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更新。

実は受験生なXEI。もうすぐこんな頻度で更新することは出来なくなるので、行けるところまでこの休み中に書きたいです。

最低でも一巻は終わらせたい。頑張ろう。
Life4:仕事
 どこの世界にも下積みの期間ってのはあるらしい。いや、研修って言った方が聞こえがいいか。

 リアス部長に申し付けられた悪魔としての最初の仕事は、天使や堕天使との戦闘とか、人から魂をとってこいとか。

 なんか漠然と悪魔っぽい事を連想した俺からすれば、拍子抜けするほど簡単なものだった。

「よろしくお願いしまーす」

 道行くお姉さんやお兄さんに、願い事叶えます、などと凄く胡散臭いことが書かれたチラシを渡すだけの作業。

 早い話がビラ配り。あれだ、ティッシュとか配ってる女の人っているじゃん、まさにあんな感じ。

 本当は特定の、悪魔を信じてくれそうな人の家に配る物らしいんだけど、別に個人宛ての物じゃないし、この方が手っ取り早いからこうしている。渡る人も多くなるしな。

 聞けば何でも、昔みたいに魔方陣わざわざ書いてまで悪魔を召喚する人が、昨今殆どいなくなってしまったらしい。悪魔からしてみれば、言わば不況だ。

 もちろん合理的な悪魔が、ただ時間が解決するのを待つわけもなく。簡易な魔方陣を書いたビラを至る所で配っているらしい。これで召喚の確率をあげる、と。涙ぐましい努力だよな。

 リアス部長いわく、こんな事は普段は使い魔などにやらせているが、新人は経験を詰む意味でやらされる、とのこと。

 簡単に言えば、雑用だ。悪魔業界の知られざる苦労を身に染みて感じることとなったわけだ。

 で、早速ビラ抱えて夜の街に向かった俺だったが。

「……よろしくお願いします」

「よろしくね♪」

「よろしく」

 使い魔が一緒とはいえ、やはり俺が一人でいることを良しとしなかった三人も手伝ってくれている。

 これが凄い。

 一人は見た感じ中学生ぐらいにしか見えない、白髪の美少女。一人は身長から体の凹凸まで大人な、着物姿の美女。一人はゴスロリで純粋かつド天然な美小女。

 これだけ綺麗どころが集まると、予想はしてたが、男が群がる群がる。

 誘蛾灯……は表現が悪いかもしれないが、ピッタリな表現だと思う。この道を歩いている人の七割弱(全部男)は彼女たちからチラシを受け取って去って行くぐらいだ。

 残りの三割は彼女持ちな人、元々受け取らない人、なぜか俺からチラシを受け取って行くという珍しい人で構成されている。

 そういや女性はやけにこっちに集中してたな。向こうが男ばっかりだからだろうけど。

 で、三人が持つチラシが凄い勢いで捌かれていく。というか四半刻もしない内に無くなった……満足げにこっちに来る三人を見て、思う。

 俺必要なくね?



「一週間分は、渡したと思ったのだけど……」

「凄いですわね……」

 部室に戻ると、朱乃さんは目を見開き、リアス部長も絶句した。行き帰り含めて一時間強しかかからなかったし仕方ないか。

 こんな例は今まで無かったらしい。凄いよな、美少女効果。俺が言うのもなんだが、男って単純だよ本当。

「じゃ、じゃあ一足早いけど、依頼にも取り組んでもらいましょうか。今日は数が多くててんてこ舞いなの」

「……多いんですか?」

「恐らく、あなたたちが予想以上に働いてくれたおかげで、ね。嬉しい悲鳴ではあるのだけれど」

 ちょっと、いえ多分に人手が足らないの、とリアス部長。

 確かにあの数を一気に使われると、物凄い大変な事になりそうだ。そりゃ、悪いことではないんだろうけど、少し張り切りすぎた感は否めない。

 現に祐斗はこの場に居ないし、朱乃さんも一息ついたらまた出るそうだ。別段悪いことではないんだけどな……。何だか複雑な気分だ。

「分かりました。で、俺はどうすれば?」

「魔方陣の上に乗ってちょうだい。あとは朱乃が勝手にやってくれるわ」

 案外適当なんですね、リアス部長。

「もう、リアスったら……イッセーくん、今から説明しますわ。ちゃんと聞いてくださいね?」

 と、お疲れ気味のリアス部長に苦笑しながら、朱乃さんは丁寧に魔方陣の使い方をレクチャーしてくれた。忙しい中でありがとうございます、本当に。

 しっかし、テンション上がるな。行きもワープ、帰りもワープ。凄い。俺の常識からすれば、オーバーテクノロジーもいい所だ。ちょっと感動する。

「登録、終わりましたわ、イッセーくん。いつでも行けます」

 悪用防止のためか、魔方陣を使うには登録が必要だったらしいが、全部朱乃さんがやってくれた。いいなぁ、優しいお姉さん。

 よし! と気合いを入れて、仕事に向かおうと立ち上がると、黒歌さんがぴとっとくっついてくる。

「私も行くにゃん。悪魔だから問題もないでしょう?」

 何と、俺の初仕事を見届けたいらしい。今回は白音ちゃんやオーフィスは待機組。というより、彼女らは悪魔じゃないから、本来夜型じゃない。今は仲良くソファで眠っている。

 さらについて来て手伝ってくれる気だったらしいけど、眠いのを我慢してビラ配りを手伝ってくれたんだ、それだけで十分過ぎるほど嬉しい。

 で、その彼女達の代わりに自分が、と。そこまで言われたら何も言えないのか、リアス部長も頷く。

「黒歌、イッセーをお願いね」

「もちろんにゃん♪」

 魔方陣が起動する。さて、初めての依頼だ。成功させよう。





「ミルたんを魔法少女にしてほしいにょ」

 何かフリフリの、確かに魔法少女とかが存在するなら身を包んでいそうな服を着た、俺よりもデカイムキムキのオッサンが言った。

 自分でも何を言ってるのか分からない。理解したくない。つーか逃げ帰りたい。

 さっきの決意が不可能だった事を即座に悟る。これは無理だ。もうイロイロと俺の手に負える代物じゃない。白音ちゃん連れて来なくて良かった……。

「……な、なんでゴーレムがこんな所に……?」

 普段冷静な黒歌さんでさえ、この有様だ。オーフィスなら無言で吹き飛ばしてたかもしれない。黒歌さん、それゴーレム違います。ただの化け物です。

 あ、間違えた。確かに普通の人間とは思えない思考回路と迫力の持ち主だけど、多分人間です。

「考えられる修業はしつくしたにょ。もう宿敵の悪魔さんに頼るしかないにょ」

 にょ、じゃねえよッ! 話続けるなよ明らかにそんな雰囲気じゃないじゃん! 何この人、ツッコミ所しか無い! でも怖くてツッコめない!

「俺達を頼らず、異世界の扉でも開いて頑張ってください、あなたなら空孫悟にも勝てますよきっと。じゃ!」

 もう着いて行けない。と、魔方陣を起動しようとすると、後ろから襟首を掴まれた。捲したてて帰ろう作戦失敗。泣きそうだ。

「ミルたんを魔法少女にしてほしいにょ」

 だから、どないせぇっちゅうねん!

「聞いてたよ! 何で二回言うんだ! 無理だから諦めてくれって!」

「でも、もう悪魔さんが言うように、異世界には行ってきたにょ」

「行ったのかよ! 行けたのかよ! というか次元の壁越える前に根本的な性別の壁に気付いてくれよッ!」

 これまでの人生の中で、一番ツッコミを入れた気がする。凄く濃い時間を過ごしたよ本当。

 何というか、初の呼び出し主はカオスだった。

 結局俺では力不足な事を懇切丁寧に説明し、契約は破談となる。落ち着いてみれば、見た目と言動はともかく考え方は多少常識的だったから助かった。

 なお、ほぼ無言だった黒歌さんはというと、あまりの出来事に終始言葉を失っていたようで。部室に戻ってからも喋るまでに数分を要した。

 無理もない。悪魔を召喚する人の中でも、特別意味が分からない人だった。

「契約で呼ばれるのは、その人と相性がいい、一番適任な悪魔なんだけど……」

「あんなのに適任がいるわけないだろ……」

 謎の巨漢(魔法少女志望)、ミルたんについて話すと、全員が苦笑いをした。





 さて、最初はどうあれ他はなんとか仕事を熟した俺達だったのだが。なんとか契約を一通り捌ききり、今は一服中。

「久しぶりに盛況な日だったわ」

 普段は眷属に任せているというだけあって、今日みたいに自分もシフトに組み込まれる経験があまり無いのか、お疲れ気味のリアス部長。

「そうですわね。私たちですら疲れましたもの」

「これでイッセーくんがいなかったらと思うと、ぞっとするよ」

「私もここまで働いたのは初めてにゃん」

 立ち振る舞いがしっかりしている朱乃さんと祐斗でさえも、ソファに少しだらし無く体を預けている。

 黒歌さんは言う割に大丈夫そうだけど、俺だって疲れた。というかこんなのが日常茶飯事だったら堪えられない。

「イッセーは……初仕事こそダメだったけれど、他はきちんと熟しているわね。偉いわ」

「この分なら、早い内から昇格も見えてくるかもしれないね」

 と、笑いながら言う二人。

 昇格、か。なんか中級や上級になれるとして、だから何? って感じなんだけど。

 特に地位がないと叶わない願望とかないし。まぁ、出来たらした方がいいのかな?

「不自由は、しなくなるんですかね?」

 ぶっちゃけると、それだけが心配。特に食費。オーフィスにばっかり目が行きがちだけど、実は白音ちゃんもよく食べる。

 オーフィスがどうするかは分からないけど、もし一緒に暮らすなら、彼女達全員賄えるぐらいの給金はないとダメなんだよね。

 しかもご飯が食べられるだけじゃダメだし、遊んだり服買ったり家具揃えたり、と考えると、結構金が必要な気がする。

「そうね。上級悪魔ぐらいになってくれれば嬉しいにゃん」

 黒歌さんいわく、養うには十分で、領土もそれなりにもらえる目安は上級、と。今はただの下級なのに、中々難しいことを……。

「ま、頑張るよ、みんなのために」

「あらあら。イッセーくんは家族思いですわね」

「ええ。これ以上に大切なものはありませんから」

 ニコニコ笑う朱乃さんに、ちょっと気恥ずかしくなりながらも言う。

 悪魔の寿命って長いらしいんだけど、それを大切な家族と幸せに過ごせたらいいと思うんだ。

 というよりは、これぐらいしかやる事や欲がないんだけどな。

「ふふ。じゃあ、レーティングゲームで活躍するのが一番ね」

「ですわね」

「? レーティングゲーム、ですか?」

「ええ、そうよ」

 みんなが言うことによると。レーティングゲームとは、チェスを模したゲームで、兵士、僧侶、騎士、戦車、女王、王に該当する下僕と主同士が、仮想空間上でその時その時のお題に従って競うもの。らしい。

 しかも試合内容は録画され、全土に放送されるとか。要は冥界の野球やサッカーみたいなものなんだろう。

「強い下僕はそのまま主の価値に繋がるし、その下僕も出世が見えるようなシステムなの」

 特異な点としては、活躍すれば階級を上げる事も可能なシステムがあることが挙げられるな。

 ただ、これは悪魔が時代に乗った、なんてわけではなく。少し昔の天使、堕天使との大戦で、純血の悪魔がかなり断絶したことによる措置だという。

「今ではレーティングゲームの戦績の善し悪しで階級が左右されるほどに大流行したわ」

 古き血が消えつつある今、力あるものには相応の地位を、というのが今の魔王様達の意見らしい。なるほど、悪魔らしい合理的な考え方だ。

「だから強くなりなさい、イッセー。あなたの夢を叶えるために」

 つまり、一番理想に手っ取り早く近づくためには、強くなれと。競争心を煽り、悪魔側の戦力を上げることも出来るし、経済的利益も考えているのかな?

 ま、それぞれに思惑はあるんだろうが、そんな事は関係ない。重要なのは、強くなれば、俺の夢が叶うってことだ。

「分かりました、いつになるかは分かりませんけど、その時のために強くなります」

 元々修業はしている。今までは自衛の手段でしかなかったけど、これからは未来を形作るための重要な位置を占めることになるのか。

 いいね、その方が頑張りがいがある。よし、やりますか!

「じゃ、イッセー。今日も帰ったら修業するわよ。昨日まで以上にビシバシ行くから、覚悟するにゃん♪」

 と、凄く上機嫌な黒歌さん。決意を固めた上から、冷や水をぶっかけられたようにテンションが下がる。

 え、ビシバシ行くんですか? ちょっとそれは遠慮したいというか……あ、ダメですか分かりました……。

 見る者すべてを虜にしそうな笑みを浮かべているが、俺には死に神の死刑宣告にしか思えなかった。

 取り合えず、今日を生き抜くことから頑張ろう。アハハハハ、ハハ……。

 あ、一つ気になることがあるのを忘れてた。

「リアス部長。そう言えば、さっきの駒の話なんですけど……俺ってもしかして」

 リアス部長が王で、朱乃さんが女王、祐斗が騎士なのは想像つくし。確か白音ちゃんは戦車の勧誘を受けてたはず。僧侶は魔力適正も分からない人間に使うものじゃない。

 って事は、必然的に……。

「イッセー、あなたは兵士よ」

 ですよね。まぁ、期待はしてなかったけど。やっぱりか。

 人生甘くないな、と思った。
はぐれ悪魔バイザー? あぁ、そんなんいましたね(笑)な回でした。

そういえば、少しアニメ見てみたけど、凄いですね。ワカメちゃんのパンチラが規制されそうな中で、あれは大丈夫なのかよ、と思いました。小猫ちゃん可愛い。

さて、次回はもちろんアーシア回。アーシアはいい子だけど、人気はどれくらいあるんだろう……疑問。


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