Side ゼロ
「ぜ、ゼロ―――っっ!お父さ―――んっっ!ま、孫が出来るわよ―――っっ!」
はぁ、風呂場でナニやってるんだよあの二人。もうそんなに進んだのか?
と思っていたが、すぐにイッセーが弁解して来た。ただの風呂場でばったりイベントだったことにつまらなさを覚える。おばさんタイミング悪すぎだよ。
もう少しで関係が進んだかもしれないのに。
まったく、アーシアが家に来たせいで黒歌と密会(?)するのも一苦労になったよ。前は結界を張るだけでよかったのに・・・・・・。
「ひーひー・・・・・・」
はっはっは、今日は修行をするために山を登っているぜ。遥か後ろのイッセーが息を荒くしている。
今回は黒歌はお留守番、ではなく『禍の団』の追加調査に向かわせている。
「ほら、イッセー。早くなさい」
前を歩くリアスがイッセーに激を飛ばす。
リアスはトレーニングに関しては妥協しないからな。
「部長、山菜を摘んできました。夜の食材にしましょう」
祐斗が涼しい顔で巨大な荷物を背負いながら上っていく。ちなみに俺は蛇を捕まえたりしている。蛇の肉って結構美味しいよ?
「うおりゃぁぁぁぁぁぁ!!」
イッセーは気合を入れて山道を駆け上がり始めた。小猫に抜かされたのがそんなに悔しかったんだろうか?
グレモリー家所有の木造建築の別荘。普段は魔力で風景に隠れ、人前に現れない仕組みになっている。
魔力って便利だよね、万能ではないみたいだけど。
「僕も着替えてくるね。覗かないでね」
「マジで殴るぞ、この野郎・・・・・・」
イッセーと祐斗がなにやら言い合っているが気にしない。
ふっふっふ・・・・・・。
「さっそく修行を始めるぞ!イッセー、祐斗、小猫!」
何をやるかって?俺自らが鍛えてやるのさ。
「行くぜストラーダ!」
『おうよ!』
『「禁手化!!」』
俺は金色の装飾がつけられた漆黒の鎧を身にまとった。
「「「えぇぇぇぇぇ!!」」」
「さあ!修行を始めるぞ!避けて避けて避けまくれ!」
『Legion!!』
三頭のヘルハウンド(赤黒くて牛並みに大きい狼)を生み出し、共にイッセーたちに襲い掛かる。
「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
イッセーと祐斗の叫び声と無数の破壊音が山の中に響き続けた。
「ちょっまっ!洒落になんねぇぇぇぇぇぇ!!」
「かすった!ブレスがかすった!」
「・・・・・・(必死)」
「いいか!接近戦主体のお前たちに必要なのは圧倒的な回避力だ!シャキシャキ避けろ!」
「「わぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
叫び声が響き続けた。
「うおおおお!美味ぇぇぇ!マジで美味い!」
「ホント、目から涙が出てくるよ」
「・・・・・・(ガツガツ)」
今日一日の修行を終え、俺たちは夕食をとっている。
イッセーと祐斗と子猫の食欲がいつも以上にすごいことになっている。
「あらあら。おかわりもあるからたくさん食べてくださいね」
「朱乃の料理は相変わらず美味いな」
「・・・・・・ぽっ/////」
ふっふっふっふっふ、なんだか猛烈にバラキエルに自慢したくなってきた。
おっと、イッセーとアーシアがまた二人だけの空間を作ってるな。料理と嫁がどうこう言っている。
リアスがそれに割って入って修行の感想をイッセーに聞いている。と言うかよく割って入れたな。
「食事を終えたらお風呂に入りましょうか。ここは温泉だから素敵なのよ」
イッセー、貴様アーシアと言うものがありながらよからぬことを考えたな?
「僕は覗かないよ、イッセーくん」
「バッカ!お、お前な!」
祐斗、ナイス。
「あら、イッセー。私たちの入浴を覗きたいの?」
全員の視線がイッセーに集中する。
「だ・め・よ。あなたにはアーシアがいるでしょう?」
その言葉でイッセーとアーシアに衝撃が走った。
「なんならアーシアと二人で入ってきたらどう?」
リアスが更なる爆弾を投下した。
二人とも顔が赤くなってるぞ?大丈夫なのか?ああ見えてイッセーは初心だから混浴なんかしたら貧血で倒れそうだ。
「なら私はゼロと一緒に入りたいわ。ゼロの背中を流してみたいかもしれません」
「私もゼロ先輩と入りたいです」
え?まさかの飛び火?
朱乃と小猫が両サイドにいつの間にかにいた。あれ?
「なら私もゼロと一緒に入ろうかしら」
リアス、お前もか?お前もなのか?
「よかったね、ゼロくん」
祐斗・・・・・・。
「「/////」」
イッセー、アーシア、いつまでそうやっているつもりだ・・・・・・。味方がいない・・・・・・。
おい、朱乃、小猫なんで俺の腕に抱きつく。引きずるな・・・・・・、もしかしてマジで一緒に入らされるのか?
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
結局一緒に入浴し、男の大事な場所以外の体の隅々まで三人に洗われました。なんか三人の目が危なかった・・・・・・。
言っておくけど抱いたりはしてないからね?色々と危ない雰囲気だったけどさ。
修行二日目。
イッセーは夜に魔力操作の練習をさせていた。まったくもって才能がない。と言うかないどころかマイナスだったよ。
まあ俺のアドバイスで原作通りの技を思いついたようだが。
今日の修行は原作ではたしかお勉強会だった気がするが、俺が家で二人に悪魔としての知識を叩き込んでいたからそんなことは必要ない。
いまは昨日と同じようにイッセーたちを追い掛け回している。なかなか楽しいぞ?小猫が無言で逃げ回ったり祐斗が悲鳴を上げているところとか。
「全然!」
「楽しく!」
「ない・・・・・・」
五頭に増えたヘルハウンドと俺からの猛攻(?)を回避しながら訴えてくる三人。今回からはなるべく反撃してくるように言いつけてある。
ヘルハウンドは口から火炎を吹いてくるから回避が中々厳しいようだ。狼の癖に若干知能が高いしな。
「火が!火が!服が燃える!」
「爪が服を破いてるんだけど!」
「・・・・・・(必死)」
三人ともボロボロだな。
イッセーと祐斗がしょっちゅう攻撃を喰らっている気がするんだが気のせいか?小猫は?
夜、山に篭ってから一週間がたった。
朝から晩まで修行付け、最近では小猫と祐斗が俺にまともな反撃が出来るようになって来た。利かないけど。
俺は台所でビンコーラを飲み干す。やっぱり炭酸飲料はコカ・コーラに限るな。
「あら?起きてたの?」
リビングからリアスの声が聞こえてきた。
「リアスこそ」
空ビンを捨ててリアスの隣に座る。
「メガネなんてかけてどうしたんだ?」
「あー、これ?気分的なものよ。考え事をしている時にメガネをかけていると頭が回るの。ふふふ、人間界の暮らしが長い証拠ね」
リアスはクスクスと笑いながらそう言う。
テーブルを見ると、地図やフォーメーションなどを書かれた紙、ノートが置かれている。夜中に一人で作戦を考えていたんだろう。
「正直、こんなものを読んでいても気休めにしかならないのよね」
「そんなことはないぞ。フェニックスにも弱点はある」
「それはそうだけど、相手は『不死身』よ?」
リアスはため息をつきながら言う。
「なあ、前々から気になっていたんだが」
「何かしら?」
「なんでライザーのことを嫌っている。いや、今回の縁談を拒否しているんだ?」
俺の問いにリアスがまた溜息をついた。
確かにライザーは結婚相手としてはよくないが、お家の事情を考えると無下に断れないもののはずだ。
「私は『グレモリー』なのよ」
「・・・・・・」
「私は悪魔でもグレモリー家の人間で、どこまで言ってもその名が付きまとうわ」
「それが嫌なのか?」
「誇りには感じているわ。けれど、私個人を殺しているものでもある。誰しも私のことをグレモリーのリアスと見るわ。リアス個人として認識してもらえない。だから、人間界での生活に充実していたの。誰も悪魔グレモリーのことなんて知らないものね。皆、私を私としてみてくれている。それがたまらなく好きだわ。悪魔の社会ではそれを感じることは出来なかったし、これからも感じることなんて出来ないわ。私が私として充実できるのは、この人間界にいる間だけ」
「それは仕方がないことだ。どこの世界も貴族とは家柄や名声を重視する」
種族も関係なくな。
「ええ、そうよ。でも、私はグレモリーを抜きとして、私を、リアスを愛してくれる人と一緒になりたいの。それが私の小さな夢・・・・・・・。残念だけれど、ライザーは私をグレモリーのリアスとして見ているわ。そして、グレモリーのリアスとして愛してくれている。それが嫌なの。それでもグレモリーとしての誇りは大切なものよ。矛盾した想いだけど、それでも私はこの小さな夢を持っていたいわ」
お家の事情か。リアス本人も複雑なのだろう。だけど。
「俺は血筋なんかには興味がないからな。俺はリアスを”リアス”個人として見ているぞ?」
俺が言った言葉に、リアスは目を丸くしていた。
「地位がほしいとは思うけど、悪魔の貴族社会なんかには一切興味はない。だから俺の中ではいつまでも、なにがあってもリアスはリアスのままだ」
俺は天井を眺めながら言い切る。
返事がないのを怪訝に思い、リアスのほうを見ると、リアスは顔を真っ赤にして俯いていた。
「イッセー、ブーステッド・ギアを使え」
次の日、修行を始める前にイッセーに言った。
この山に入ってからは禁止していたんだが、今日から解禁と言うわけだ。
「祐斗、イッセーの相手をしてやってくれ」
「今日は違うことをするのかい?」
「まあそんなところだ」
イッセーが木場と戦えってか!と内心思っているところだろう。
「イッセー、神器を発動させろ。発動から二分後に模擬戦開始だ」
「おう」
『Boost!!』
イッセーの神器が音声を発する。
力の倍化を十二回繰り返したところで待ったをかける。
「行くぞ!ブーステッド・ギア!」
『Explosion!!』
「模擬戦を始めろ」
俺の言葉と共にイッセーと祐斗が構える。イッセーは素手、祐斗は木刀だ。
『Reset』
「そこまでだ」
イッセーは魔力弾を撃った姿勢のまま硬直している。そりゃあそうだ、自分の攻撃が山を吹き飛ばして地形を変えたんだからな。
イッセーの能力も最初に比べて一気に上がっているな。祐斗もかなり成長している。
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