滋賀・いじめ自殺 澤村教育長、警察の強制捜査に現場で抗議
滋賀・大津市でのいじめ自殺問題で、ほかの保護者たちからも激しい怒りや不満の声が上がっている。さらに、問題は列島各地に波及している。
12日夜、「預ける側としては、心配で預けられない」などと、学校への不信感をあらわにする保護者。
滋賀・大津市の中学校で12日夜、緊急説明会が開かれた。
集まったのは、およそ700人の保護者たち。
学校側からは、校長や教頭、学年主任など、市の教育委員会からも教育長が出席し、およそ3時間にわたって行われた。
校長は「(学校としては)最大限の取り組みをしてきたというふうに思っております」と述べた。
しかし、保護者は「(生徒たちは)事実を明らかにしなければという思いで、(アンケートを)書いたと思うんです。その思いを先生方がどこまでくみ上げて、真剣に対応したのか、全然伝わってこない」と語った。
保護者からの批判は、男子生徒が自殺した後の学校側の対応に集中した。
しかし、学校側の説明に不満があるとして、途中で退席したという保護者の姿もあった。
途中退席した保護者は「聞いていても堂々巡り。思ったような答えが返ってこない。どういうことが起きて、これからどうするのかとか。結局、堂々巡りで的を射ていない。(保護者に対して謝罪は?)謝罪されていたと思うけど、伝わらなかった、何1つ」、「空気が読めていない。学校教育はこんなもんかと、民間から見たら、そう思いますよね。もう少し、誠意を持った態度でいかないと、日本中の人は許してくれませんよと。わたしが申し上げたのは、『あなたがたは、滋賀県の恥です』と、はっきり言いました」、「いろいろ、報道とかで聞いている話と、学校側が本当に持っている真実というのを、もうちょっと突っ込んだ形で聞けるかなと思ったけど、なんか、個人情報とか、いろんなことを言われましたけどね。確実に、われわれの心に響く返事はもらえなかった。ちょっと残念な説明かだった」などと語った。
学校側の対応に対する不安と不満。
さらに、別の保護者は、「質疑応答に入りますとなった時に、一番前のお父さんが手を挙げて、『1人の方が亡くなっているのに、黙とうがなんでないんや』って言って、拍手が起こった。(学校側の)誰が言ったかわからないけど、『黙とう』って。(保護者からは)『立ってやろ!』と(声があがった)」と語った。
この説明会には、自殺した男子生徒の父親も出席した。
男子生徒の父親の様子について、説明会に出席した保護者は「黙とうの後に手を挙げて、『黙とうしていただいて、ありがとうございました』から入った。『被害者の何々です』と。『今後もご迷惑をおかけすると思いますが、何とぞよろしくお願いします』しか言わなかった」、「もう泣きそうだった。自分だったら、子が亡くなったら、そこまで、お父さんのように絶対できないと思った」などと語った。
保護者から批判が相次いだことを受け、学校側は今後、希望する保護者には、アンケート結果の閲覧を認めることを表明した。
大津市教育委員会の澤村憲次教育長は、保護者説明会に出席後、取材に応じ、「全体を通してわたしが感じたのは、自分の行っている中学校に、誇りの持てる教育を期待すると。そのために、先生に頑張ってほしい。要約すると、こういうことかな」と、保護者からの意見だとして、全体を総括した。
一方、11日夜、滋賀県警が「強制捜査でないと全て(資料が)出ないと判断した」として行った学校と教育委員会に対する異例の家宅捜索について、その現場で抗議していたことを明かした。
澤村教育長は「きのうの午前中に県警本部の生活安全部長から電話が来て、『警察が捜索することになります。捜査のご協力をお願いします』ということだったので、『わかりました』と。わたしとしては、『協力する』と言っているのに、『なんで強制捜索なんですか』と。(現場で)抗議の思いをお伝えした」と語った。
その家宅捜索の容疑となった2011年9月の体育大会での暴行について、13日、一部新聞が「女性教員がその場を目撃し、加害生徒に注意していた」などと報じたことに、教育委員会側は13日、会見で「(教師が複数の生徒に)注意をしていたことは事実です。ただし、それがその子(加害者生徒)かどうかは、確認がとれていません」とした。
さらに、澤村教育長は「いろいろとやられているところは、回っていた教員は『見かけていない』と言っている」と事実関係を否定した。
また、12日夜の保護者説明会の中で、いじめをしていたとされる3人の生徒たちについて、説明したことを明らかにした。
澤村教育長は「加害者の子どもは、いわゆる暴力を振るったり、成績カードを破ったりとか、そういう個々のことは認めているけど、それをいじめであるとは認めていない」と語った。
平野文科相は13日、大津市でのいじめをめぐる一連の動きに、閣議後の会見の冒頭で触れ、13日にも文科省の職員を現地に派遣し、第3者委員会の立ち上げなどの対応を行うと話した。
平野文科相は「特に学校に捜査が入るという事態については、大変遺憾でございます」と述べた。
大津市のケースに続き、今、全国各地でいじめ問題が浮上している。
愛知・蒲郡市でも2012年3月、中学2年の男子生徒に対し、同級生の男女9人が、「自殺に追い込む会」なるグループをつくり、悪口や自宅前で「死ね」と叫ぶなどのいじめを行っていたことが判明した。
学校は、6月末になってその実態を把握し、いじめをやめさせたという。
こうした対応に、教育評論家の尾木直樹氏は「愛知の学校の場合は、今回の大津の報道がすごくされたので、先生方のいじめに対する感度、非常にアンテナが高くなっていた。だから、すぐに救済できたと思います。(ほかにも)全国のどこかにあるかもしれないから、余計に先生も子どもたちの方をしっかり見ないといけないし、親の方も、わが子を見てないといけない」と語った。