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【芸能・社会】

海老蔵 やる気倍増 舞台復帰から1年心境語る

2012年7月13日 紙面から

「300以上あるセリフを覚えるだけでも大変」と「伊達の十役」の苦労を明かした市川海老蔵=東京・銀座のコートヤード・マリオット銀座東武ホテルで(坂本亜由理撮影)

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 人気歌舞伎俳優の市川海老蔵(34)が12日、東京・銀座のコートヤード・マリオット銀座東武ホテルで会見。昨年7月の舞台復帰から丸1年の心境や市川猿翁(72)との夢の初共演、来月の自身の公演などについて約1時間にわたって語った。  (本庄雅之)

◆猿翁の助言で浅葱色の裃姿

 公演の合間を縫ってスーツ姿で登場した海老蔵。在京の新聞各紙を対象にした会見は、昨年7月に復帰後初めて。

 まずは、来月の新橋演舞場公演(8月4−23日)について話した。夜に上演する「伊達の十役」は、同劇場で初演以来2年7カ月ぶりの再演。7代目団十郎が初演後途絶えていたが、3代目市川猿之助(現猿翁)が、1979(昭和54)年に164年ぶりに復活上演して、猿之助歌舞伎を代表する人気娯楽作に仕上げた。

 「もっと早くやって自分のものにしたかった。全部忘れちゃったよ」と笑いながらも、楽しみな様子。2日前に、「『伊達の十役』はキミっていうようなことを(猿翁さんが)おっしゃって下さった。これはヤバイぞ、と。死ぬ気でかかるものが一つ増えた」と明かした。

 基本的には初演と同じスタイルで取り組むという。10の役を50回近い早替わりで見せる趣向を最初に説明する「口上」では、猿翁の助言で浅葱色の裃(かみしも)を着ける。柿色しか着ない海老蔵の珍しいふん装になる。

 昼は、中村福助(51)が白菊丸と桜姫を演じる鶴屋南北の大作「桜姫東文章」で釣鐘権助を初役で務める。一夜の契りで子をなした桜姫を売り飛ばす色悪。「比較的役作りの必要ないのかな」と笑わせ、「ボクの持ってる一部分」と“訂正”してみせた。こちらは、父団十郎から教えを請う。

 「伊達の十役」初演の際、指導を仰いだ現猿翁とは、今月4日から新橋演舞場で共演中(29日まで)。療養が長いため共演が実現するとは思ってもみなかった。「ボクの中では、9代目団十郎、6代目菊五郎や2代目松緑さん、17代目勘三郎さんのような絶対共演できないあこがれの先輩と思っていた。猿翁のおじさまが指名して下さった」と大きな喜びを感じたという。「楼門五三桐」で連日舞台をともにしているが、「モノを作り続け、夢を追い掛け続けてきた男の世界をのぞかせていただいています」。

 一昨年末の飲酒トラブルの後、謹慎生活を経て昨年7月に舞台復帰。8月と今年2、4月をのぞいて大阪、名古屋など各地の劇場で歌舞伎公演に専念してきた。意識の変化については、「大分変わったとは思いますけど、何が変わったかというのは自分では分からない」と答えた。

 ただ、「新しいことに突っ走ってた時期があった。あのままやってたら、歌舞伎をもっとイヤになってたと思う。今は、もっとやりたいことが増えちゃった」と新たな意欲が芽生えた。具体的には歌舞伎十八番、新歌舞伎十八番への長期的な取り組みや父団十郎との創作活動などをあげた。近い将来のプランも、すでにありそうだ。

 また、謹慎生活を振り返り、「こういう言い方は語弊があるかもしれないけど、何でも栄養だと思う。必要じゃない経験は与えられない。残った命があるっていうことは、この体験をどう考えてボクが歌舞伎とどう取り組んでいくか、自然に考えること」と真剣な表情で語った。

 昨年3月11日には、都内の自宅で東日本大震災を体験した。夫人の小林麻央(29)は渋谷で買い物中だったそうで、すぐに安否を確認。自宅は被害を逃れたという。「謹慎中だったので、自分も何かしようと動こうとしたが、周りに止められ苦しかった。(支援は)継続していくことが大事だと思う。今は言えませんが、動いていることもあります」と話した。

 主演映画「出口のない海」で共演した香川照之改め市川中車(46)、長男の市川団子(8)の歌舞伎界入りについては、「大きな才能が梨園に入ることは、ありがたいこと」と歓迎。今月、中車と共演中の「将軍江戸を去る」には、徳川慶喜にふんした団十郎に、海老蔵が山岡鉄太郎役の中車を引き合わせる場面がある。「あのアツい場面は、今までと違った面白さを香川さんが運んできてくれた」と解説した。

 海老蔵が「義経千本桜 川連法眼館の場」(四ノ切)を初演する際、父ではなく自ら望んで猿之助から教わった縁が、今月の襲名舞台での共演につながった面がある。歌舞伎の歴史は、人の歴史であることを示している。海老蔵の暑い夏は、これから佳境に入る。

 ◆伊達の十役 仙台の伊達家のお家騒動を土台に、利害が対立したり周囲に絡む仁木弾正、高雄太夫、政岡、細川勝元ら10の役を海老蔵一人でほぼ休みなく演じる。早替わり、妖術、宙乗りなど娯楽性に富んだ作品。

 

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