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旧校舎のディアボロス
人間、やめました。1
 Side ゼロ


 俺の名前は兵藤(ひょうどう)(ぜろ)、中二病全開な名前の転生者だ。みんなからはゼロって呼ばれてる。読み方は(れい)じゃないよ?
 俺は神だか魔王だかよくわからない(ジジイ)にチート神器(セイクリッド・ギア)をもらい、ハイスクールD×Dの世界に転生した。駒王学園の二年生だ。
 苗字でわかるかもしれないが、俺は主人公であるイッセーこと兵藤一誠(いっせい)の親族、従兄だ。
 物心ついてすぐに両親が死んで弟夫婦に引き取られた、ってところだ。
 それにしても、イッセーは子供のころからスケベ魂があったとは、仲のいい近所のお姉さんの胸に飛び込んでいくさまは・・・・・・いや、ここでは触れないで置こう。たぶん今後も触れない。
 俺は膝の上で丸くなっている黒猫、黒歌(くろか)の背を撫でながらイッセーとテレビを見ている。
 D×Dを知るものならこの黒猫の正体がわかるだろう?小学生のころに傷だらけのところを拾って手当てしたら色々な意味で懐かれた。すでに”ど”で始まって”い”で終わるものとかを奪われている。
 黒歌はほとんどどんな時でも俺に甘えてくる、更に言うならおじさんとイッセーには絶対に触らせてくれない。まあ、なんとなくその気持ちわかるよ。俺は鈍感じゃないんだよ。
 そろそろ原作開始の時なんだよね。というか始まっているはずだ。
 さっき下校している時に黒髪のスレンダーな女がイッセーに告白しているところを見たからな、俺は隠れてだけど。
 それで帰ってきてからイッセーは自慢するはにやけるはで気持ち悪い。



 翌日後、待ち合わせの時間の三時間以上前に家を出ていく我が弟分。昨日から何度も歯を磨いたり、髪形を三十分かけてセットしたり、新しくてデザインのいいパンツを穿いて行ったりと、いくら彼女いない歴=年齢の童貞野郎が初デートとはいえ、これにはさすがに引いた。
 まあ結局悪魔化して帰ってきたんだけどね。












 更に翌日、放課後の旧校舎。
 実は俺は既にリアス・グレモリーの眷属だったりする。そう、あれは一年ほど前のこと・・・・・・ここでこんなことを話しても仕方がないか。ん?俺は結構説明とかが嫌いなんだよ。自分でやってても眠くなる。・・・・・・ゲームの説明書だったら読むが。

 「ねえみんな、実は新しい眷属ができたの」

 「はぁ、やっぱりお前だったか、リアス」

 俺は溜息をついてその言葉に返す。

 「ええ、今回眷属にしたのはゼロの従弟さんよ。兵藤一誠だったわね?」

 「悪い意味で有名だろう?」

 「みんなよく噂してるね」

 「・・・・・・?(モグモグ)」

 「ええ、一度会っていますし、よく耳にしますわね」

 姫島(ひめじま)朱乃(あけの)の淹れた紅茶を飲んで一息つく。塔城(とうじょう)小猫(こねこ)は羊羹を咀嚼しながら首をかしげているが・・・・・・。

 「しかしなんでまたあいつなんだ?見たところ悪魔になったことに気付いていないみたいだったが」

 「実はね。彼、殺されていたのよ」

 「・・・・・・は?」

 普通に考えて驚くくらいの反応をしておかないと変に思われるだろうから聞き返してみる。

 「どうも彼の持っている神器(セイクリッド・ギア)を堕天使が危険視したらしくて抹殺されたみたいなの」

 「そう言えば彼女ができたとか騒いでいたな。もしかして」

 「たぶん神器を所有しているかはっきりしていなかったんでしょうね。それで近付いたんだと思うわ」

 そこでふと気が付いたように木場(きば)祐斗(ゆうと)が手を上げた。

 「部長、彼の駒の役割はなんなんですか?」

 「兵士(ポーン)八個よ」

 部室が微妙な緊張感に支配された。

 ((あんなのが兵士八個?))

 失礼な心の声が聞こえてきた気がするが気にしないで置こう。





















 Side イッセー


 どうも、イッセーこと兵藤一誠です。
 俺は今、危機的状況に立たされている。

 「逃がすと思うか?下級の存在はこれだから困る」

 俺はスーツ姿の謎の紳士に追われている。変質者だ!
 しかもその男は背中に黒い翼を生やしている。生きてるみたいに動いていてファンタジー過ぎる!

 「お前の属している主の名を言え。こんなところでお前たちに邪魔されると迷惑なんでな。こちらとしてもそれなりの・・・・・・。まさか、お前、『はぐれ』か?主なしなら、その困惑しているさまも説明がつく」

 なにやら変質者の男はぶつぶつ言っている。一人でしゃべって一人で納得するな!
 緊張が支配する中、俺はふと夢のことを思い出す。
 あのデートの夢だ。この公園で黒い翼を生やした夕麻ちゃんに殺される。
 んで、目の前には黒い翼を生やしたお兄さんがいます。・・・・・・正夢ですか?性別が逆になってる!

 「ふむ。主の気配も仲間の気配もなし。消える素振りも見せない。魔法陣も展開しない。状況分析からすると、お前は『はぐれ』か。ならば、殺しても問題あるまい」

 物騒なことを口走る男は手をかざしてきた。手を向けている先はどう見ても俺!更に耳鳴りがする。俺はこの現象を知っているぞ。
 その男の手のひらに光らしきものが集まっていく・・・・・・ほら、やっぱり光の槍だよ。

 「させるか!」

 俺は目を瞑った瞬間、聞きなれた声が耳朶を打ち、打撃音が響いた。

 「うちの眷属候補を潰させるわけにはいかないんだよ!」

 「ゼロ(にい)!?」

 目を開けると俺の従弟であり兄貴分の兵藤零が男と対峙していた。男のほうは片腕に手を当てながら呻いている。

 「実力から見て中級堕天使か。悪いことは言わん、去れ」

 「くっ、どうやら貴様のほうが私より実力が上のようだな」

 「賢明な分析だ」

 「貴様と主の名は?」

 「俺の名は兵藤零、主の名はリアス・グレモリーだ」

 「我が名はドーナシーク。ここは素直に退こう。再び(まみ)えないことを願う」

 「それはそちらしだいだ」

 なんだかよくわかんないけど、話がついたようだ。男は黒い翼を羽ばたかせて去っていく。

 「ぜ、ゼロ兄!こ、これはどういうことなんだ!?」

 「ふぅ、イッセー、混乱しているのはわかるが今日はもう遅いしこのことは明日の放課後に話そう、他の関係者も交えてな」

 そう言ってゼロ兄はスタスタと歩き始めた。






















 翌日、放課後。

 「や、どうも」

 俺は半眼で自分を訪ねてきた男子を見ていた。俺の目の前にいるのは駒王学園二大美男の一人、木場祐斗だ。ちなみにもう一人はゼロ兄だ。

 「で、何のご用ですかね」

 「ゼロくんの使いできたんだけど」

 そう言えばこいつとゼロ兄は同じ部活だって聞いたな。もしかして関係者ってこいつ?
 まあその一言で十分だ。

 「OKOK、で、俺はどうしたらいい?」

 「僕についてきてほしい」

 イヤー!
 女子たちから悲鳴が上がる。わけのわからないことや不名誉なことを言われている。うぜぇ。マジでうぜぇ。

 「あー、わかった」

 俺は了解して立ち上がる。最初に言っておく。俺は世の中のイケメンの大半、と言うか兄貴分であるゼロ兄以外は大嫌いだ。
 松田がなんか騒いでいるが気にしない気にしない。










 木場のあとを続きながら向かったのは、校舎の裏手だ。
 木々に囲まれた場所には旧校舎と呼ばれる、現在ほとんど使用されていない建物がある。

 「ここにゼロくんと部長がいるんだよ」

 そう告げる木場。
 部長?誰だそれ。・・・・・・ゼロ兄と木場が所属している部活の部長か?謎が深まるばかりだ。俺はまだ昨日の事件の混乱が抜けきっていないと言うのに。
 二階建て木造校舎を進み、階段を上る。古い建物につき物の、幾重にも張り巡らされた蜘蛛の巣や積もった埃も今のところ目にしていない。掃除はマメに行われていると言うことだ。
 木場の足がとある教室の前で止まる。どうやら目的地に着いたようだ。
 俺は戸にかけられたプレートを見て驚いた。

 『オカルト研究部』

 オカルト研究部!?ゼロ兄と木場はこんなところに所属していたのか!?なんとも首を傾げたくなる。

 「部長、連れてきました」

 引き戸の前から木場が確認すると、「ええ、入ってちょうだい」とどこかで聞いた声が聞こえてきた。
 木場が戸をあけ、後に続いて室内に入ると、俺は戦慄した。
 室内のいたるところに謎の文字が書き込まれている。
 床、壁、天井にいたるまで見たこともない面妖な文字でだ。
 そして更に特徴的なのが中央の円陣。教室の大半を占めている巨大な魔方陣らしきものだ。いろんな意味で不気味すぎる・・・・・・。
 あとは、ソファーとデスクがいくつか存在する。

 「遅かったな、祐斗、イッセー」

 声がしたほうを向くと、ソファーに座った我が兄貴分がいた。すぐ隣りに小柄な女の子が座っている。
 小柄な女の子は確か、一年生の塔城小猫ちゃんだ!
 ロリ顔、小柄な体、一軒では小学生にしか見えない我が高校のマスコット的存在!一部の男子と女子の間で人気が高い。
 彼女は黙々と羊羹と饅頭を食べている。

 「っておい!それ俺の饅頭!」

 どうやら小猫ちゃんが食べている饅頭はゼロ兄のものだったようだ。しかし、ここで驚くべき事態が発生した。小猫ちゃんは残りの饅頭に目配せした後、ゼロ兄に上目遣いを使ったのだ。とても可愛らしく!

 「そんなことしても上げないぞ?(ヒョイ)」

 「あははっ、小猫ちゃん、こちら、兵藤一誠くん」

 ゼロ兄が残りの饅頭を掴んだ後、木場が紹介してくれた。ぺこりと頭を下げてくれる小猫ちゃん。

 「あ、どうも」

 俺も頭を下げた。それを確認すると、また黙々と羊羹を食べ始めた。
 と言うか小猫ちゃん、ゼロ兄にくっつきすぎじゃないか?なんでゼロ兄が少し離れたら擦り寄っていってるんだよ。
 あれか?猫つながりで懐いてるのか?黒歌のこともそうだがゼロ兄には猫が懐きすぎだ。ゼロ兄が公園のベンチで昼寝してたら猫が二、三匹寄ってくるという不可解な現象が発生する。やっぱり猫つながりなのか?
 部屋の置くからシャワーと思わしき水の流れる音が聞こえてきた。
 見れば、室内の置くにはシャワーカーテン。カーテンに陰影が映っている。女性の肢体だ。女の人がシャワーを浴びているみたいだ。
 ・・・・・・って、シャワー!?この部室はシャワー付きなのか!?
 キュッ、と水の止める音。

 「部長、これを」

 ふとまたもや聞き覚えのある声が聞こえた。さっきの声とは別の女の人だ。

 「ありがとう、朱乃」

 カーテンの奥で誰かが着替えている。俺はその陰影を眺める・・・・・・セクシィだな。

 「・・・・・・いやらしい顔」

 ぼそりと呟く声。声のしたほうを向くと小猫ちゃんが黙々と羊羹を食べている。いやらしくてゴメンなさい。
 カーテンが開く。そこには制服を着込んだリアス・グレモリー先輩がいた。どうやら先輩がこの部の部長のようだ、濡れたままの髪がなんとも艶っぽい。

 「ごめんなさい。昨夜少し立て込んでて、シャワーを浴びていなかったから、いま汗を流していたの」

 先輩は俺を見るなり微笑を浮かべる。
 俺としては、部室にシャワーがあることとこの奇怪な文字と魔方陣的なものが気になるんですけど・・・・・・。
 ふと、視線が先輩の後方に移る。
 もう一人の人物も女性なわけだが・・・・・・って、マジか!?
 黒髪のポニーテール!この学園唯一のポニーテール所持者じゃないか!いつも笑顔を絶やさないニコニコフェイス!和風感漂う佇まい!大和撫子を女子高生で体現している我が高校のアイドルの一人、姫島朱乃先輩!
 一緒にいるリアス先輩とあわせて「駒王学園二大お姉様」と称されているお方!

 「あらあら、お久しぶりですわね、一誠くん」

 「お、お久しぶりです」

 そう、俺にとっては「久しぶり」なのだ。と言っても、入学式のときに一回会ったきりなんだけどね。しかもゼロ兄は姫島先輩とは昔に知り合っていた中だったらしく、先輩のほうががもしやと思って話しかけてきたらしい。そのときに俺はゼロ兄に紹介された。
 でもそのとき、この先輩と来たらゼロ兄に遠回しに告白したんですよ!「ずっと、あの日からずっとあなたのことを熱く想って、再会を望んでいましたわ」って言ったんだよ!しかも他にも生徒やら親御さんやらがいる場所で堂々と!

 「これで全員揃ったわね。兵藤一誠くん。いえ、イッセー」

 「は、はい」

 二大お姉様に呼び捨てにされるとなんだか照れるなぁ。

 「私たち、オカルト研究部はあなたを歓迎するわ」

 「え、ああ、はい」

 「悪魔としてね」

 俺はつい思いっきり振り返ってゼロ兄の目を見詰めた。
 ゼロ兄は苦笑していたけど、その目は冗談を聞いている目ではなく、たまに見る本気の目だった。

 どうやら、何か起こりそうです、父さん母さん。




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