アスベスト:日通元社員損賠訴訟 石綿運搬、日通に賠償命令 神戸地裁尼崎支部「安全配慮怠る」
毎日新聞 2012年06月29日 東京朝刊
トラック運転手として日本通運(本社・東京都)の倉庫や兵庫県尼崎市のクボタ旧神崎工場にアスベスト(石綿)を運搬し、中皮腫や肺がんで死亡した元日通社員5人の遺族が、日通とクボタに慰謝料など約2億2250万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、神戸地裁尼崎支部であった。富川照雄裁判長は「安全配慮義務違反があった」として日通の責任を認め、同社に計約1億3700万円の支払いを命じた。
原告側弁護団によると、石綿を運搬したトラック運転手に対するアスベスト被害が裁判で認定されたのは初めて。旧神崎工場を原因とする石綿関連死を認めた判決も初めてという。5人の遺族のうちクボタにも賠償を求めた4人の遺族は3月、1遺族1000万円で和解が成立している。
判決によると、5人は1954〜83年、石綿の運搬作業に従事。いずれも退職後の00〜07年、57〜76歳で中皮腫か肺がんで死亡した。日通は「対策は取っていた」と主張したが、判決は「防じんマスク装着を義務づけていれば、発症は回避し得た」と指摘した。
一方、原告が求めた慶弔見舞金については「死亡時に社員でなかった者は対象外」として認めなかった。日通は「判決内容を検討し対応を決める」とコメントした。【藤顕一郎】