クソ物件
写真は戸籍謄本その他の束。相続登記の必要書類。二年近くしこっていた問題がようやく終盤というところで大作業。
自分の物件も沢山あるから、売買による所有権移転、抵当権設定、住所変更、抵当権解除など、簡単な登記なら10以上はやったと思う。しかし相続人が13人という相続登記などは初めて。自分の戸籍謄本ですらまともにみたことがないのに、赤の他人の戸籍謄本の山を調べて、家系図みたいなのを作らねばならない(相続関係図)。
勿論、これは相続登記後すぐに売買で自分に所有権移転するものだからやっている。自分のじゃないのに何回もやっていると、恐らく「業として行った」とかいう法律に引っかかるだろう。司法書士に頼めば数万かかるわけだし、そんなのアホらしい。
しかしこの相続案件、現代日本の縮図をみているようだ。被相続人、つまりお金持ってて死んだ人は4000万近くの財産を持っていた。しかし子供はいない。よって妻と兄弟に相続になったが、その兄弟にはホームレス同然の行方不明の後、生活保護の人もいる。ま、年収4000万じゃないので、河本準一とは比較できないが。他の兄弟もお金に困っていて、多額の借金がある人もいる。その1人がリースバックのお客さんだったのだ。「相続で家を買い戻します」という話でこちらが買い取ってから、既に二年近くが経っている。
この相続、10年前に死んだのをそのまま放っておいたので、相続人が死んでそのまた相続が発生したりというのが2件含まれている(代襲相続)。
この相続には2件の不動産が含まれていた。それをどうやって誰に振り分けるか、ということで、あーでもない、こーでもない、と二年もやっていたわけだ。相続を話合いで決める場合、相続する資格のある人全員が納得しなければ決まらない。1人でもごねるヤツがいると、いつまで経っても決まらない。勿論法律で決まっている割合で、不動産も含めて分けることも出来る(法定相続)。しかしこのケースなら、一つの家を13人で分割する話になる。誰がそれを使うかなど、決まりようもないから、できれば換価したいが、買い手がいないということだった。それでそのクソ物件を仕方なく私が「買って差し上げましょう」というわけ。
しかしこちらにとっての懸念は、借金を背負っている相続人の差押えがされないか、ということだった。相続人の債権者が、相続財産の不動産を法定相続分で登記してしまって差し押さえることも可能なはずだった。まずそれがなされないかどうかが、こちらにとってのリスク。遺産分割の話合いがまとまると、遺産分割協議書というのができるが、それができたらすぐに登記に放り込まなければならない。
13人の相続人の遺産分割協議書をまとめるのは、相続人の一部が依頼した若い弁護士だった。相続人は60以上の爺さん婆さんばかり、代襲相続でもらうことになった息子達でも俺より上。そこにまだ20代の孫みたいな弁護士が動いていた。まあこの弁護士、結構プライドが高くて、ちょっと酷い目に遭った。その酷い話は別の機会にするとして、相続案件も初めてだったらしく、いくつか間違いを犯してくれた。
13人の相続人の中に1人ごねまくる人間がいて、そいつが弁護士のミスにつけ込んで因縁をつけ続けていたことも、時間がかかった理由。このごねる人間が、どうも遺産分割協議書をどこかの金融屋に持ち込んでお金をひっぱって来そうな雰囲気が充満していた。よって相続財産の不動産を売買で所有権移転する小生としては、①リースバックのお客の債務 と ②ごねまくっている相続人の抜け駆け を注意しなければならなかった。
そんなわけで遺産分割協議書をもらったのが先週。もらってすぐ徹夜作業で初めて見る戸籍の山を解析し、相続関係図を作成。翌日即登記申請完了。しかしプロではないので、これだけ複雑な登記なら、補正は避けられない。「間違っているところがあるから直して下さい」というヤツ。最悪の事態として避けたかったのは、再度関係する相続人の署名押印が必要な書類が出てくることだった。何しろその1人ごねているヤツをなだめるには、ある程度金を握らせるしかないが、どこまでつけあがってくるか分かったものではない。しかしこれだけ複雑な未知の登記申請では、何があるか分からない。せめて相続人への新たな書面提出要請がありませんように…と祈っていたのだが。
残念ながらその祈りは届かず、法務局から補正の連絡が来た。
「遺産分割協議書第一条では確かに不動産その1はAさんが相続する、とありますが、第9条で●●家共同相続人は改めて遺産分割協議をするとありますから、●●家の人全員について、『そのクソ物件はAさんが相続することで相違ない』趣旨の書面を添付して下さい。」
え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ orz orz orz。弁護士のバカ!
う~~ん、まいったなぁ~、どうやって書類をもらうか。この間にも遺産分割協議書で、もう一つの不動産はいじられてしまうかも知れないし…(お金を借りて抵当権がついたり、売り払われてしまう可能性)。
相続人を通して弁護士に文句を言うと、「あれで問題ない筈だ」と弁護士は弁護士の言い分。相続人の顔もあるから、昨日法務局に弁護士の言い分を伝えて文句を言うことにした。法務局で職員とその上司も出てきて曰く
「確かにそのクソ物件は、第一条でAさんに相続登記するとも解釈できます。しかしそれを覆す内容を第9条で言っているので、これには疑義があるというのが、我々の一致した見解です。」
その唯一ごね続けている相続人によって、このままでは相続登記が出来ない状態で、かつ法定相続によりそのごねた人間の分だけ抵当権が付けられてしまう可能性もある。そのように小生は主張した。
「仰ることは分かりますが、私共の見解では、このままでは相続登記できないので、どうしても不服というのであれば、千葉の法務局の上の方に聞いてみるしかありません。」
一応その上の人に聞いてもらいつつ、こちらはこちらで書類を取れるよう努力することになった。
参ったなぁ~、と思いつつ、そのクソ物件に行ってちょっと掃除をした。暗い気分で帰ろうとしたところ、また法務局から電話がかかってきた。
「さっきの遺産分割協議書ですが、第9条で問題があると言いましたが、その次の第10条でまた更にその内容を覆すようなことを言っています。それでこちらとしては、相続登記を認めることにしました。」
なんだかよく分からないけど、朗報みたいだったので、その足で午後一番に法務局に戻った。
「先ほどは失礼しました。」
と法務局職員。
「要するに2重に矛盾しているので、単純に解釈しようと言うことですか?」
「ええ、そうなんです、これ本当に弁護士が作った文章ですか?」
「いや~、なんか新米の弁護士でミスが多くて、困っちゃいますよ。」
弁護士が2重にミスしてくれて助かった。横転した車が再度ひっくり返って元に戻った感じ。隣で登記簿を確認してみると、確かに野田名義になっていた。ホッ。
でも弁護士も適当だけど、朝一番と午後一番で言うことがひっくり返る法務局も…。
書いていて我ながらつまらない。多分皆さんにとっては経済シリーズ以上につまらないでしょう。でも実はこれと同時進行で瞑想もしているんです。それが私にとっての修行なんですけどね。それを今度書きます。
(つづく)
ええ、
現状の解析だけでも一苦労。ちょっとオペレーション間違えば関係者の首が飛ぶ。燃え盛る制御室に踏み込んで非常用レバーを引くような。運用しながら大手術。生きた心地がしない。
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>私が麻原尊師に帰依する聖者であることを隠す理由は存在しない。
おめでたい人ですから、公表して差し上げてはいかがでしょうか。
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