び捨てにしてるもんね。
「あ、あの、いま、部長が魔王様のことをお兄様って・・・・・・。それにゼロ兄が魔王様のことを呼び捨てにしていませんでしたか?俺の聞き間違いでしょうか?」
「いや、部長のお兄様は魔王様だよ」
祐斗がイッセーの質問に答える。
その後祐斗がイッセーにサーゼクスのことを説明する。
「それじゃあなんでゼロ兄が魔王様のことを呼び捨てにしていたんだ?」
「それは僕にもわからないなぁ。グレイフィアさんと知り合いだったことも知らなかったしね」
サーゼクスが魔王になっちゃったから妹のリアスが家を継がなければいけない、イッセーはそういったことを考えているようだ。間違ってはいないけど、次期当主候補はもう一人いるんだよね。
「そろそろ時間です。皆様、魔方陣のほうへ」
グレイフィアに促され、俺たちは魔方陣の上に上がる。
「なお、一度あちらへ移動しますと終了するまで魔方陣での転移は不可能となります」
魔方陣の紋様がレーティングゲーム仕様に切り替わる。それを確認した瞬間、光が立ち上り、転移が始まった。
転移した場所は部室だ。と言っても模造されたものだけど。
『皆様。このたびグレモリー家、フェニックス家の「レーティング・ゲーム」の審判役を担うこととなりました。グレモリー家の使用人グレイフィアでございます』
放送でグレイフィアの声が響く。校内放送じゃないぞ?
『我が主、サーゼクス・ルシファーの名の下、ご両家の戦いを見守らせていただきます。どうぞ、よろしくお願いいたします。早速ですが、今回のバトルフィールドはリアス様とライザー様のご意見を参考にし、リアス様が通う人間界の学び舎「駒王学園」のレプリカを異空間にご用意いたしました』
イッセーとアーシアはこれがレプリカということに驚いている。再現率100%だもんな、はじめてだったら俺でも驚く。
まあ空が白いから窓の外を見れば簡単に気付けるんだけどね。
『両陣営、転移された先が「本陣」でございます。リアス様の本陣が旧校舎のオカルト研究部の部室。ライザー様の本陣は新校舎の生徒会室。「兵士」の方は「プロモーション」をする際、相手の本陣の周囲まで赴いてください』
いまのはイッセーのための説明だな。
「全員、この通信機を耳に付けてください」
朱乃がイヤホンマイクタイプの通信機を配る。
「戦場ではこれで味方同士やり取りするわ」
壊さないようにしないとな。代えはないんだし。
『開始のお時間となりました。なお、このゲームの制限時間は人間界の夜明けまで。それでは、ゲームスタートです』
キンコンカンコーン。
鳴り響くチャイム。これが開始の合図だ。
「さて、初体験の始まりだな」
『おい・・・・・・言い方がおかしいぞ?』
Side イッセー
「さて、まずは『兵士』を撃破しないといけないわね。八名が全員『女王』に『プロモーション』したら厄介だわ」
部長がソファに腰を降ろしながら言う。意外に余裕だな。
朱乃さんもお茶の準備を始める。・・・・・・戦闘中じゃないんですか?
予め説明は受けていたけど、ちょっとビックリ。
「敵は『犠牲』を常套手段としている。撃破に成功したからとは言え気を抜いたら即お陀仏だ」
ゼロ兄が注意するように言う。なんでも相手の『女王』は上空からの魔力攻撃による奇襲を得意としているらしい。
皆が作戦会議に参加しているが、俺とアーシアはほとんど蚊帳の外だ。よくわからないからな。
「祐斗と子猫は、まず森にトラップを仕掛けてきてちょうだい。予備の地図を持っていって、トラップ設置場所に印をつけるように。後でそれをコピーして全員に配るわ」
「はい」
「了解」
命令されるやいなや、木場と小猫ちゃんは地図と怪しげなトラップグッズを持って部室を出て行った。
「トラップの設置が完了するまで他の皆は待機。あー、朱乃」
「はい」
「祐斗と子猫が帰ってきたら、森周辺、空も含めて霧と幻術をかけておいてくれるかしら。もちろん、ライザーの眷属にのみ反応する仕組みよ。序盤はこんな感じかしら、中盤に動きが激しくなりそうだけど。霧と幻術の件、お願いね」
「わかりました」
朱乃さんが了承する。
既に試合がはじまってるんだな、と改めて実感した。
「そうだ、ゼロは『分身』を出しておいて。他の皆がピンチになったら助けてほしいから」
「わかった」
分身って?
「イッセー、『兵士』の『プロモーション』のような駒独自の特殊能力のことだ。俺の場合はかなり特殊だが」
たしか部長しか持っていない特注の駒だったっけ?
「まあ見てろ、『インクリース』・・・・・・」
ゼロ兄がそう言うと、突如足元にに小さな魔方陣が複数現れる。
魔方陣が回転しながら上に上がっていき、人型の何かを魔方陣と同じ数だけ作り出した。
顔は仮面をつけていて見えないけど、どことなく背格好がゼロ兄に似ているような?
「散れ」
ゼロ兄がそう言うと、仮面男(仮称)は忍者みたいにシュバッと消えた。
「イッセー、ちょっといらっしゃい」
「はい」
部長がちょいちょいと手招きする。
「少し動かないでね」
俺の頭に部長の手が置かれた。
「あなたに施した封印を少しだけ解くわ」
「え?封印?」
疑問を口にしたとき、俺の身体が大きく脈動する。
ドクン!
同時に体のそこから力が湧きあがってきた。なんだ、これ?ブーステッド・ギアのパワーアップとは違う感覚だ。あれは他の場所から流れ込んでくる力だとすれば、いまのこれは体の奥底から吹き上がり、全身に馴染んで解けていく感じだ。
「覚えてる?あなたを下僕に転生する時、『兵士』の駒を八つ全部使ったって話を」
「はい」
「そのとき、イッセーの力は悪魔として未成熟過ぎたから、『兵士』の力に制限をかけたの。ただの人間から転生したばかりのあなたでは、八個分の『兵士』の力に耐えられなかった。単純な話し、朱乃の次に強力な力となるのだから、よほどの力をつけないとイッセーのほうが壊れてしまう。だから、何段階かに分けて封印をかけたのよ。それをいま少しだけ開放させたの」
じゃあ、いま俺の体に溢れるこの力は本来の俺のものか。
「あの修行は、ブーステッド・ギアと『兵士』の力に対応するためのもの。まだまだ足りない部分もあるけれど」
あの過酷な修行という名のイジメにここまで意味があったとは!死に掛けてまで必死に乗り越えて来てよかった!
「いい、イッセー?相手が女の子でも倒すのよ?手加減しちゃダメ。あちらは手加減なんてしないのだから」
「わ、わかりました!」
「そう、いい子ね。『プロモーション』は『女王』になること。最強の力を持つ『女王』になれば戦況も変わるわ」
「男の俺が『女王』になるのも変な感じです」
俺の言葉に部長は面白そうに笑った。
「駒の役割名なんだから、深く考えなくていいのよ。家はただでさえメンバーがライザーより少ないわ。別の役割を覚悟でやらないといけないから、一人でも欠いたら戦いが厳しくなるわね」
部長は俺たちの役割をちゃんと把握して、戦場での戦いを模索しているんだな・・・・・・。
俺が遠くから神器で高めた魔力の魂を後者に向けて放てば一気に勝負が付く・・・・・・ほど甘くはないか。
パワーアップした攻撃には限りがあるし、俺は魔力が苦手だから無駄なことは出来ない。やるなら『女王』に昇格してからのほうが威力も含めて安心できるだろう。
「部長!俺、絶対に部長を勝たせてみせます!」
本心、決心だ。こういう言葉は言葉にしてナンボだろう。
ゼロ兄が出張れば一瞬で決着がつくみたいだけど、やっぱりアーシアにもいいところを見せたい。
「ええ、期待しているわ」
あんな野郎に部長を任せられるか!と俺は意気込む。
部長の心は既にゼロ兄のものなんだ!(修行一週間目の夜に二人のことを覗いていた)焼き鳥野郎を倒して見せる!
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