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戦闘校舎のフェニックス
悪魔、やってます。
 Side イッセー


 え~、現在、俺はなぜか教会(チャペル)らしき場所にいます。周囲には見知った人たちもいます。

 「ちくしょう!イッセーが何で結婚なんて!」

 「何かの間違いだ!これは何かの陰謀だ!」

 坊主頭の松田、メガネの元浜。悪友二人が恨めしそうな表情で、俺に言葉を贈ってくれている。

 「イッセー初孫は女の子だよー!」

 「うぅ、立派になって!性欲だけが自慢のどうしようもない子だったのに!」

 「イッセー、おめでとう。子供が何人出来るか見物だな」

 「私たちみたいにたくさん赤ちゃん作るんだにゃん♪」

 父さん母さんは号泣している。ゼロ兄は笑顔だ。しかし、勝手なことばかり言いやがって!俺は種馬じゃねぇんだぞ!というか何気に黒歌さんいるし。
 俺の格好は白のタキシード。まるで結婚式のような場面。つーか、結婚式だろ。
 お約束の音楽も流れている。あれ? 俺の結婚式!?
 突然の出来事に動揺を隠せないが、こうなると俺の嫁さんは誰だ?

「イッセーさん、キョロキョロしてはダメですよ」

 隣から聞き覚えのある声。横を向けば金の髪をなびかせている美少女―――アーシア・アルジェントがいた。
 偶然俺が街で見かけたシスター。オカルト研究部で堕天使から助け出した女の子。その後、悪魔となった子でもある。

 眩しい! アーシアのウェディングドレス姿が眩しすぎる。直視できない。
 アーシアが俺の隣にいるってことは、俺の―――

 「アーシアちゃん!綺麗だよ!」

 「なんでだ!アーシアちゃん!」

 参列者の悲鳴が教会の各地から上がる。誰も俺のことは褒めてくれないのね・・・・・・・。
 というか、これは俺とアーシアの結婚式! いつの間にそういう関係になっていて、ついにこういう展開になってしまったわけか。よくわからないが、何も問題はない!というか大歓迎!

 「いついかなる時も―――」

 何やら神父さんが言っているが、俺はほかのことで頭がいっぱいだった。
 結婚=夫婦、夫婦=家庭、家庭=子供、子供=子作り、子作り=性交渉、性交渉=夫婦の情事、夫婦の情事=結婚初夜から開始・・・・・・結婚初夜。
 脳内でアーシアがベットで待機している。こ、これは・・・・・・アーシアとエッチができるのか!!
 だ、だが、俺に無事完遂できるだろうか? いや、できる! 知識だけは人一倍だし、シュミレーションを来る日も来る日もやっていたではないか!
 そう、俺は模擬選ではエースパイロットなのだ。後は実践を待つだけのエリートなのだ!

 「それでは、誓いの口付けを」

 そうだ、まずはこれがあった。教会でのキス。アーシアとキス!
 アーシアは目を瞑って、こちらを待っている。いいんだな! よし! いきます!
 唇を突き出して、いざ!アーシアのもとに!



 『随分と盛り上がっているじゃないか、クソガキ』



 ―――ッ!
 頭の中に響く謎の声。
 低く、迫力のある声だ。聞き覚えはない。だが、なぜか俺はそいつを知っているような気がした。しかも身近にいるような・・・・・・。

 『そうだ。俺はお前のすぐそばにいる』

 ・・・・・・誰だ?
 周囲を見回すと、いつの間にか教会の影も形もなくなっていた。
 隣にいたアーシアの姿もない。
 突然あらゆる感覚が消えた。平衡感覚、触覚、視覚、聴覚全てがだ。
 誰だ!どこにいる!

 『俺だ』

 声は出ないが、心底驚いた。
 突然目の前に巨大な怪物が現れたんだ、誰だって驚くに違いない。
 大きな目。血のように赤い瞳。耳まで裂けた口に鋭い牙が何本も生えそろっている。
 全身を覆うのはマグマのように真っ赤な鱗。全身を覆うのはマグマのような色の鱗。
 そしてなにより、バッと広がっている雄大な両翼がこの怪物を一層でかく見せている。
 ―――ドラゴン。
 声に出していないのに俺の言葉がわかったのか、目の前のドラゴンは口の端を吊り上げた。

 『そうだ。その認識でいい。俺はずーっとお前に話しかけていた。だが、お前が弱小すぎたせいか、今の今まで俺の言葉が届かないでいた。やっとだ。やっとお前の前に出現できた』

 こいつの言っていることで一つ思い出した。

 「お前の神器(セイクリッド・ギア)には俺の神器(セイクリッド・ギア)と同じように強大なドラゴンの力と精神が宿っている」

 ゼロ兄は確かにそう言っていた。ならこいつが俺の―――

 『その通りだ。俺はお前の中にいるお前の想像通りの存在だ。いずれ、また話そう。なあ、相棒』

 自分の左腕を視線に移した時、俺の左腕は赤い鱗に包まれ、鋭い爪をむき出しにしたドラゴンの腕になっていた。


















 「ぜーはぜーはー」

 「ほらイッセー、だらしなく走らないの。あとでダッシュ十本追加するわよ?」

 「なーぜ俺までイッセーに付き合わなければならない!しかもリアスを背負ってイッセーにあわせながら!」

 俺は息を切らせながら早朝に住宅街を走りこんでいた。
 隣を部長を背負いながら走るゼロ兄は全くといっていいほど汗をかいていない。文句は言っているが。

 「ハーレム王に、俺はなる・・・・・・ぜーはー」

 「そうよ、その意気よイッセー。日々の基礎訓練から少しずつでも強くならないと上級悪魔になんてなれないわよ!」

 部長、相変わらずきついです。
 なんでこんなことをやっているかというと、

 「私の下僕が弱いなんてことは許されないわ」

 の一言で朝練をやらされている。
 部長スパルタっス。
 朝から二十キロのマラソン、ダッシュ百本、その他筋トレ百回ずつ。ここのところ毎朝瀕死状態です・・・・・・。

 「はぁはぁ・・・・・・」

 ゴールである公園に到着すると、俺は走るのをやめて地面に倒れこむ。
 部長を背負いながら俺に合わせて走っていながら涼しい顔をしているゼロ兄の身体がどうなっているか知りたい。

 「お疲れ様。さて、ダッシュ行くわよ」

 鬼だ・・・・・・。















 Side ゼロ


 さすがにマラソン以外のトレーニングにまで付き合わされることはなかった。面倒だし。

 「せんぱーい」

 「イッセーさーん、ゼロさーん、部長さーん、遅れてすみませーん・・・・・・はぅっ!」

 小猫とアーシアが現れた。アーシアは転んだ。小猫は俺のことしか呼んでいないようだ。






 「イッセーさん、お茶です」

 「あ、ああ、ありがとう」

 俺たちの前でイッセーとアーシアが二人だけの空間を構築していた。これはピンク色のオーラが幻視できるな。

 「先輩、これ」

 隣に座った小猫がミニクーラーボックスからビンコーラ(コカ・コーラ)を差し出してきた。

 「ありがとう」

 「ふにゃぁぁ・・・・・・/////」

 俺がお礼を言って頭を撫でると、小猫は気持ちよさそうに顔を緩ませる。
 ビンの蓋を開け、半分ほど一気に飲み干す。やっぱり運動後の冷えたコーラは格別だ。

 ※作者の喉が一気に渇いた。コーラを飲みたいなぁ※

 ん?なにか幻聴が聞こえたような気がする。

 「あなたたちまで二人だけの空間を作らないでよ?」

 リアスが耳打ちしてきました。
 そんなことあるわけ・・・・・・あるかもな、小猫を見ていると。

 「それにしてもイッセーめ、口では「ハーレム王になる」とか言っているが、本当になるか怪しいところだ」

 「ホントよね。正直見ているだけで恥ずかしいわ」

 リアスとヒソヒソ話をしているが、当の二人は気付いていないくらいだ。

 「ちょうどいいわ。このままイッセーとゼロのお家に向かいましょう」

 手を叩きながらリアスが言う。イッセーとアーシアもいまのはちゃんと聞こえたようだ。
 っていうか俺の家かよ。・・・・・・そう言えば原作にもこんなのがあったな。

















 「クソ、自分の予想通りになるのが心底恨めしい」

 家に戻ると、玄関には複数のダンボールが積み上げられていた。

 「あの・・・・・・これはいったい?」

 「アーシアの荷物よ。今日からアーシアはあなたたちの家に住むの」

 イッセーがリアスに聞くが、あっさりと返されてしまう。

 「イッセー、よかったじゃねぇか。浴室でばったり、とかあるかもしれないぞ?」

 俺がイッセーの肩に手を置いて小声でそう言うと、すぐにやる気を出してダンボールを一人で運び始めた。現金な奴め、安すぎるだろうが。


 その後行われた家族会議において、イッセーの性欲が問題視されたが結局アーシアは俺たちの家に住むことになった。

 「今回はホームステイは花嫁修業も兼ねて―――というのはどうでしょうか」

 とかリアスが言い出してアーシアが健気にイッセーのことを弁解するから、もうおじさんとおばさんが号泣しちゃって、なんとかしてくれ。
 ちなみに、予め黒歌は隠しておいた。

 「・・・・・・花嫁、ね」

 最後に少し寂しげにそういったリアスが妙に気になった。
 原作では・・・・・・なにがあったんだっけ?たしか、レーティングゲームをやったり山で修行をすると言うことは覚えているんだが。













 Side イッセー


 「おりゃぁぁあぁぁぁ!」

 俺は今、気合を込めて自転車のペダルをこいでいる。
 目的地の前に辿り着くと、自転車の後ろに座っていたアーシアがポストにチラシを投函した。

 「完了です」

 「OK」

 アーシアが後ろに乗ったのを確認して、俺は再び自転車をこぎ始めた。
 今行っているのは、チラシ配りだ。

 「・・・・・・イッセーさん、本当によろしいんですか? 私のチラシ配りをお手伝いしてくださるなんて・・・・・・」

 「ああ、問題ねーよ」

 そう、俺はアーシアがやっているチラシ配りのお手伝いをしているのだ。にけつで自転車に乗っている。

 「だって、アーシアは自転車乗れないんだろう? なら、代わりの運転手が必要さ」

 「うぅ、すみません。自転車とは縁がなかったものですから・・・・・・。でも、歩いてなら―――」

 「そんなの余計させられないよ。アーシアのことが心配なんだ、俺は」

 アーシアは北欧の片田舎から先月日本に来たばかりだ。
 地理とか言う以前に文化レベルで困ることがたくさんあるはずだ。
 それにアーシアは世間知らずだからなにが起こるかわかったもんじゃないしな。

 「ほら、アーシア。あれが神社だ。オレら悪魔は入っちゃダメだぞ」

 自転車で通過する途中にある神社をアーシアに紹介する。

 「はい。悪魔は精霊が集まるところや土地の神様に関係するところに行ってはダメなんですよね?クリスチャンの私には『八百万の神』は理解しかねますけど」

 一神教の文化で育ったアーシアには、よくわからないところがあるみたいだ。日本の文化を学ぶのは険しい道みたいだな。

 「あ! あそこ。今は閉まっているけど、おいしいパン屋さんなんだ。今度一緒に買いに行こうか?」

 「はい! 日本のパンは甘くて大好きです!」

 何気ない会話がとても楽しい。夜のデート。最高の気分だ。
 こんな風にチャリの後ろに女の子を乗せてこいでみたかったんだ・・・・・・。夢が一つかなった気分。

 「イッセーさんは『ローマの休日』を観たことがありますか?」

 不意にアーシアが聞いてくる。

 「昔の映画だろ?直接見たことはないけど内容は大体知ってるよ」

 つい最近うちの居候猫(愚痴)が教えてくれたからね。

 「でも、どうしてその映画が?」

 「ずっと、憧れだったんです。こうやって・・・・・・。あれはバイクでしたけど。それでも私・・・・・・。うふふ」

 腰に回された腕をぎゅっとしてきた。
 ・・・・・・顔に熱が集まっている気がする。









 「ただいま戻りました!」

 俺とアーシアはチラシ配りを終えて、部室に戻ってきた。

 「あらあら、お疲れ様。今お茶を入れますね」

 朱乃さんがお出迎えしてくれた。

 「やあ、夜のデートはどうだった?」

 木場がスマイルを浮かべながら聞いてくる。

 「最高に決まってんだろ」

 俺は拳の親指を立てて木場に送る。

 「・・・・・・深夜の不純異性交遊」

 小猫ちゃんが静かな声で厳しいことを言っているが、きっと俺たちの雰囲気が羨ましいんだろう。最近、俺たちのことを見てからゼロ兄のことをチラチラと見たりすることが多いからな。
 あ、睨まれたし。心を読まれた?

 「部長。ただいま帰還しました」

 「ご苦労様、イッセー、アーシア」

 最近ボーっとしていることが多い部長だが、すぐに返事をしてくれた。

 「さて、今夜からアーシアにも契約を取ってきてもらいましょうか」

 おっ!マジか!

 「え?」

 キョトンとしているアーシア。

 「アーシア、今日から悪魔として本格的にデビューだ! 魔法陣から依頼人のもとへジャンプして契約してくるんだよ!」

 「わ、私がですか?」

 狼狽して自分を指差すアーシア。

 「ですよね、部長?」

 「そうよ。チラシ配りは今夜で終了。いつまでもやらせておくと、二人のデートの方が席に進んでしまいそうだもの」

 そっちを危惧していたんですか・・・・・・。
 下僕いじりはやめてください。

 「そう言えば部長、ゼロ兄は?」

 「契約取りに行っているわ」

 そうか・・・・・・。きっと綺麗な女の人に色々やっているんだろうな・・・・・・。
















 Side ゼロ


 「イッセーは過保護だ」

 『まったくだwww』

 契約取りが終わって帰宅し、シャワーを浴びた後にストラーダを会話している。
 黒歌はいない。お使いを頼んでいるからな、朝には帰ってくるだろう。

 「原作では次になにが起きるんだっけ?」

 俺がそう呟いた時、部屋の床に光が走り始めた。
 俺たちグレモリー眷属の魔方陣だ。

 「リアス!何事だ!」

 なにやら思いつめた表情をしているリアスに聞く。

 「ゼロ、私を抱いて」

 ・・・・・・What?いまこの人はなんていった?

 「私の処女をもらってちょうだい。至急お願いするわ」

 いまの言葉で原作の内容を少し思い出した。
 でもこれ、たしかイッセーのところに行くんじゃなかったか?もしかしてイッセーがアーシアにゾッコンになったから俺のところに?








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