皆様、こんばんわ~☆
本日は少し時間配分が駆け足気味の暮灘です(^^;
さてさて、早速ですが今回のエピソードは…
当然のように新歓ライヴの続きです♪
でも、何故か前半は美緒がメイン…というか、彼女の単純にして複雑(?)な心情が描かれます。
発言と心の声のギャップがミソ(笑)
後半は、サブタイとリンクする、"ロックの名ナンバー"が流れます♪
あっ、念のために言っておくと、音楽著作権に対応/考慮済みの物で、出てくる日本語訳は直訳や正規の訳ではなく暮灘オリジナルの"意訳"なので、問題ないと思われます☆
さてさて、こんなエピソードですが、お楽しみ頂ければ幸いです(o^-’)b☆
第14話 "まんぞくっ!"
「皆さん、こんにちわ〜! 軽音部で〜す☆」
優衣の最初のMCに、
「「「「きゃあああぁ―――――っ!!!」」」」
桜花高の講堂に集まった女子生徒達の黄色い大絶叫♪
どうやら優衣はたった1曲弾いただけで、殆どが興味本意や面白半分で集まっただけの生徒達のハートを鷲掴みにし、自分達の"オーディエンス"に変えてしまったらしい。
「皆さん、ご入学おめでとうござまぁ〜す♪ って、わたし達も新入生なんですけどねぇ〜」
てへへぇ〜♪と微笑む優衣に、会場も自然と釣られるように笑いに包まれた。
その無垢な微笑みは見る者を和ませ、彼女のギターとはまた別の意味で人を惹き付ける。
☆☆☆
優衣達、新生桜花高軽音部が"リスタート"をアピールする為、新入生歓迎を口実(笑)に企画した【新歓ライヴ】。
いや、むしろこのライヴに付けられた"サブタイトル"の方が、その本質を表している。
曰く、
【Re Generated LIVE】
《再び生み出される為のライヴ》である。
広く捉えれば、【高校という新たな生活を始める】とも捉えられるが、これはもう露骨に"軽音部の再生と復活"を意味してるのだろう。
その目的自体は、オープニング…ネットで音楽を聴く人間には非常にメジャーな【カノンロック】の優衣達版、強いて名付けるなら
【Canon Rock Metal Band Edition】
だけでも半ば成功していたのだが…
***********
(まずいまずいまずいっ!!)
心中穏やかじゃないのは同じステージ…しかも、隣に立つ美緒だ。
優衣が音と本人のキャラで大いに人を魅了する事はわかっていた(何を隠そう自分もその一人だ)だが、
(まさか1曲目からこうなんて…クッ! なんて破壊力だ…)
黄色い声援が飛ぶのは覚悟していたが…
美緒でさえこの熱狂に至るまでのスピードは、予想を遥かに越えていた。
言い方を変えるなら、優衣がこんなにも早く人気を集める事に焦りを感じていた。
そもそも、視力が悪くない優衣に眼鏡をかけさせ、オマケに三編みまで強要させて地味な外見(いや、違う意味では逆に目立つ気がするが…)にさせてるのは、優衣にベタ惚れしてる美緒と阿樹沙だ。
それというのも、ひとえに《百合の花畑(笑)》…かもしれない女子校に通う事になった優衣に悪い虫が付かないようにする為、ぶっちゃけ恋敵をこれ以上増やしたくないが為の予防的措置だ。
だが、美緒は自分の目論見の甘さを痛切に感じていた。
(優衣の魅力は、外見を地味にした程度でどうにかなるものじゃなかったか…!!)
どんなに外見をいじった所で性格や人柄、何より"優衣の音"は誤魔化せるような代物じゃなかったのだ。
☆☆☆
ならば建設的な手段は、これ以上優衣に人気が出ないようにすること…
そう判断した美緒は自らマイクを握り、
「皆さん、こんにちわ。まだ一年の身ですが僭越ながら軽音部の部長を勤めさせてもらってる、ベースの"秋月美緒"といいます」
そのマイクを握る姿は実に凛々しく堂々としていて、澄んだ声と黒く長く美しいポニテと相まって、ベースを刀に持ち変えたらそのままサムライ・ガールで通りそうだ。
「それというのも私達が入学した時には、既に部員が全員卒業してしまっていて、軽音部には名前しか残ってない状態…そのまま四月中に部員が入らなければ、廃部を待つだけの部でした」
そして、そこで一旦言葉を切り、眼下の生徒達を見回すように視線を走らせる。
(よし…緊張もしてないし、噛んでもいないぞ!)
美緒は内心、安堵しながら、
「でも、私達は音楽を…みんなでバンドをやることを諦めたくなかった!!」
凛とした声でシャウトする美緒…
気が付くと優衣は見惚れるような視線とふにゃっとした笑顔で、
「みぃちゃん…かっこいいよぉ〜♪」
☆☆☆
(ああ、神様…優衣の今の一言があれば、それだけでご飯三杯×三食は軽くいけます!!)
美緒はそのまま優衣を抱き締め、隙間なくキスの集中豪雨を降らせたい衝動に駆られるが、
(いや、今は我慢我慢!)
何しろ今は、
《"優衣に集中する視線と人気を私が目立って分散させちゃうぞ"作戦(笑)》
を遂行中なのだ。
欲望に負けて優衣に襲いかかり、背後から無言で【内蔵までダメージが達する和夏スペシャル】を喰うような醜態は、断じて避けたい。
(クッ!…レコーディングしてなかった事が悔やまれるな…)
とはいえ、記憶が鮮明な内に【今夜のオカズinベッド/トイレ/お風呂】にする事は、美緒的に決定事項なのだが(笑)
(いや、トイレなら何も家まで待つ必要は…)
なんて桃色思考をおくびにも出さず、
「ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが…ここにいる私達五人とまだ中学にいる後輩の三人を加えた八人は、中学時代からバンド活動を奏ってました」
美緒は一呼吸置き、
「だから! 私達は軽音部に入りました! 例え先輩達から教えを受けられなくても、私達は"私達の音楽"をこれからも続けていきたかったから!!」
そう断言した美緒は目に力を込め、心の奥底から叫ぶ!
「私達が…"桜花高軽音部"だっ!!!」
☆☆☆
「「「「「キャアアアアァ―――――ッ!!!!!」」」」」
美緒の勇ましいく熱いシャウトは、まさに"女子校に足りない成分"を刺激し補完する最高のエッセンスとなった。
「美緒さまぁーーーっ!!」
「美緒さま、素敵ぃーーーっ!!」
「美緒さま、抱いてぇーーーっ!!」
生徒から自然発生的に上がる黄色い歓声を聞く限り、美緒の目論見は成功したようだ。
しかし、これが後に中々"面倒な事態"を招くのだが…
今の美緒がそれを知る由はなかった。
☆☆☆
ただ、講堂の片隅では…
「へぇ〜っ。美緒の奴、上手くヘタレ具合を隠しきったじゃないか? それなりに部長っぽく見えるよ♪」
と楽しげに言うのは、桜花高在校《グルーヴィーズ(正確にはグルーヴィーズ残党と呼ぶべきか?)》のリーダー格、ついでに美緒のケンカ友達(?)の橡花媛子だった。
蛇足ながら《グルーヴィーズ》は、その起源が優衣達の中学時代の同級生達が支援の為に結成した地下支援組織に端を発するので、媛子達が最上級生(第一世代)という事になる。
「きっと、"ゆいぽん"を取られたく一心だと思うよ〜☆ 美緒ちゃん、捨て身だねぇ♪」
思い切り正解を当てるのは、ツインテ元気娘の佐牧三香だ。
どうやら彼女達は、ポスター貼りだけでなく、ライヴの会場整理も買って出たらしい。
まぁ、中学時代の優衣達が散々繰り広げた【無許可ゲリラ・ライヴ】で鍛えた彼女達にしてみれば、正規手続きで会場をしっかり押さえた【合法ライヴ】を整理する事など造作もないのだろう。
「…でも多分、途中でエロい事考えてたと思う」
表向き隠し切れた筈の美緒のよくぼー(笑)を、しっかり見抜いていた不思議系ドリルっ娘の八王子苺に、美緒が髪を下ろした時と似た雰囲気の黒髪な知的ガネっ娘、高梨楓子は静かな笑い、
「ステージの上でも優衣ちゃんに欲情するなんて、美緒さんらしくて大いに結構じゃありませんか♪」
この娘はこの娘で、美緒の【残念な方面の本質(笑)】をしっかり見抜いていたりする。
そして、ライヴは次のステージに進もうとしていた。
***********
和夏の「優衣、次の曲をお願い」という小言の指示で、MCは再び優衣に戻り、
「えっとねぇ〜。次は2曲立て続けにいっくよぉ〜♪ アーティストの名前は知らなくても、みんな一度は聴いたことあるんじゃないかな?」
演奏するのが楽しくてしょうがないと言った風情で優衣がオーバードライブをたっぷり効かせた分厚いリフを弾き始め、直ぐに里津のリズミカルなドラムがチェイスし始める。
そして、和夏のセカンド・ギターと美緒のベースが音に加わると同時に優衣が歌い始めたのは…
「I can't get no, I can't get no〜」
ロックの王道中の王道、結成以来解散した事もなく、ロック黎明期から最前線で活躍し、音楽雑誌の名前にまでなる"ロック・バンドの代名詞"と言ってもいいハイパー・ロックバンド、
【Rolling Stones】
の代表的なナンバーの一つ…
「Satisfaction!!」
優衣の見かけより遥かにパワフルな優衣のシャウトが、会場のボルテージを引き上げるっ!!
☆☆☆
【ローリングストーンズ(以下、ストーンズと省略)の代表曲は?】
と聞かれると、その活動期間の長さと比例した名曲の多さから、人によって選ぶ曲は様々だろう。
だけど、世間に最も知られた曲は?と聞かれれば、【Satisfaction】を挙げたとしても、そうそう反対する人は少ないんじゃないだろうか?
実際、"ストーンズの代表曲"という枠組みすら越えて、"ロックと言えば?"という問いに【サティスファクション】を挙げる人は大勢いる。
試しに"You Tube"等で最初のフレーズだけでも聴いてみると、音楽に興味のない方でも「なるほど…何処かで聴いたことあるような?」となる事が多いと思う。
それ程までに様々な度々メディアで使われているのだ。
そして優衣と美緒のツイン・ヴォーカルは、そんなスーパー・メジャー・ナンバーを、ツイン・ヴォーカル・ハーモニーで欝屈した若者の心情を籠め、歌いあげる!
***********
♪♪♪
くだらねぇ
くだらねぇ
満足なんてできやしねぇ
このブッ壊れた世界にさ
♪♪♪
重なるパンチの効いた二人のシャウト!
ギターとベースという"相棒"の音質の差と同様に、主である優衣と美緒の生声にも同じ質の違いがある。
実に3オクターブ半の声域を誇り、甘さを滲ませながらも力感を失わない優衣の声は、中域から高音までストレスなく綺麗に伸びて行く。
また、優衣の甘い声質のせいかリミット付近の高音領域では微妙に歪み、それがまたとない"味"に聴こえるのだ。
対して美緒は、その長身&グラマーな体格故か?
優衣に比べると声域は低く(ハスキーと言うほどではないが)、その分、厚みと艶を感じさせる声だ。
また、低くても伸びが失われず、肺活量を生かして長いタイミングで歌えるのも美緒の特徴だろう。
いや、それ以前にリズム楽器でありながら、メロディ・ラインのヴォーカルを歌うというのは想像以上に難しいのだ。
実際のバンドを見ていると、ベースがヴォーカルを兼任するバンドは、皆さんが思っている以上に少ない事に気付くだろう。
例えば、プロのヴォーカル兼任ベースの代表格が、かの《ザ・ビートルズ》の"ポール・マッカートニー"である事を考えれば、その難しさが伝わるだろうか?
元々左利きを矯正して両利きとなり(美緒は左右どちらでもベースを弾ける)、またベースとヴォーカルを兼任するなど、美緒は単に"パワーも腕もあるベーシスト"という枠組みを越え、ベースとギターを使いわける和夏とは別の意味で、恐ろしく器用な
【ユーティリティ・ベーシスト】
と言えそうだ。
☆☆☆
トラディショナル・ロックの名曲が終わると、息を尽かせず…
"Vooom! VroooM!!"
オールド・ハーレーダビッドソンの野太い【V型2気筒エンジンの排気音(Vツイン・エグゾースト・ノート)】が講堂に響き渡るっ!!
勿論それは本物のハーレーを持ち込んだのではなく、紡妓が相棒のキーボード【もっちー(YAMAHA Motif XF8)】で合成したシンセ・サウンドだったが…
それは、次のロック・サウンドの開幕を告げるエグゾースト・ノートだったっ!!
次回へと続く
皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m
なんか音楽ネタ書いてると自分的に妙にテンション盛り上がる暮灘です(^^;
前半は美緒、後半はストーンズが主役なエピソードは如何だったでしょうか?
いや、覚悟はしてるのですが…感想皆無というのは指標が無いので、客観的判断ができないんですよ(^^;
さて、次回もまたライヴですが、果たしてどんな曲が飛び出すやら…(^_^;)
楽しみにお待ち頂ければ幸いです(o^-’)b☆
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