香山リカのココロの万華鏡:調査の「ゴール」が違う /東京
毎日新聞 2012年07月10日 地方版
昨年10月、滋賀県大津市で当時、中学2年の男子生徒が自殺した問題。背景には、深刻ないじめがあったことが明らかになった。
市の教育委員会がこの生徒が自殺した後に全校アンケートを実施したところ、16人が「(死亡した生徒が)自殺のリハーサルをするように強制されたと聞いた」などと回答を寄せていたという。しかし、その後、市教委は加害者とされる生徒への聞き取りなどを経て、「いじめはあったが、それと自殺の因果関係は判断できない」との見解を示した。
これまでも自殺をめぐる問題で、「因果関係は特定できない」というフレーズが使われてきた。「職場でのいやがらせはあったが、それと自殺との因果関係は明らかではない」というように、「長時間の過酷な労働」「上司からのハラスメント」「夫婦間の暴力」そして今回のような「学校でのいじめ」などが、「被害者の自殺との因果関係ははっきりしない」と結論づけられてきたのだ。