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旧校舎のディアボロス
人間、やめました。2
 Side イッセー


 「粗茶です」

 「あっどうも」

 ソファーに座る俺へ姫島先輩がお茶を淹れてくれた。
 ずずっと一飲み。

 「うまいです」

 「あらあら。ありがとうございます」

 うふふ、嬉しそうに笑う姫島先輩。
 テーブルを囲んでソファーに座る俺、木場、小猫ちゃん、ゼロ兄、リアス先輩。

 「朱乃、あなたもこちらに座ってちょうだい」

 「はい、部長」

 姫島先輩はゼロ兄とリアス先輩の間に腰を下ろした。
 この人が将来の義姉(?)になるのかな・・・・・・。
 全員の視線が俺に集まる。

 「単刀直入に言うわ。私たちは悪魔なの」

 そ、それはとても単刀直入ですね。

 「信じられないって顔ね。まあ、仕方ないわ。でも、あなたも昨夜、黒い翼の男を見たでしょう?」

 確かに。
 しかもゼロ兄が撃退しちゃってたしね。

 「あれは堕天使。元々は神に仕えていた天使だったんだけれど、邪な感情を持っていたため、地獄に落ちてしまった存在。私たち悪魔の敵でもあるわ」

 堕天使ときましたか。そう言えばその時ゼロ兄が中級堕天使とか言ってた。
 ファンタジーもここに極まるね。

 「私たち悪魔は堕天使と太古の昔から争っているわ。冥界―――人間界で言うところの『地獄』の覇権を巡ってね。地獄は悪魔と堕天使の領土で二分化しているの。悪魔は人間と契約して代価をもらい、力を蓄える。堕天使は人間を操り悪魔を滅ぼそうとする。ここに神の命を受けて悪魔と堕天使を問答無用で倒しに来る天使と三竦み。それを大昔から繰り広げているのよ」

 「いやいや、先輩。いくらなんでもそれはちょっと普通の男子高校生である俺には難易度の高いお話ですよ。え?オカルトお研究部ってこういうこと?」

 この会話は既にオカルト研究部の議題か何かですか?

 「オカルト研究部は仮の姿よ。私の趣味。本当はあたしたち悪魔の集まりなの」

 いえいえ、オカルト研究部の会話でしょ、これ。

 「―――天野夕麻」

 その一言を聞いて、俺は目を見開いた。
 どこでそれを知った?

 「あの日、あなたは天野夕麻とデートをしていたわね?」

 「・・・・・・冗談なら、ここで終えてください。正直、その話はこういう雰囲気で話したくない」

 いつの間にか、俺の声には怒気が含まれていた。
 それは、その話は俺にとって腫れ物に近い。

 「彼女は存在していたわ。確かにね」

 ハッキリとリアス先輩は言う。

 「まあ念入りに自分であなたの周囲にいた証拠を消したようだけれど」

 リアス先輩が指を鳴らすと、姫島先輩が懐から一枚の写真を取り出す。
 そこに映っていたものを見て、俺は言葉を失った。

 「この子よね?天野夕麻ちゃんって」

 そう、写真に写っていたのは捜しても見付からなかった彼女の姿だった。
 そして、その夕麻ちゃんの背中には黒い翼が生えている。

 「この子は、いえ、これは堕天使。昨夜、貴方を襲った存在と同質の者よ」

 堕天使?夕麻ちゃんが?

 「この堕天使はとある目的が会ってあなたと接触した。そして、その目的を果たしたから、あなたの周囲から自分の記憶と記録を消させたの」

 「目的?」

 「そう、あなたを殺すため」

 ッ!なんだ、そりゃ!?

 「な、なんで俺がそんな!」

 「落ち着けイッセー。仕方がなかった。お前が俺と同じようにそういう因子(ファクター)を生まれ持っていたからだ。まあ、何も起きない所持者もいるんだが」

 「・・・・・・」

 ゼロ兄が割り込んできたおかげで少し落ち着いた。少しね。
 ・・・・・・あれ?殺された?いや、俺は生きている。こうして生きているじゃないか。

 「あの日、あなたは彼女とデートして、最後にあの公園でお腹を貫かれたのよ」

 「でも、俺生きてるッスよ!」

 「彼女があなたに近づいた理由はあなたの身にとある物騒なモノがついているかいないか調査するためだったの。きっと反応が曖昧だったんでしょうね。だから、時間をかけてゆっくりと調べた。そして、確定した。あなたが神器(セイクリッド・ギア)を身に宿す存在だと―――」

 神器(セイクリッド・ギア)―――。
 その単語に聞き覚えがあった。
 夕麻ちゃんは確かにあの時その単語を口にした。

神器(セイクリッド・ギア)とは、特定の人間の身に宿る、規格外の力。例えば、歴史上に残る人物の多くがその神器(セイクリッド・ギア)所有者だと言われているんだ。神器の力で歴史に名を残した」

「現在でも体に神器(セイクリッド・ギア)を宿す人々はいるのよ。世界的に活躍する方々がいらっしゃるでしょ?あの方々の多くも体に神器(セイクリッド・ギア)を有しているのです」

 木場と姫島先輩が後に続く。

「大半は人間社会規模でしか機能しないものばかり。ところが、中には私たち悪魔や堕天使の存在を脅かすほどの力を持った神器(セイクリッド・ギア)があるの。イッセー、手を上にかざしてちょうだい」

 え?手を上にかざす?なぜ?

 「いいから、早く」

 リアス先輩が急かす。

 「目を閉じて、あなたの中で一番強いと感じる何かを心の中で想像してちょうだい」

 「い、一番強い存在・・・・・・。ド、ドラグ・ソボールの空孫悟かな・・・・・・」

 「では、想像して、その人物が一番強く見える姿を思い浮かべるのよ」

 「・・・・・・」

 俺は心の中で悟がドラゴン波を撃つ姿を思い浮かべた。

 「ゆっくり腕を下げて、その場で立ち上がって」

 腕を下げて立ち上がる。俺はソファーから立ち上がった。

 「そして、その人物の一番強く見える姿を真似るの。強くよ?軽くじゃダメ」

 なんてこった。
 俺の周囲に人がいるのに、この歳になってドラゴン波のポーズをとらないといけないのか!?
 恥ずかしすぎるだろう!

 「ほら、早くなさい」

 リアス先輩に再び急かされる。
 おおおおーい!マジか!マジでやらないといけないのか!クソ!なら見てろ!兵藤一誠、一世一代のドラゴン波だ!

 「ドラゴン波!」

 俺は開いて両手を上下に合わせて前に突き出す格好のまま、声を張り上げる。ドラゴン波のポーズだ。

 「さあ、目を開けて。この魔力の漂う空間でなら、神器(セイクリッド・ギア)もこれで容易に発現するはず」

 先輩の言うとおり、目を開ける。
 カッ!
 俺の左腕が光りだす。
 ・・・・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??
 なにこれ!なにこれ!
 光は次第に形を形成していき、左腕を覆っていく。
 そして、光が止んだ時、俺の左腕には赤い篭手らしきものが装着されていた。
 かなり請った草食がされている。見た感じは立派なコスプレアイテム。
 手の甲の部分には丸い宝石みたいなものがはめ込まれている。宝石と言うより宝玉?

 「な、なんじゃ、こりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 叫ぶ俺。チョービックリしてます。

 「それが神器(セイクリッド・ギア)。あなたのものよ。一度ちゃんとした発現ができれば、後はあなたの遺志でどこにいても発動可能になるわ」

 こ、この赤いこてが神器(セイクリッド・ギア)・・・・・・?
 えぇぇぇぇぇ・・・・・・。

 「あなたはその神器(セイクリッド・ギア)を危険視されて、堕天使―――天野夕麻に殺されたの」

 ・・・・・・夕麻ちゃんも、この神器(セイクリッド・ギア)も本当のこと。
 じゃあ、俺が殺されたことも本当・・・・・・?

 「瀕死の中、あなたは私を呼んだのよ。この紙から私を召喚してね」

 リアス先輩が取り出したのは一枚のチラシ。
 俺はそのチラシがなんとなく記憶にあった。
 『あなたの願い叶えます!』
 そんな謳い文句と奇妙な魔方陣の描かれたチラシだ。
 そういうや、このチラシの魔方陣は床の巨大な魔方陣と同じ模様だ。

 「これ、私たちが配ってるチラシなのよ。魔方陣は、私たち悪魔を召喚するためのもの。最近は魔方陣を書くまでして悪魔を呼び寄せる人はいないから、こうしてチラシとして、悪魔を召喚しそうな人に配っているのよ。お得な簡易版魔方陣。あの日、たまたま私たちが使役している使い間が人間に化けて繁華街でチラシを配っていたの。それをイッセーが手にした。そして、堕天使に攻撃されたイッセーは死ぬ間際に私を呼んだの。私を呼ぶほど願いが強かったんでしょうね。普段なら眷属の朱乃たちが呼ばれているはずなんだけれど」

 あのとき、俺は光のやりに貫かれて・・・・・・強く思った。

 「召喚されたわたしはあなたを見て、すぐに神器(セイクリッド・ギア)所有者で堕天使に害されたのだと察したわ。問題はここから。イッセーは死ぬ寸前だった。堕天使の光の槍に身を貫かれれば、悪魔じゃなくても人間なら即死。イッセーもそんな感じだったの。そこで私はあなたの命を救うことにしたの」

 命を救う?じゃあ、俺は先輩に助けてもらったのか?
 それで生きているのか?

 「悪魔としてね―――。イッセー、あなたは私、リアス・グレモリーの眷属として生まれ変わったわ。私の下僕として」

 バッ!
 その瞬間、俺以外の人間の背中から翼が生える。
 堕天使とやらの黒い翼とは違う、コウモリのような翼だ。
 バッ。
 俺の背中から何かの感触が生まれる。
 背中越しに見れば、俺の背中からも黒い翼が生えていた。
 ・・・・・・マジか。
 俺、悪魔?人間やめちゃったの?

 「改めて紹介するわね。祐斗」

 リアス先輩の言葉を受け、木場が俺に向けてスマイルをする。

 「僕は木場祐斗。兵藤一誠くんと同じで二年生って事はわかっているよね、ゼロくんと同じクラスだよ。えーと、僕も悪魔です。よろしく」

 「・・・・・・一年生。・・・・・・塔城小猫です。よろしくお願いします。・・・・・・悪魔です」

 「紹介は必要ないだろうが一応な。二年、兵藤零、悪魔だ」

 「三年生、姫島朱乃ですわ。いちおう、研究部の部長も兼任しております。今後ともよろしくお願いいたします。これでも悪魔ですわ。うふふ」

 「そして、私が彼らの主であり、悪魔でもあるグレモリー家のリアス・グレモリーよ。家の爵位は公爵。よろしくね、イッセー」

 どうやら、俺はとんでもないことになってしまったようだ。














 Side ゼロ


 「私の元に来ればあなたの生き方も華やかになるかもしれないのよ?」

 軽く頭を抱えるイッセーにリアスは声を掛けた。
 リアスはイッセーに悪魔の詳細、と言っても少しだが話し始める。まあ、これだけ知っていれば何とか(・・・)なる、程度のものだが。
 イッセーは色々文句を垂れているが、話は聞いているようだ。

 「やり方しだいでは、モテモテな人生も送れるかもしれないわよ?」

 こいつ、俺の時も同じ誘いかけたよな・・・・・・?

 「どうやってですか!?」

 イッセー、お前はお前で飢えていたのか?そんな甘い言葉一つで何でそこまで元気になる?
 リアスが更に悪魔について話し始める。純粋な悪魔がたくさん亡くなったから人間を悪魔として引き込もう、という話だ。

 「じゃ、じゃあ!やり方しだいでは俺も爵位を!?」

 「ええ。不可能じゃないわ。もちろん、それ相応の努力と年月が掛かるでしょうけど」

 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」

 イッセーは叫ぶ、目を血走らせて。祐斗だけが口を引きつらせた。

 「マジか!俺が!俺がハーレムを作れる!?エ、エッチなことしてもいいんですよね!?」

 「そうね。あなたの下僕にならいいんじゃないかしら」

 イッセーの背後に落雷を幻視する・・・・・・。他のメンバーにも見えたようだ。

 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!悪魔、最高じゃねぇか!なに、これ!チョーテンション上がってきたよ!今なら秘蔵のエロ本も捨てられ―――」

 そこまで言い、イッセーは顎に手を当てる。

 「いや、エロ本はダメだ。あれはダメだ。俺の宝だ。お袋に見つけられるまではやっていける!それとこれは別だ。うん、別だ!」

 「フフ。おもしろいわ、この子」

 リアスは面白そうに笑っている。相変わらず祐斗は口元を引きつらせたままだ。

 「あらあら。部長が先ほどおっしゃっておられたとおりですわね。『おバカな弟が出来たかも』だなんて」

 うふふ、と朱乃もにこやかに笑う。

 「というわけで、イッセー。わたしの下僕ということでいいわね?大丈夫、実力があるならいずれ頭角を現すわ。そして、爵位ももらえるかもしれない」

 「はい、リアス先輩!」

 「違うわ。私のことは『部長』と呼ぶこと」

 「部長ですか?『お姉様』じゃダメですか?」

 調子のいいこと言いやがって。
 確かこいつ姉がほしいとか言ってたな・・・・・・。意味がわからん。
 リアスは真剣に悩んだ後、首を横に振った。

 「うーん。それも素敵だけれど、私はこの学校を中心に活動しているから、やはり部長のほうがしっくり来るわね。いちおう、オカルト研究部だから。その呼び名でみんなも呼んでくれているしね」

 「わかりました!では、部長!俺に『悪魔』を教えてください!」

 「フフフ、いい返事ね。いい子よ、イッセー。いいわ、私があなたを男にしてあげるわ」

 イッセーのテンションは物凄い勢いで上がっていく。乳龍帝おっぱいドラゴンとして目覚める日が楽しみだな。

 「ハーレム王に俺はなる!」

 悪いがイッセー、それは先に俺がならせてもらう。俺も男だ、数十人は軽いぜ?

 『お前も存外変態だもんな!?ブハハハハハッ』

 うるさいぞストラーダ。こう言うことにお前が口出すんじゃねえ。

 『へいへい』








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