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前回の自分を殴りたい。何がアーシア回だ! アーシア全然出てないじゃん!

後書きについてご意見よろしくです。
Life5:神父
 翌日だ。結局俺の悪魔研修は、昨日の一時間ちょっとで終わったらしい。当日限りの特別なヘルプみたいなものかと思っていたが、今日も晴れて一人前の悪魔として働く事になった。

 あんだけほんのちょっとで終わってしまうと何の下積みだったんだと問い詰めたくはなったが、まぁ悪いことじゃないからいいか、と割り切った。

 だから今日も西に東に奔走中。出世するには、こういう地道な作業も必要だと思うんだ。

 で、今日も黒歌さん達に組み手で虐められたあとで、元気を無くしながらも色んな人と契約を結んでいたわけだが、気がつくともう夜になっていた。

 昨日ほどじゃないが、やっぱりそれなりの人達からお声がかかってしまったようで、今日もみんな忙しく方々を駆けずり回っている。

 斯く言う俺も、既に七件目。そろそろ疲れてきた。

「……大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ。心配してくれてありがとね、白音ちゃん」

 今日は白音ちゃんが一緒だ。昨日寝てしまったコンビがついて来るのかと思ったけど、オーフィスは「我、用事がある」と残念そうにどこかに行ったため、二人で行動している。

 魔方陣は本来悪魔しか使えないんだけど、リアス部長はまだ白音ちゃんが欲しいようで。

 今日部室に行くと、妖怪や人間なら使える魔方陣をわざわざ作っていた。点数稼ぎ感が半端じゃない。

 ま、そのおかげで疲れた時には仙術で癒してくれる白音ちゃんが、護衛の意味も兼ねてついて来てくれるんだからいいけどね。

 さすがに呼び出し主からいきなり攻撃されることはないと思うけど、念のためだそうだ。

 ここまで妹分に心配されると、嬉しいやら情けないやらの気持ちでいっぱいになる。

 修業頑張って、将来は逆に守れるようになるから、と心の中で密かに誓いつつ、魔方陣でジャンプした。



 最初に感じたのは違和感だった。

 今まで、と言っても昨日と今日だけの経験だが、魔方陣でジャンプすると、必ず家の中に転移していたのに、今回は外に到着したこと。

 そして、家の中から妙に重苦しい、本能的に入室を躊躇わせるような雰囲気があったこと。

 明かりはついているのに、物音一つしないこと。これは明らかに、異常だろう。

 何があったのかは分からないが、何かイレギュラーが起こった事だけは確信した。

 何と言うか、凄く嫌な予感がする。白音ちゃんも同様みたいで、体を少し強張らせていた。

 白音ちゃんの考えは過保護だと思ってたけど、そうも言ってられないらしい。

「……お兄ちゃんは私の傍を離れないでください」

「あ、ああ」

 家に突入する。



「な……」

 リビング。家族が普段集まって過ごす、家の中心とも言っていい、温かい場所。

 そんな場所が、血濡れになっていた。むせ返るような臭い。吐きそうになるが、白音ちゃんが支えてくれて、堪える。

 何だよ、これ……。

 床に倒れ伏してぴくりとも動かない人、手には見覚えのあるビラ。恐らく呼び出し主だろう。遠目でも分かる出血量。腹を一突きにされて、事切れていた。

 そして――その傍に立っている白髪の男。神父らしい恰好をしている。手に持っているのは、剣。それをもう一度振り上げる神父。

「やめろ!」

「……あー?」

 無意識の内に、神父を制止していた。途端、ぞわっと全身に身の毛がよだつほどの寒気が襲い掛かってくる。

 この感じは、覚えがあるぞ。そう、いつかの黒歌さんと同じ――殺気だ。

 神父は邪魔されたのが腹に据えかねたのか、凄い形相でこちらを睨む。が、俺を見た瞬間それは獰猛な笑みに変わった。

「これはこれは! 悪魔くんではありませんか!」

 凄く嬉しそうに、面白くて仕方がないとばかりに話す神父。何だ、こいつ。気持ち悪くて仕方がない。本当に神父か?

 ……いや、どう見ても見た目だけだ。こいつに信仰心なんてかけらも見当たらない。あるのはただ、純然たる殺意のみ。

 ――狂ってやがる。

 俺の心情でも悟ったか、神父はまた笑った。それはそれは、嬉しそうに。

「やや、冷ややかな視線どうもどうも。俺の名前はフリード=セルゼン。とある組織の末端ざんすよ。あ! 俺が名乗ったからってお前は名乗らなくていいからね、これから死ぬやつの名前なんか覚えるだけ脳容量の無駄だから。でもでも、懺悔や命乞いなら聴いてあげちゃう! 聞かないけどね!」

 言いながら、懐から拳銃を取り出す神父もどき。

「……させません!」

 さっと白音ちゃんが俺ごと回避すると、次の瞬間には元いた場所に発砲してやがった。

「聴く気も無いじゃんかよッ!」

「当たり前じゃん、何言ってんだバーカ」

 言って、足元の死体を切り刻む。……こいつは!

「何してんだお前!」

「ほらほらあれですよ、馬子にも衣装ってやつでごぜぇますよ。悪魔喚んじゃうクソには肥溜めと血だまりがお似合いってね!」

「お前……ッ!」

「……落ち着いて下さい」

 白音ちゃんに後ろから抱きしめられる。それでようやく落ち着いた。……話しが通じるなんて思った俺がバカだったよ。

 ニヤニヤ笑っている神父もどきに言う。

「悪魔でもこんな事はしない……人を躊躇いもなく殺すお前の方がクズだよ!」

「は? これもしかしてもしかしちゃったりすると、俺ってクソ悪魔に説教なんてされちゃってるわけ? ねぇクソ悪魔君、釈迦に説法って知ってる? あ、そういや俺ってばクリスチャンだったっけ。宗教間違っちまったよてへっ」

「黙ってろクズ」

「……おーけーおーけーぶち殺す。今からこのカッチョイイ聖なる剣でお前の頭ん中くり抜いちゃいます!」

 駆け出す神父。こっちも気を纏い、相対する。おもいっきりぶん殴ってやらないと気が済まない。ドでかいのお見舞いしてやる!

 走りながら剣を薙いでくるのを体を捻って躱し、振り抜ききった無防備な腹を殴る。

「ぐあっ!」

 が、うめき声をあげたのは俺の方だった。……痛い。殴った部分が、焼けるように。なんでだよ。

 よくよく見ると、全身に十字架のアクセサリーをつけていたらしい。神の加護があるものを全身に身につける、か。なるほど悪魔には効果的な対策だよ畜生。

「痛いじゃねぇかよッ!」

 反撃とばかりに拳銃を向ける神父。慌てて体をずらすが、避けきれず、左腕に掠る。と、激痛が走った。

 掠るだけでこの威力……!? 悪魔祓い、エクソシストってのはこんなに戦いにくい相手なのか?

「さっさと死ねよ! 塵になって消え失せろ!」

「……下がってください」

 腕を押さえてうずくまる俺の前に白音ちゃんが立つ。構わず攻撃しようとする神父。

「もうやめてください!」

 そして、第三者の、女性の声がした。この部屋にいる全員が一様に動作を止め、その声の主に視線を向ける。

 金髪のシスターさんだった。

「おんやぁ? アーシアちゃんじゃないの。結界はどったの?」

「……やめましょう、フリード神父。こんな、こんなこと……主がお許しになるわけがありません! これ以上罪なき人の命を奪うなんて!」

「はぁぁぁぁぁあああああ!? くたばってるクズは悪魔喚んじゃうようなクズで、そいつらに至っては悪魔とそれに加担するクソなのよ? クズとクソは滅せよって教会で習っただろうが!」

「その人達は、命を奪った神父に激昂しました……悪魔でも、その人達の方がいい人です!」

 言って、大丈夫ですか? とこちらに駆け寄った少女が、俺の拳と腕に手をかざす。途端、緑色の温かい光が怪我を包み込み、患部が瞬く間に完治した。

「す、凄い……」

 手を開いたり閉じたりしても、痛くも痒くもない。治ってるよ、これ。痛みも完全に消えてなくなってる。これって……。

「……医療系の神器」

 白音ちゃんが目を丸くして言う。これ、どう見ても珍しい神器だよな……。凄いなこの子。

「ありがとう、シスター……」

「アーシア=アルジェントといいます。アーシアと呼んでください」

「じゃあ、シスターアーシア、ありがとう。俺は兵藤一誠。イッセーでいいよ」

 微笑むアーシアさんを、一瞬聖母と見間違う。それほど彼女の慈悲は深かった。……あんなクソ神父もいる中で、こんな子もいるんだな。

 そんな様子をクソ神父がただ見ているわけもなく。拳銃をこっちに向けてきた。

「何その雰囲気。まるで俺が悪者みたいな感じじゃん。悪魔が正義の味方だぁ? ふっざけんなよッ! 揃いも揃ってクソどもがぁぁぁぁあああ!」

 乱射。狙いもクソもあったもんじゃないが、取り合えずアーシアさんを俺の後ろに回す。

「……後ろに」

 そして俺は言われる通りに白音ちゃんの後ろへ。直ぐさま、白音ちゃんが結界を張る。

 銃弾が勢いよく結界にぶつかる。が、びくともしない。凄い強度だ、あの神父の攻撃が全く届いてない。

 訓練では殴られてばっかりだから知らなかったけど、白音ちゃんはこんなことも出来たのか!

「ウザったいなー、ウゼェよお前ら全員。あの姐さんからはクソシスターは殺すなって言われてっけどさぁ、我慢には限界があるっつーのッ! さっさと死ねや!」

 攻撃が全く通用しないことに苛立ったらしい神父が光の剣をブンブン回しはじめた。

 ――その時。

 床から魔方陣が浮かび上がる。……あの家紋には見覚えがある。というか、俺達グレモリー眷属を示すものだろこれ。って事は……。

「イッセーくん、大丈夫かい?」

「あらあら、大変みたいですわね」

「白音、イッセー、無事かしらん?」

 もう八時はとっくに過ぎたけど、全員集合ってね。みんなが助けに来てくれた。

 良かった、俺やアーシアさんみたいな足手まといがいると、いくら白音ちゃんでも厳しいと思ってたんだ。

「……助かります」

 白音ちゃんも、結界を維持したままぺこり、と頭を下げる。

「団体さんいらっしゃ……いッ!」

 増援にいきなり剣を振るう神父だが、祐斗が悠々とその一撃を止める。やっぱり強いんだな、あいつ。

「悪いけど、君なんかに僕の仲間を殺させたりはしないよ!」

「にゃん♪」

 と、鍔ぜり合いをしている横から、黒歌さんが物凄い速さで魔力を打ち出……したのか? 俺にも軌跡しか見えなかったけど。

「ガッ……!」

 そんなのを当然一介の神父が避けられるはずもなく、吹っ飛んで壁にぶつかる。

 い、一撃……俺が苦戦した相手を一瞬で倒したんですか……?

 ……強っ。黒歌さん、現時点ではこのメンバーの中で最強なんじゃないか? 凄い、確かに修業中手加減されてたんだな、俺。

 この一撃でのびたかと思ったら、神父は直ぐさま起き上がって、

「ぺっぺっぺ、これが噂に聞く塵も積もればってやつですかい。いやー、しっかしこりゃ分が悪い。俺ちゃんも死にたくないし、ちょっとここはトンズラさせてもらいやすわ! 次会ったらお前ら全員殺すから、んじゃね!」

 次の瞬間には窓から外へ逃亡していた。逃げ足の速いやつで、すぐに姿が見えなくなった。

 心情じゃ追い掛けて倒しておきたかったけど、こっちも体力は本調子じゃない。下手に追い掛けるのは危険だ。くそっ……。

「私の可愛い下僕を襲っておいて……」

「次はないにゃん」

 後ろから、憤ってる俺よりもさらに低い恐ろしい声が聞こえた。というかオーラが視認出来るぐらいに立ち上ってるんですけど! 怖いですよお二方!

「ま、まぁ、結果としてこうして無事に済みましたから。ありがとうございました」

 だからオーラを鎮めてくださいお願いします。

「うん、イッセーくん達が無事で良かったよ……ところで、そのシスターさん、誰だい?」

 爽やかに頷いたあとで、祐斗がアーシアを指す。あのクソ神父、アーシアさんと仲間みたいな感じだったのに、平然と逃げやがったんだよな。

 この子は何か、と言われてもすぐには言葉が出て来ない。どうしよう。

「えっと、この子は……」

「いえ、祐斗、イッセー。全部まとめて部室で話を聞きましょう。……まさか小猫のために作った魔方陣がこんな所で役に立つなんてね」

 あ、そういえば白音ちゃんのために作った魔方陣って、人や妖怪なら使えるものなんだっけ。

 アーシアさんをここに置いて行くわけにもいかないし、それ以上に怪我を治してもらったお礼をしたい。

「そうですね。……シスターアーシア、一緒に来てくれるかな?」

「はい、イッセーさん!」

 純真な笑顔で答えられて、少し微笑ましく思う。……さて、これをどうやって説明しようかな、と悩みながら部室へジャンプした。
面白味のない戦闘ばっかり……ギャグとか日常書きたい。

しかしアーシアとのデートは展開上難しいので、短編に回ります。つまり次回も戦闘パート……

なんて、それじゃあ面白くないよね! ってことでPV10万記念して小話の続きかヒロインズとのイチャラブの話でも書こうかと思います。

どっちがいいですかね?


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