こっそり更新。……これを見てる人はまだいるのだろうか。戦々恐々だったり。
リアル多忙で更新の時間が取れませんでした、すいません。咲をたまに更新してたやつが何言ってんだって言われると何も言えなくなりますが……。
小話2はプロットの草案と一緒に吹っ飛んだので、また出来次第挟みます。本当にすいませんでした、大切な事なのd(ry
Life6:友達
部室に戻ってから、先ずは大きく深呼吸をした。心臓は祭でも無いのに太鼓みたく鳴っているし、正直冷や汗がまだ止まらない。四割方は二人のお姉さんのせいだけど。残りは単に、俺の力量不足が招いた結果から来たものだ。それが悔しい。
――全く、洒落にならない展開だった。一介の神父相手にあのザマ。白音ちゃんが居てくれたからいいようなものの、俺一人だったら果たして五体満足で帰って来ることが出来たかどうか分からない。
もしかしたら、多少自衛の力を手に入れたくらいで自惚れてたのかもな。堕天使に殺された時、俺は弱い。そう理解していたはずなのに。突っ走って、足を引っ張って、守られて。
こんなこと、全然望んじゃいないってのにさ。
「……お兄ちゃん、無事でよかったです」
改めて、ぎゅっと抱き着いてくる白音ちゃん。いつもなら温かい気持ちでいっぱいになるけど、今日に限ってはそれだけじゃない。むしろ罪悪感の方が強いくらいだ。
――もっと強くならないといけない。最低でも黒歌さんたちと肩を並べて立ち、大切な家族を守れるくらいは。体も精神も、それに未だ発現できない神器も、全部ひっくるめて。強く、なるんだ。
「……さて、イッセー。聞きたいことがあるのだけれど」
急に現実に戻される。躊躇いがちに、でもしっかりとした目線を向けるリアスさん。その先にはアーシアさんがいる。状況的に同行を認めただけで、シスターの彼女を警戒してるんだろう。
黒歌さんも違和感が無いように、視界の端にアーシアさんが入るよう陣取ってる。……悪魔だから、シスターや神父――使徒を恐れるのは当たり前、だけど。
彼女は他一般の悪魔祓いとは違う。
「ふわ……」
とアーシアさんが可愛らしい欠伸を一つ。思わず苦笑する。大物だな、本当。何の含みも無い素直な行動。それは周りを信じさせるには十分過ぎる。
自分でも気付いてないだろう間に、妙に張り詰めていた空気、重苦しかった雰囲気を霧散させた。
アーシアさんの持つ独特な雰囲気。あれこれ考えるのがバカバカしくなる位に純粋無垢なオーラ。わずかにあった警戒が完全に無くなって、むしろ和やかなムードになった。
ま、深夜って言っても間違いじゃないこの時間だ、欠伸には無理もないんだけどね。白音ちゃんも戦ったから眠そうだったし。
やっぱり俺達眠くない組は、悪魔だからこそ今でも普通に活動できるのであって、人間や普通の妖怪には辛い時間なんだろう。
「……やっぱり明日にしましょうか」
とはリアス部長。やっと自分を見る温かい視線に気付いたのか、アーシアさんは少し恥ずかしそうに俯いていたけどな。何はともあれ、よかったよかった。
……で、このまま解散の流れかと思いきや、一つ問題を忘れていた事が発覚した。
アーシアさんの寝泊まりどうするよ?
その場の雰囲気と状況で連れてきたのはいいけど、どうするのが最善かってのは判断に困る。部室に放置するわけにもいかないし。
祐斗は論外として、他の誰の家に泊まるのがいいかっていう話になったわけだが。
「イッセーの家ね」
「イッセーくんの家ですわね」
「イッセーくんの家かな」
「……家です」
「家かにゃー」
「満場一致!?」
一瞬で決まった。まぁ、連れて来たの俺だし、アーシアさんにとって俺と白音ちゃんの方が、ちょっとだけ他のメンバーよりは共闘(?)した仲だから取っ付きやすいだろうし。それなりに予想はついてたけど。
……一応俺も年頃の男、なんだけどね。黒歌さん達の前例がある分、信頼されてるってことで納得しておこう。人畜無害って判断されたんだ、決して異性として見られてないからだなんて事はない、きっと。うん。俺はそう信じてる。
いや、特に何かするつもりもないけど。魅力ゼロとか言われると流石に凹む。
「イッセーさんのお家ってどんな所なんですか?」
「少しだけ、一般家庭よりは大きいぐらいだと思う」
「そうなんですかっ」
「うん。だからあんまり期待はしないでくれると助かる」
帰り道。右隣りのアーシアさんは少し興奮気味で、テンションは初めてのお泊まりって感じだ。……というか、実際初めてなのかもしれない。
傷を治せる能力とか聖女に崇められてもおかしくない力だし、あんまりこんな経験無かったんだろう。目とかすっごいキラキラしてる。
なんか、どこと無く仔犬っぽい子だと思う。尻尾がもし付いてたら、今ブンブン振ってるんだろうなー、みたいな。
こう、守ってあげたくなるオーラっていうのか、要するに白音ちゃんとは違う妹みたいな感じ。アーシアさんっていうよりはアーシアって言った方がしっくりくるかも。
「……むぅ」
「仲睦まじいにゃー」
白音ちゃんはアーシアとは反対の左側で、がっちり俺の腕をホールド中。ちょっと力が強い。機嫌があまり良くないみたいだ。目を離すと俺が盗られるとでも思ってるのかな? そんな事ないのに。
その点、黒歌さんは、さすがお姉さん。後ろで俺達を微笑ましいものが展開されているかのように見ている。
……いや、それだけじゃないぞ。あれはそれ以上になんかすっごいイイ笑顔だ。何か企んでる感じの。というか後で絶対からかわれるな、これ。
ただ、両手に花なのは事実。状況的に否定できないし、なぜか否定してはいけない気がする。特に白音ちゃんが怒りそうだ。何となく分かる。長年一緒に暮らしてはいるけど、女の子って難しいなー。
明日の訓練もあるし、両親に心配をかけたくもない。帰路を急いだ。
で、家なのだが。
「……また、女の子なの、イッセー?」
「気持ちは分からなくもないが、人様に褒められたことじゃないぞ?」
「疚しい意味なんて欠片もないよ!」
親の心ない反応に大分傷ついた。ってかそんな認識だったのか俺!?
白音ちゃんも黒歌さんも家族だって認識されてるはずなのに……って、ああ、オーフィスか……。確かに最近は毎日家に来るから、連れ込んでると思われても仕方ない、のか?
「……お兄ちゃんは黙ってて」
「この子、ホームステイなの。正式な受け入れは後日に置いといて、取り合えず今夜一晩は泊めてあげたいにゃん」
「そうなの? それなら仕方ないわね」
「イッセー、そういう事は早く言いなさい。勘違いしてしまうだろう?」
「俺か!? 俺が悪いのか!?」
俺の言うことは信用しないくせに、黒歌さんや白音ちゃんの言うことは普通に信じる我が両親。つーか、俺はエロ男みたく見られてるっぽい。理不尽だ。
おかしい、そんな事に割く体力も無ければ、そんな本や行為に興味を持ったことさえないっていうのに。金も相変わらずオーフィスが、時たまにショッピングで黒歌さんや白音ちゃんが使うから万年金欠だし。そういう誤解されそうなことなんて、何にも覚えが――
『こら一誠! いつまで寝てる……の……?』
『ハヤク、シタク、シナサイネ』
『いいい一誠がああああああああああああ! しょしょしょ小学生でえええええええええ! 猫耳姉妹にいいいいいいいいいいい!』
『か、母さん!? どうしたんだ、ちょっと落ち着……母さん!? 母さあああああああああああああああああん!?』
――思い当たりが一個だけあった。当時は保健体育が追いついてなくてよく分からなかったあの事件。
あれかよォォォッ! いやいやでも事情は説明したじゃないか! 何で数年越しにあのネタ引っ張るんだよ! あれか、息子イジめて楽しいか!?
慟哭する俺に、背後から白音ちゃんと黒歌さんが、ポン、と肩を叩く。アーシアさんも怖ず怖ずと、ポン。
「そういう日もあるにゃん」
「原因の一端が言う台詞ですかそれ!?」
ニコニコと、まるでこの状況が楽しくて仕方が無いかのように……いや、楽しくて仕方が無いんだろう、黒歌さんが微笑む。白音ちゃんもクスクス、と笑っている。
そんな姿を見ると、脱力するというか何と言うか。なんか戦い以上にすっげー疲れた……。
「疲れたからもう寝る……お休み……」
言って、この魔の包囲網から脱出。決して逃走したわけじゃない、残存体力を考慮しての戦略的撤退だ! と自分の中で御託を並べながら二階にある自分の部屋へ逃走した。
まぁ、アーシアさんの事は黒歌さん達に任せれば大丈夫だろう。冗談見たいなノリで布団に入ったとはいえ本気で眠いし、ベッドの上へダイブしてさっさと眠ろうとする。と、同時に、ガチャ。アーシアさんが入室してきた。
あれ、部屋は決めたし、ご飯も食べた。まだ俺に用事なんてあるっけ? っと、さすがに寝転がったままってのは行儀が悪いな。ということで起き上がり、改めて彼女に向き合う。
「シスターアーシア、どうして俺の部屋に? 寝室は隣の女子部屋だけど」
「いえ、用というほどの事でも無いんですけど……今までこういう機会が無かったので、少しお話がしたくて」
「なるほど」
図らずも予想が当たったらしい。やっぱり友達と呼べるような仲の人は居なかったんだ。聖女に必要なのは、友愛ではなく博愛。そんな事を言われて困惑しているアーシアさんの顔が簡単に目に浮かぶ。
尤も、それだけってわけじゃなさそうだけど。モジモジとしつつ、どこか暗い影を落とすアーシアさん。その姿がどこと無く昔の黒歌さんを思わせた。状況や程度は違っても、彼女が味わった何かしらの孤独や疎外感、悲しみは本物なんだ。
それは、とても悲しい。想像して同情することぐらいしか出来ない俺だけど。話し相手ぐらいにはなれると思うから。
「じゃあ何からお話する?」
「……ご迷惑じゃありませんか?」
「いや、全然。むしろ俺の方がお話したいくらいだよ。あまり友達が家に泊まることなんて無いしね」
これは嘘でも何でもなく。俺は友達が少ない。っていうのは当たり前の話で、学校ではそりゃお喋りとかもするけど、基本は訓練で放課後遊べないからなぁ。まともな友人なんて祐斗ぐらいか。
松田や元浜なんて家に連れて来た日には、黒歌さんや白音ちゃん、居ればオーフィスについても必ず血の涙を流しながら言及してくるだろうし、翌日には同棲やらハーレムやらなんて脚色を受けて全校に広まってる気がする。姉弟兄妹と暮らすことは同棲とは言わないのに。
あれ、ってことは、だ。今気付いたけど、俺ん家って小学校以来誰も遊びに来た事なんてないんじゃないか? 俺、本当にアーシアさんの事言える立場にいるのか?
……気にしない事にしよう。
「……え? 友達、ですか?」
「そう、友達。あれ、もしかして違った?」
驚愕、といった表情のアーシアさん。なんてこった、この反応から察するに、自分だけそうだと思ってたパターンか。何か偉そうなこと考えといてこれとか。うわっ、恥ずかしっ!
「ごめん、今のは聞かなかったことに」
「い、いえっ! 私なんかでよろしければお友達にしてください!」
「……あ、ああ。分かった」
やりました! と小さくガッツポーズのアーシアさんにちょっと癒されるけど、急に大声出すからびっくりした……。ま、まぁ、俺の考えが間違っては無かったみたいだからいいや。
というか、いきなり大声って。アーシアさん、見た感じでは優しくおしとやかってイメージが強かったんだけど。実は意外と押しが強いのかもしれない。
「……あ、あぅう……」
前言を早速撤回しよう。今やったばかりの自分の行動で恥ずかしがるし。何て言うか、やっぱり一人の女の子なんだな。思わず苦笑いが出てしまう。それを見て、うー、と涙目で……これは睨んでるのか?
「そんな恥ずかしがらなくても大丈夫だって。俺は何にも見てないからさ、シスターアーシア」
「……はい」
「はは。……っと、夜も遅いし、今日はお開きにしようか」
思いの外楽しくて、結構遅い時間になってしまった。マズイね、これは。元々リアスさんがさっき俺達を解散させた理由は、アーシアさんが眠たそうだったからだっていうのに、俺が睡眠を妨害したら本末転倒になる。というか多分俺がお姉様方に怒られる。それは怖い。
「はい、今日は楽しかったです……ですから、その……あ、あの! 私のことは呼び捨てて呼んでください!」
「え?」
「お友達とはそういうものだと教わりました。だ、ダメでしょうか?」
不安そうな顔を浮かべるアーシアさん。そういうのを伺うのはちょっと違う気がするんだけど、一概に間違いとは言えない、のかな? ま、どっちにしろ、チラチラ上目遣いでこちらを見られると断れないし、断る気も元々無い。
「ははははは! ダメなわけないって。……お休み、アーシア」
「! ――はいっ! お休みなさい、イッセーさん!」
にこり、と出来る限りの温かな笑顔を向けると、にっこりと嬉しそうに返してくれた。奇妙な縁から始まった関係だけども、こういうのもアリかなと思う。
夜はこれで終わりですけど、朝ごはんとかも楽しみです、なんて言いながら。バタン、と隣の部屋へ行ったアーシアを見送り、ようやく俺も横になる。少しだけ考えるのは彼女、アーシアのこと。
ここから恋愛に発展して、仲を引き裂く敵とかが現れたりしたら、マンガみたいだなーとか。くだらないことを少々ね。ま、そんなこと現実で起こるとは考えられない。らしくないな、大分疲れてるのかもしれない。
バタン、と今度は黒歌さん達が入室。そのまま俺を挟むようにしてベッドに入る。すぐさま消灯。正直、もう限界で何かを考えるのも億劫だから目をつむる。
「イッセー、そろそろ寝ないと明日に差し支えるにゃん」
「そうですね……お休みなさい、黒歌さん、白音ちゃん」
「お休み」
「……お休みなさい、です」
挨拶だけしてふと思ったのは、アーシアだけ一人部屋か、ということ。いつもの習慣で二人とは一緒に寝るし、一階の両親は論外。
さすがに会って初日で同性の黒歌さん達はいいとして、異性の俺と一緒に寝るのは向こうも抵抗あるだろうから仕方が無いんだけどね。少し寂しい想いをさせてるかもしれない。
あ、寂しいといえば、オーフィスはどこに行ったんだろう。用事だって言ってたのは聞いた、でもどんな内容なのかは聞いていない。すぐ帰ってくると思ったんだけど。今日は帰って来なかった。
ここ数ヶ月は毎日一緒に過ごしてたのに、珍しいこともあるな……。何にせよ、早く帰ってきて欲しいと思う。
……そうこう考えてる間に、もう本当に限界だ。明日も早い、寝よう。
そして迎えた翌日の朝、彼女に宛がった部屋には荷物が残ったまま、しかしながら兵藤家のどこにもアーシアの姿は無かった。
これぞ本当のアーシア回(?)。展開的にデート出来なかったのが悔やまれるけど、初デートはメインの三人の誰か、もしくは全員を想定してます。
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