現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. 社会
  3. 記事
2012年7月13日22時32分

印刷用画面を開く

mixiチェック

このエントリーをはてなブックマークに追加

《いじめられている君へ》内藤大助さん

写真:内藤大助さん拡大内藤大助さん

■一人で悩まないで

 いいか、絶対にあきらめるな。いじめが一生続く、自分だけが不幸なんだって思ってるだろ? 俺自身もそうだったから。でも、いじめはきっとなくなるものなんだ。

 俺は中学2年の時からいじめられた。はっきりした原因は俺にもわからないけど、同級生から「ボンビー(貧乏)」ってあだ名をつけられて、バカにされた。

 北海道で育ったんだけど、母子家庭でさ。自宅で民宿をやっていて、母が朝から晩まで働いていた。

 家は古くてボロくて、制服も四つ上の兄のお下がり。つぎはぎだらけだったから、やっぱりバカにされたよ。せっかく祖母が縫って直してくれたのに、俺はバカにされるのが嫌で、わざわざハサミでつぎはぎを切ったこともあったよ。

 中3になってもしんどくて、胃潰瘍(かいよう)になった。学校で胃薬を飲んでいたら、先生から「何を飲んでいるんだ」って叱られた。理由も聞いてもらえず、つらかったな。あのとき一瞬、先生が助けてくれるかもって思ったんだけど……。

 高校を出ても、「いじめられて、ボンビーで、俺は生まれつき不幸だ」と、ずっと思っていた。上京して就職しても、帰省したらいじめっ子に会うんじゃないかって怖かった。

 強くなりたかった。不良のような、見せかけの強さだけでもいいからほしかった。暴走族に誘われたら、入っていたよ、たぶん。

 そんなとき、たまたま下宿先の近くにボクシングジムがあったんだ。通えばケンカに強くなれる。強くなれなくても、「ジムに行ってるんだ」と言えば、いじめっ子をびびらせられるって思ったね。

 入ってみたらさ……楽しかったなあ。周りも一生懸命で、俺もやればやるほど自信がついて、どんどんのめり込んだ。自分を守るために始めたのに、いつの間にかいじめのことなんてどうでもよくなっていた。不思議なもんだ。

 ボクシングの練習がつらいときは「いじめに比べたら大したことない」って考え、マイナスの体験をプラスに変えてきた。でもね、「いじめられてよかった」なんて思ったことは、ただの一度もないぜ。いまだにつらい思い出なんだ。

 「いじめられたらやり返せ」っていう大人もいる。でも、やり返したら、その10倍、20倍で仕返しされるんだよな。わかるよ。

 俺は一人で悩んじゃった。その反省も込めて言うけど、少しでも嫌なことがあったら自分だけで抱え込むな。親でも先生でもいい。先生にチクったと言われたとしても、それはカッコ悪いことじゃない。あきらめちゃいけないんだ。(ボクシング元世界王者)

     ◇

 本シリーズは、2006年11〜12月の連載の続編です。大津市のいじめ問題を受け、改めて全国の子どもたちへメッセージを届けることにしました。

PR情報
検索フォーム

おすすめ

大神 絶景版・メタルギア ソリッド HD エディション他…HDリマスターゲーム特集

会社にとって都合のいい労働力?立場は不安定だが法規制は緩い。有期雇用の課題を考える。

人事から社論まで握る会長の独裁を許している理由とは何か。

満身創痍の小沢が仕掛けた造反劇。不毛な権力闘争のツケはやがて国民に――。

ジンベイザメフロート

そんな想いはしたくない!旅のお供に「ポータブルナビ」を


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介
海猿×朝日新聞デジタル

朝日新聞社会部 公式ツイッター