第2話 契約
驚嘆と混乱の連続だった。
今日だけで僕は一生分のカオスを味わった気がするよ
気づいたら遊戯王(と思われる)世界に迷い込んでいて茫然自失。
混乱の渦中に居る僕に乗ってきたバスの消失という追撃。
なんとか気を持ち直し、行動しようとした矢先に現れた彼女との追走劇。
彼女の向かった先には何故か僕名義で借りられていたアパートと届いた荷物。
ここまででもお腹いっぱいだよ。
極めつけには入った部屋の中には赤毛の彼女が座っており、彼女が遊戯王カードの中に存在するモンスターの一人だと気づかされた。
《Tour Guide From the Underworld》
直訳するとさしずめ《地獄のツアーガイド》ってとこか。
気を取り直した僕はすぐに彼女問いた。
「おいっ!いったい何がどうなっているんだよ!?全部説明してくれっ!」
怒号と共に彼女に詰め寄る。そんな僕の様子なんてどこ吹く風のように彼女の表情にはなんら変化はない。先ほどと同じく薄い笑みを浮かべているだけだ。
そんな彼女の態度に僕はキレた。現状の理不尽さや疲れがここで一気に噴出した。
(何故僕がこんな目に合わなければならないっ!!)
彼女の肩を掴もうとしたその瞬間、横からなにか黒い影が突っ込んできた。
完全な不意打ち。格闘経験なんてない僕には避けられるはずがない。もしあったとしてもこんな怒り心頭で周りが見えていない状態での不意打ちなんて避けられないだろうけど。
「ぐふっ!!」
脇腹からの衝撃で無様に吹き飛ぶ。ゴツンと嫌な音をたてて壁に頭を強打してしまった。
「いってぇええええええっ!!頭がぁああああああああああっ!!」
頭を押さえてゴロゴロ床を転がる。まさかこんな漫画みたいなリアクションをとるとは自分でも馬鹿みたいだと思うけどマジで痛い。洒落にならん。
痛みで涙目になりながらも先ほど僕に突っ込んできた塊を確認する。
そこには三つ目の毛むくじゃらが立っていた。
「くぅ・・・、コイツは・・・クリッターか?」
正直いきなり目の前に現れたら吃驚して叫んでいただろうが、ここ数時間の出来事で頭が麻痺していたことと、なにより頭に響く痛みのせいで目の前の怪物に普段の反応がとれないよ。
ツアーガイドが立ちあがり、クリッターになにかを囁いた。するとどういうことだろうか、クリッターの姿が闇に消えていく。
この女、まさか悪魔を呼び出すことができるのか・・・?
正直納得できないが(するつもりもないけど)、痛みのおかげで正気を取り戻した僕は再び彼女に問う。
「教えてくれ、いったい俺に何が起きたのかを」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
彼女の話を要約すると(彼女の使っている言語は分からなかったか何故か意味や意図だけは理解できた)彼女は普段あの例のバスに乗って気の向くまま12個の異世界を渡り巡っているらしいのだが、世界移動の際に見たこともない次元の狭間を発見したらしい。好奇心からその狭間に侵入し、辿りついたのが僕の住む世界だったというわけだ。しかしながらその次元の狭間はどうにも不安定で、早めに戻ろうとした折に僕が乗車。僕を乗せたまま再び狭間に入り、この世界にやってきたとの話。
このアパートや届いた荷物に関しては、本来この世界にはあり得ない僕という異分子がやってきた時に発生した情報の波によって、一瞬世界が揺らぎ、再構成された時に「僕」がこの世界に取り込まれた結果の一部ではないかということだ。
なるほど、全く解らん。
いやいやつまりはまたあのバスに乗ってその次元の狭間に潜れば元の世界に戻れるんだな。
なんだ、これで一件落着じゃまいか。
そんなことを考えてた時期が僕にもありました。
彼女の話の端々から嫌な予感がしていたけど、どうやら僕らがこの世界に移動を完了した際、その僕の世界と繋がっていた次元の狭間が消滅したそうな。
「そんな・・・、嘘だろ・・・」
もう元の世界に帰れないかもしれない。まずはそんな絶望感が僕を満たし、次にはこの世界に僕を連れてきた彼女に怒りが沸き、その矛先を向けた。
何故僕を連れてきたのか
そんな僕の問いに帰ってきたのは至極簡単な答え。
僕が彼女を呼び止め、勝手にバスに乗車したから
ただそれだけの事。
それゆえに僕はもう何も言えなかった。
だってこれは僕の完全な自業自得だ。
彼女はなにもしていない。
いや、なにもしなかったという方が正しいけど・・・。
兎にも角にも元の世界に帰る為には再びその次元の狭間が出現するのを待つしか方法がないらしい。
そこで僕は狭間の確認とその際に僕を元の世界まで連れて行って欲しいと願い出だのだが彼女の反応はいまいち芳しくない。
考えてみれば彼女には僕の頼みを受けてもなんのメリットもない。
彼女からしてみれば僕は勝手に付いてきて勝手に帰りたがっているだけ。
字面だけ見れば子供のわがままとなんら変わりない
でも僕には彼女しか頼れる人はいないんだ。
「頼む!!何でもするから僕の願いを聞いてほしい。このとおりだ!!」
誠心誠意の土下座をする。頭の低さといい角度といい非の打ちどころのない完璧なフォームのはずだ。芸術点、技術点と共に過去最高点を叩きだしたことは間違いないだろう。
それ見ろ、この土下座の前では彼女も僕の頼みを聞かざるを得ないだr・・・・
ちらりと頭を上げ覗いてみるとそこにはなにやら考え事をして上の空な彼女の姿。
僕の土下座なんて欠片も見ていない。
世間はさぁ、冷てぇよなぁ・・・
僕がこっそり涙を流していると彼女が思考の海から帰ってきたようだ。
僕を見てニヤリと笑う。
良い答えが聞けるといいけど
~~~~~~~~~~~~~
結論から言おう。
僕の頼みを聞いてくれるようだ。
やったね。
首の皮一枚繋がった思いだ。
ただし条件を付けられた。
一つ、僕の精霊となること。ただし僕の精霊といっても彼女は自由に行動する権利を持つ。
一つ、狭間の確認調査は彼女の気が向いた時のみとすること。
一つ、毎日お菓子を献上すること。
何故僕の精霊になりたいのかと問うたところ、なんでも彼女が今現在僕らのいる現実世界に現界できるのは一定時間のみだということだ。しかしとある特定個人の精霊として契約することで、契約者と自身の存在を霊的なパスで繋ぐことにより、契約中は現実世界に現界し続けることが可能となるらしい。一度ゆっくりと現実世界の人々を見物したかったそうだ。見物の前に「悪戯して」というワードが聞こえたのはきっと僕の気のせいだと思う。
2つ目の条件はただ面倒くさいからだそうだ。
無理を言って頼んでいる以上、このことに関して僕は強いことなんて言えるわけがないから了承するしかない。
3つ目に関してはもはや何も言うまい。というか突っ込んではいけない気がする。
彼女がバッグから取り出した古びれた洋紙皮に謎の文字が浮かび上がる。
僕は一縷の望みを賭けた真剣な顔で。
彼女は先ほどと変わらぬ笑みで・
そこに互いの名前と血印を。
この日、僕は悪魔と契約を交わした。
正直設定がテキトー過ぎて突っ込まれても返答できないレベル。
ただガイドの話に出てきた12個の異世界というのは我らが空気、三沢さんの発言から。因みにガイドさんはアニメで万丈目たちが飛ばされた地獄のような世界がホームグラウンドの設定。
※話数修正しました。なぜ間違ったんだろう
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