外交part1
4月3日 午前11時 択捉島 留別市街 県庁応接室
「では、日本とガリアの友好のためにおねがいします」
「いえいえ、こちらこそ、助けていただいた上にこのような会談を開いていただき感謝しております」
この日、択捉島に派遣された嘉納や外務省の役員達とボルグらガリア側と会談を開いていた。
そして現在、会談は成功し、日本側とガリア側双方共に会談の成果に満足している。
なにせ、たった3時間足らずの会談で日本とガリア両国の利害があっさりと一致したからである。
「いや、まさかこんなに話が上手くいくとは上条さんも喜ぶだろうな!」と嘉納は秘書に満面の笑みで話し、一方ボルグの方も一緒に来ていた官僚達に、
「これでガリアは帝国に従わなくて済むぞ!」と喜んでいた。
今日の会談で話された内容は日本とガリアの今後の関係についてであった。
日本側としては厳しい食料・資源の事情から一日も早く、友好国を見つけて貿易をしなければならず、ガリア側は連邦が消滅したことにより軍事的、政治的な後ろ楯を失い、帝国に併合されるか属国にされるのは確実であり何とかしてそれらを避けたかった。
そこで両国の思惑が一致した。
日本が必要とする資源や食料をガリアは輸出可能であり、ガリアが必要とする軍事的、政治的な後ろ楯は日本と安全保障条約を結ぶことでガリアと日本が同盟関係になれば良いため、両国共にそれらを条件に国交を結ぼうと提案したからである。
日本としては現在、周りが敵だらけ(アカネイアやエルベディア)の状態であるため一国でも多く友好国を作り、貿易をしたいためにガリアの提案は好条件であり、ガリアとしては帝国との対立上、強大な軍事力と技術力を持つ日本との同盟は大歓迎であったため両国の利害は一致、会談の目的は達成された。
そして会談では以下ような協定が決まることになる。
・今後、日本とガリアは互いの武力不行使の原則を確認し、今後結ばれる安全保障条約は純粋に国土防衛のために両国が協力するものとする。
・自由主義を護持し、日本・ガリア両国は諸分野において協力することを定め、また貿易、技術協力、民間交流などを促進させる。
・ガリア国内において日本人が何らかの問題行動を起こした場合についてはガリア国内法によって裁かれる、同じく日本国内で何らか問題行動を起こしたガリア人も日本国内法に基づき裁かれる。
・両国共に関税に自主権を持つ。
・また不測の事態に陥った場合は両国が共に話し合い決める。
・両国は国交、締結後に関税、法権、貿易、安全保障などの各種協定、条約を早急に結ぶ。
・また両国の国境は今後、測量を行い、測量の際に出た数値を基に中間地点の海域を国境とする。
・日本、ガリアは互いの国に大使、並びに領事を派遣し自国民の権利を保障する。
・またこの協定は国交が正式に結ばれてから効力を持つ。
などが今日の会談で決まることになり、後に日本・ガリア基本協定と呼ばれることになる。
「では、ボルグ宰相は軍艦の修理が完了しだいガリア本国とコーデリア殿下に宜しくお伝えください」
「ええ、嘉納大臣も上条総理に頼みますぞ、両国の今後のためにも」
「はい、ではボルグ宰相とガリア閣僚の皆様、お昼が近いのでこれより我々が用意した料亭がございます、そこで我が日本の伝統的な料理を後堪能ください」
午後3時40分 首相官邸
「くそ!、こんな非常事態時に上条は入院してやがんだよ(怒)」
吹寄が全身から怒りのオーラを全快にしている光景を見て、周囲にいたまるでサタンの様な血相した吹寄に職員達は皆怯え、震いあがっていた。
上条が入院した理由は言うまでも無く、過度の疲労と脱水症状によるもので、現在は東大付属病院で安静状態で寝かされている。
しかも、上条が現場から離脱したことにより少なからずの混乱が指揮系統に出ていた。
それでも、海原、吹寄を中心としたメンバーが上条の分も働くことにより何とか補おうとしている。
吹寄は現在、上条に怒りながら
書類の山と格闘中である。
「官房長官!、先ほどエルベディア公国を名のる組織から通信が入りました!」
一人の職員が慌てて対策室に入ってくる。
「通信の内容は何ですか?」
と海原が職員に尋ねると、
「はい、こちらの書類に書かれております」と職員が手に持っていた書類を海原に渡す。
通信の内容を見ると、
「明日の12時に硫黄島に使節を送る」とだけ書かれていた。
「・・・・・何ですかこれ?」
海原はたったこれだけ?と口を開けて唖然とした。
「官房長官?」
書類を渡した職員が海原にどうしました?と尋ねる。
「いや、大丈夫だ。このことは外務省はもう知っていますか」
「はい、外務省の方では既に硫黄島に役員を送る準備をしています」
「では、そちらの交渉の件は外務省に頼みます、こちらも数人、役員を選び送りますと伝えておいてください」
午後4時20分 鹿児島から北西に200Km先にある海域
今から数時間前、鹿屋基地を第11航空群所属のP-1哨戒機が一機飛び立った。
P-1哨戒機は2012年に海上自衛隊に制式採用され、既に第三次世界大戦で中国海軍やロシア海軍の駆逐艦や潜水艦を相手に戦い、その高い能力は世界中から評価されてる。
細田 二等海尉を機長とする JUPITER02の乗員達は不思議な光景を目の当たりにしていた。
本来この辺りには一切、島や岩礁が存在せず、ただ海が広がるだけであったが彼らの眼前には台湾クラスの大きさを持つ島があった。
「機長、日本が異世界に転移した話しは本当だったんだですね」副操縦士が茫然としながら言う。
細田も眉を顰める、
「ああ、しかも俺達が第1発見者だ、歴史の教科書に載るかもな」
「良い意味で載りたいですね、日本を救った飛行士として」
「そう願うよ。おいっ早く、通信員は基地に連絡を入れろ」
「機長!基地より入電、島内陸部を偵察せよとあります!」
島発見から数分後、驚異電波やミサイルなどの反応が全く見られないため、細田はP-1を内陸部まで飛ばす。
初めは何もない平原や山地が広がるだけであったが島の各所に大きな村が見られ、島の北西部に差し掛かるとヨーロッパの城の様な建造物が見えた。
「こりゃ、スゲー映画に出てきそうな城だぞ!」
細田が呟く。
「窓からも市街が見えますが明らかに中世ヨーロッパクラスの文明レベルですね」
レーダーが必要ないので暇な谷盛が言う。
「機長、これがあの福岡に攻めてきたアカネイア?とか言う国ですかね?」
「さぁ、俺には分からないがここはアカネイアと違う気がするよ」勘だけどねと細田が笑いながら付け足す。
「機長、司令部より入電、JUPITER02は直ちに帰投せよ、と言っています」
「それじゃここいらで帰りますか」
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