ボクシングのダブル世界戦の予備検診が13日、東京都内であり、4人とも異常はなかった。WBC世界フライ級王座に挑戦する五十嵐俊幸は、亡き祖父に世界ベルトをささげることを涙ながらに誓った。
五十嵐が泣いた。公式記者会見後の囲み取材。亡き祖父・甚之丞さんの話になると、こらえ切れずに目頭を押さえた。
「おじいちゃんはボクが2歳の時に亡くなった。だから記憶にない。でも、よく膝に乗せてご飯を食べさせてくれたと、親に聞かされて…」
そこまで言うと、もうダメだった。祖父のことを強く意識したのは、2004年、アテネ五輪出場時。出発前、母がお守りに写真をくれた。以来、苦しいとき、つらい時、いつも祖父のことを思い、頑張れた。いつしかとても大きな心の支えになった。
予備検診で筋骨隆々の王者ハロの肉体を見て「必要な筋肉なのかな。問題はそこ」と強気なセリフも。「勝って、おじいちゃんのお墓参りをしたい」。涙もろく、ピュアな男は、勝ってもう一度、思い切り泣く。 (竹下陽二)
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