更新。追記の可能性がありますが。
あと、殺されるシーンが物凄くご都合だったので、差し替えました。変な所はない……はずです。
Life3:部活
朝起きてみると、既に布団の中に黒歌さんの姿はなかった。オーフィスと白音ちゃんはまだお休み中なのに。早いな。……あ、そういや朝飯当番の日だっけ、とぼんやり思考。
あの人の料理はぶっちゃけるとお袋よりも普通に美味いので、たまに朝飯か夕飯かを分担して作っているのだ。
家庭的なお姉さんタイプには全く見えないが、人は見かけによらないって事で納得しておこう。
美人ではあるけど、どうもだらし無いタイプに見えてしまうんだよね。これ、本人には口が裂けても言えない本音。
さて、折角美味い朝飯にありつけそうだし、軽い運動でもして腹を空かせてこようか。昨日結局修業出来なかったし、それくらいしても罰は当たらないと思う。
隣ですやすや眠っている白音ちゃんやオーフィスを起こさないように、そっと体を起こす。
過度な運動は良くない。ランニングでもしようか。
「ふっ……ふっ……」
たまに来るランニングコース。春先でポカポカしているからか、気持ちがいい。それに、何となくいつもより体が軽い気がする。もうちょっと走るか。
「うぃーっす」
「ども」
対面から来るおじさんと挨拶。頻度はあまり多くないけど、ずっと同じコースを走っているからか、それなりに顔見知りも出来た。
それこそ俺ぐらいのやつから年配の方まで色々と。さっきみたく、会えば挨拶はする程度の知り合いである。
その人達とも会話はするものの、中でも、ランニング仲間になる以前からの知り合いとは、ちょっと話が弾んだりする事もある。
「や、イッセーくん」
「よ、精が出るな」
木場祐斗。駒王学園の同級生で、松田や元浜いわく、全男子生徒の敵らしい。確かにさわやかなタイプで非の打ち所はないため、女子人気は高そうなやつだ。
でもそれを鼻にかけたりはしないし、誠実。松田や元浜とは違った意味で、いい友人である。
「最近来てなかったけど、何かあったのかい?」
「いや、別に。何も無いぞ? 単に家の方が忙しくてな」
走りながら会話。
最近また容赦のない攻撃を繰り出してくるようになった猫姉妹のせいで、ランニングに回す体力も時間も無くなってしまっている。
最初こそ体力作りでやらされていたが、今では半ば趣味になっている。だというのに、これは由々しき事態だ。帰ったら抗議しよう。
「ああ、例の家族さんか。君の家は賑やかで楽しそうだね」
「朝と夜は楽しすぎて涙が出そうになるのが難点だけどな!」
あの訓練という名のイジメ。あれさえ無ければ理想の家族だと言っていい。みんな優しいし、一緒にいて安心するし。でも、訓練時だけはダメだ。みんながドSに変貌する。
がくがく震える俺に、祐斗は首を傾げるのだった。お前一回家に来い。やってみれば分かる。
「……はっ」
「……ふっ」
ペースが少し上がり、互いに無言になる。走りはじめて、四半刻はたっただろうか。
いつもならそろそろキツくなる頃なのに、まだまだ行けそうだ。やっぱり体が異様に軽い。これが悪魔の力か。
そんな俺と同じペースで走るなんて、祐斗のやつは相変わらず凄いな。
「……時間か。僕はそろそろ上がるけど、イッセーくんは?」
「……そうだな、俺も上がるか」
数分並んで走ったところで、祐斗は少しペースを落とした。俺もゆっくり歩行に切り替える。
軽く流すつもりが、それなりの運動になってしまった。腹もそれなりに減ったし、何よりシャワー浴びたい。
「あ、今日の放課後、教室にいてくれないかな?」
家に向かう俺に思い出したように言う祐斗。ちょっと驚く。
珍しいな、祐斗が俺に用事だなんて。今までは放課後ランニングのお誘いぐらいだったが。
「何か用でもあるのか?」
「うん、それは放課後に話すよ」
伝えたかったのはそれだけのようで、タオルで汗を拭いながら、それでもやっぱり爽やかに去って行った。
もう飯も出来た頃かな? 俺も帰ろう。
「……凄く、精力つきそうな料理ですね」
シャワーで汗を流し、リビングに向かうと、朝食とは思えないような重い料理が食卓に並べられていた。俺の席だけに。
隣はご飯と焼き魚に御御御汁といった極々平凡なメニューなのに、結構デカイ肉とか見えるんだけど。おかしいな、目が疲れてるのか?
オーフィス用を置き間違えたのかと思えば、どうやら俺用らしい。いやいや、無理無理。二人前は余裕でありそうだし、朝からこんなに食べられるわけが無いって。
と、黒歌さんに抗議したところ、
「目一杯修業が出来るように作ったから、頑張るにゃん♪」
笑顔で返された。昨日の修業をまんま今日に回した、と。……勘弁してくださいマジで。
結局、健闘虚しくも半分くらいはオーフィスの腹に納まった。美味しいし、頑張ったんだけどね。やっぱり朝からは無理があった。
一方オーフィスは自分の分も含めてペロっと平らげていた。龍神の名は伊達じゃない。
それだけで終われば感謝もしただろうが、なんとその後の訓練にオーフィスが参加。例外的に組み手をすることに。
もちろん、開始後数瞬でたたきのめされた。動きが見えなかった。もう瞬間移動のレベル。これ組み手というよりはサンドバックの方が近くね?
地面に崩れ落ちる俺を見て、苦笑いの白音ちゃんと黒歌さん。いや、止めてくれよ。
さて、学校だ。白音ちゃんと並んで学校に行くと、毎度凄い視線に曝されたものだが、最近は落ち着いてきた。
まだ若干、物凄い視線――どこと無く、松田や元浜のそれに近い気がする――を送ってくるやつこそいるが、そういう手合いは白音ちゃんが睨むと泣きながら逃げて行く。
何か用事でもあるなら、言いに来れば席外すんだけどな。ってかなぜ泣くんだ。
「……鈍感」
「? それなりに鋭いつもりだけど」
見れば分かる。多分、あれ白音ちゃんのことが好きな連中なんだろう。で、男と登校してるから絶望したと。
でも、俺と白音ちゃんは家族だから、当然付き合ってるなんて事も無いし。つーかそれくらい本人に確認すればいいのに。
ま、可愛い妹分だ、そこら辺の奴らに嫁がせる気なんて毛ほども無いが。
「……やっぱり鈍感」
呆れたようにため息をつかれた。
え、違うの?
少しずつ腕を上げてきた白音ちゃんのお弁当を食べたり、俺をぶん殴ろうとした松田や元浜を返り討ちにしたりして。
放課後である。白音ちゃんに用事がある旨を伝えると、どうやら白音ちゃんも用事があったらしい。すぐに歩いていった。
で、暇なので松田や元浜と雑談して過ごすこと数分。祐斗が教室に入ってくる。
途端、
「キャー! 木場くんよ!」
「ここに何の用なのかしら!」
「木場くんこっち見てぇ!」
凄い湧きようだった。女子が。もはやアイドル扱いに等しい。その内サイン会や握手会でもやりだしそうな勢いだ。
対して男子はすっげー面白くなさそうな顔をして帰っていく。松田や元浜もその例に漏れず、祐斗を睨みながら肩を落として去っていった。その背中は何だか妙に小さく、寂しそうに見えた。
そんな事はどうでもいい。
席を立って、女子に囲まれている祐斗に声をかける。
「おーい。どうする?」
「あ、イッセーくん。ごめん、旧校舎なんだけど、ちょっと先に行っててくれないかな」
「旧校舎か、分かった」
忙しそうだし、さっさと旧校舎に向かう。呼び出した本人がいないのに、待ち合わせ場所に行く意味があるのか? と疑問には思ったが。
祐斗がそんな初歩的なミスをするとも思えない。まぁ、取り合えず行ってみよう。
旧校舎前には、なぜか白音ちゃんがいた。俺の姿を見るなり駆け寄ってくる姿がちょっと可愛い。
「……イッセー先輩」
「あれ、小猫ちゃんここで何してるの?」
「……それはこっちの台詞です」
学園内だし、一応他人行儀に会話する。にしても、さっき後ろ姿を見送ったばかりなのに。何でこの場に白音ちゃんが?
「つまり、二人とも同じ用件だったのよ、白音、イッセー。私は必要なかったみたい」
「おおっ!?」
後ろからぎゅっと抱き着かれる。黒歌さんだった。……驚いた、何で学校にいるんですか、あなたは。
「白音に呼ばれたの。イッセー、あなたの護衛でにゃん」
「……一人じゃなければ、そう易々と襲われたりしませんから」
なるほど。一人だったら危ないけど、確かに黒歌さんや白音ちゃんがいれば、並の相手は文字通り瞬殺だ。
で、今日は白音ちゃんは用事があったから、黒歌さんを呼んだと。気配消せば真後ろをついて来られても分からない。
つまり、俺の用事の邪魔をする事なく護衛が出来る。適任だったわけね。
もしかしたら、ランニングも後ろからついて来てたりしたのかな? 黒歌さんはご飯作ってたから、白音ちゃん辺りが。
「あらあら、みなさんお揃いですわね?」
旧校舎の窓から、声。雰囲気いかにもお姉さんって感じの美人さんが、こっちを見下ろしていた。
……どこかで見たことあるような……。学校では基本机に突っ伏してるからうろ覚えだが、それなりに有名な人だった気がする。ま、いいか。分からんし。
「すいません、祐斗がまだ来てないですけど」
一応報告。まだ女子に捕まってんのかな、あいつ。難儀なやつだ。
「ある意味予想通りなので、構いませんわ」
と、笑顔でお姉さん。いやいやいや、構ってやれよ! 確かに予想出来たかもしれないけど! 結構雑だな祐斗の扱い!
意外な祐斗の立ち位置に驚愕していると、どういう仕組みか、旧校舎の扉が独りでに開く。これまた驚いて見上げると、やっぱり笑顔のお姉さん。ちょっと得意げだった。
「ようこそ、オカルト研究部へ。お入りください。リアスがお待ちかねです」
……あ、呼んだのリアスさんだったんですか。
オカルト研究なんて言うぐらいだ、旧校舎の中は、奇々怪々というのが相応しいほどオカルト塗れだった。というのを連想していたが、そうでもなかった。
全体的に薄暗く、中央に巨大な魔方陣があること以外は、逆に気品を感じさせる作りをしている。センスあるな、俺には無理だ。
「よく来たわね、イッセーに小猫……黒歌も」
んで、この部屋の主であるリアスさんはソファに腰掛けていた。黒歌さんを呼ぶ時微妙に間があったのは気のせいだろう。
「粗茶ですが」
「あ、ありがとうございます」
「……ありがとうございます」
「ありがとにゃん」
さっきのお姉さんがお茶を入れていく。一口。うん、美味い。
「美味しいです」
「ありがとうございます」
言って、リアスさんの後ろに佇むお姉さん。人が出来てるな、少しでもいいから黒歌さんにも見習ってほしい。
まぁ、それは置いといて、だ。
カップを置いて、リアスさんをしっかりと見据える。
「まさか、こんなに早くまた会うとは思いませんでした」
今までの学園生活で一度も会わなかった人だしな。三年の人だろうし。確かにこうやって呼んだりしない限り会うことはなさそうだが。にしても、いきなり来るとは思わなかった。
「昨日、また明日って言わなかったかしら?」
「あれそういう意味だったんですか!?」
なんか思った以上にフランクな人だった。お茶目ですねリアスさん。悪いことじゃないけど、ちょっとだけ意外だった。
さて、下僕になってしまった俺はともかく、なぜ白音ちゃんも呼ばれているのだろうか。その辺をきっちりと聞いておこう。
「で、本日はどういったご用件ですか?」
「あら、可愛い下僕と仲を深めるのに理由が必要かしら?」
「俺はそうだとしても、白音……小猫ちゃんは違いますよ?」
「知ってる、イッセー? 悪魔って、欲深いのよ?」
予想通りというか、やっぱり勧誘が目当てだったようだ。でも、俺も認める気はない。
「ダメです。小猫ちゃんは俺の家族です。いくら主の頼みでも渡せません」
白音ちゃんを抱き寄せる。本人が望んでるならいざ知らず、白音ちゃんは一回拒否してる。家族と一緒に居たいから、と。だから、諦めてもらおう。
「……ふぁ……」
「ふふ。白音、嬉しそうね?」
「……はい」
「もちろん、黒歌さんもですからね」
「え……?」
黒歌さんも抱きしめる。「イ、イッセー?」とちょっと慌てている所がまた可愛い。だって、大切な家族なのには代わり無い。もちろん認める気なんてない。
オーフィスだって家族同然だ、この場に居たら抱きしめてたと思う。……まぁ、あんな天災レベルの子を下僕にするとか誰にも出来ないだろうけど。
「あらあら……リアス、これは分が悪いですわ。諦めなさい」
「朱乃!」
お茶のお姉さん改め朱乃さんも、ニコニコしながら俺達に加勢する。リアスさんはまだ未練がましく白音ちゃんを見ていたが、
「ダメかしら?」
「絶対ダメです」
もう一度拒否すると、そう、とため息をついて引き下がってくれた。まだ諦めてはなさそうだけど、譲りませんからね、これだけは。
……あ、そういえば。
「ところで、その……今更ですけど、悪魔だとかいう話、しても大丈夫なんですか?」
話の流れ的に、多分朱乃さんもリアスさんも、祐斗も悪魔だとは思うけど、念のため。リアスさんは頷く。
「ええ。我がオカルト研究部の部員は、小猫を除いて全員悪魔だもの」
良かった、と一安心したのもつかの間。白音ちゃんが部員扱いされていることについて、またリアスさんとお話をした。
あれから数分。悪魔らしい会話といえば最初だけで、あとは普通に雑談ばかり。平和な時間が流れていた。
タイミングを見計らって、リアスさんが切り出す。
「……小猫の勧誘は失敗したし、多少緊張も解れた頃かしら。祐斗ともう一人、今はここに居ないけど、自己紹介をしましょう。小猫や黒歌はもう祐斗とは会ってるし……イッセーももう知り合いなのよね?」
「はい、朝に似たコースをランニングするんで。今日もばったり会いましたし」
まぁ、悪魔だとは知らなかったわけだが。つーか結局帰って来なかったな、あいつ。どんだけ人気あるんだ。
「そう、ならいいわ。……私は三年のリアス=グレモリー。悪魔よ」
「同じく三年の姫島朱乃です。悪魔ですわ」
「私は黒歌。悪魔よ」
「……一年、塔城小猫です。猫又です」
バサ、っと白音ちゃん以外の全員から黒い翼が現れる。確認してみたら、俺の後ろからも、しっかりと生えていた。これ飛べるのかな? どうでもいいか。
「二年生、兵藤一誠です。……悪魔、です」
俺の第二の人生は、こうして始まった。
原作沿いを諦めたので、小猫の眷属入りを今の所見送る事にしました。レーティングゲームで戦力が減りますが、今のイッセーがドライグ使えばなんとかなるんじゃないか、と判断した結果です。
旧魔王派や禍の団とは、黒歌共々もちろん一緒に戦いますが。
さて、原作1〜5巻がどこかに行ったので困りました。どうしよう。読んだの半年以上前なのに……特にライザー。下僕、数だけ無駄にフルメンバーなんだよなぁ。名前とかレイヴェルとイザベラ(だっけ?)しか覚えてない。
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