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原作組みとの会合はまだまだ遠い・・・
第1話 おいでませ異世界
「ハックション!!」

くしゃみと共に目が覚める。

車内は空調設備が効いているのか過ごしやすい温度なのだけど、この寒気は・・・。
やはり昨日濡れた服のまま寝たのはまずかったか。

時刻を見ようと携帯電話を取り出したけど、液晶画面はただ黒く、眠気まなこの僕が映っているだけだ。

電池切れ?充電は昨日ちゃんとした覚えがあるんだけどなぁ。

とりあえず起きよう。

仕切りのカーテンを開け、周りを見渡してみて初めて気付いたが僕以外誰もいないじゃないか。バスのエンジン音も聞こえないし振動もしていないということはもう目的地に到着したのだろうか。

道理で静かだと思った。

「とりあえず濡れた服を着替えますか・・・」

服を着替え終え、窓から外を眺めてみると、そこには特筆すべきこともない街並みが広がっている。まぁ僕の地元よりはだいぶ栄えているようだけど。
どうやら駅前のロータリーに停車しているようだが、まだ朝早い時間帯のためかほとんど人は見えない。せいぜい通勤中であろうスーツを着たサラリーマンがポツポツとみえるくらいだ。

やはり到着してはいるようだ。これはもう勝手に出ていってよいのだろうか・・・。

あっ、そういや僕まだ乗車券渡してなかった。誰もいないしとりあえず運転席に置いておこう。事前にお金を払っているのだからいいよね?

荷物をまとめ外に出てみる。ずっと座っていたため背筋が痛い。
とりあえず軽く背伸びでもしようかと若干目線を上げる

その時、目の前の駅名が目に入った。

『童実野駅』

・・・・・・・・あれ?

いや、落ち着くんだ僕。

もう一度落ち着いて見てみよう。そうすればきっとそこには・・・・

『童実野駅』

変わらない標識がそこにあった

どういうことだろう。

到着先は○○駅のはずじゃなかったか。

まだ経路の途中なのではないのか?という考えに対して、僕の乗ったバスは○○駅までの直行便だったはずということを思い出し、その可能性をすぐに否定する。

駅前にあった案内地図まで走り、現状把握に努める。

地図を見てもそこには見慣れぬ地名ばかり。分かったことは現在地が童実野町であるということと、とある企業の本社があるということだ。

童実野町なんて聞いたことないよ。いや、聞いたことはあるがそれは漫画の中のことであって現実のことじゃない。

ましてや案内図に表記されていたKC本社っていうのも海馬コーポレーションの略称なわけがないじゃないk・・・

自分の考えに呆れながら天を仰いだ時に見てしまった。
でかでかと宣伝されている海馬ランドなるテーマパークの広告板を。

マジですか・・・・・。

フリーズ

再起動までしばらくお待ちください。


~~~~~~~~~~~~~~~~~

やぁただいま、みんな。

混乱の渦中から戻ってきたよ。
いや、まだ混乱しているんだがいかんせん行動しなければ現状は打開できない。

とりあえずバスだ!バスに戻ろう!
あのバスに乗ってここまで来たのだから、帰ることもできるはずだ。

そう考え、バスが停車している方向に振り返り僕はまた固まってしまった。


バ ス が い な い


これはいったいどういうことなんだ・・・。
僕の現在地とバスの停車位置はそれほど離れていない。
せいぜい20メートル程度だったはずだ。
誰かがバスに近づいたならば気配でわかると思うし、なによりエンジン音で気づけるはずだ。

しかし現在、どんなに目を見開こうともそこにバスの姿はない。
周囲を見渡してもその影すら見つからない。

オワタ。もう無理です。僕にはなんの解決策も思い浮かびません。完全に詰みました。

その場で呆然と立ち尽くす。

増えてきた通勤中のサラリーマンらがそんな僕の様子を怪訝な顔で見ている。

どうすればいい?どうすればいいんだ?

頭がごっちゃになってわけもわからず走り出す。

とにかくその場に居たくなかった。

周りの全てが僕には異物に見えた。

周りの全てが僕を異物だと見ていた。

そんな気がしたんだ。

だから逃げだしたんだ。

━━━━何から?

━━━━世界から?

逃げられないことなんて理解(わか)っているのに。


~~~~~~~~~~~~


気が付いたら公園のベンチに座っていた。

どうやって僕はここまで来たのだろうか。

どうして僕はここにいるのだろうか。

僕の向かいのベンチにいるおじさんは何故こんな昼間から公園で寝ているのだろうか。

仕事行かなくていいのかな

まさか会社クビになったのを家族に言いだせなくて公園で時間を潰しているとか・・・?

テンプレ乙!

ふぅ・・・。

いい加減現実逃避はやめよう。今考えるべき事はこれからどうするかということだ。

とは言っても本当にどうしようか。
僅かな可能性を願って公衆電話から自宅にかけたが繋がらなかったし、所持金は多いとも言えない。通帳はあるけどこの世界で使えるとも思えないし、この手持ち金が尽きるまでになんとかしなければならない。

やっぱり泊まり込みのアルバイトを探すのが利口かな。

雇ってもらえるか微妙なところだが今はこれしかすることがない。とりあえず行動に移そうと重い腰を上げ、公園の出口へ向かう

その時見覚えのある少女が向かい道路の角に消えるのを視界の端に捉えた。
そう、つい昨日見た赤毛の少女だ。

「っつ!?彼女はまさかっ!?」

走る。走る。

彼女はあのバスに乗っていたのだからこのわけのわからない状況に関して、なんらかの情報を持っている可能性が高い!ここで絶対に見逃すわけにはいかない。

「待って!待ってくれぇええええええええええええ!!」

なんか昨日も似たようなこと叫びながら走ったな・・・ってだからこんな馬鹿なこと考えている場合じゃないんだって!!

僕の声が聞こえていないのか赤毛の彼女はすいすいと歩いていく。

おかしい。

彼女は傍から見ると普通に歩いているように見える。僕は全速力で走っている。
それなのに全然追いつけない。

僕との距離が近くなる度、彼女は唐突に角を曲がり、僕が彼女に続き曲がると彼女の姿はすでに遥か前方に移動している。

ちょうど僕が追跡できるギリギリの距離。無論これはぼくにとって幸いなことには違いないけど、まるでどこかに誘導されているような・・・そんな感覚だ。

そんな奇妙な鬼ごっこ、もとい追跡劇は突然終わりを迎えた。
再び角を曲がった彼女を追いかけると、そこには誰もいなかったのだ

「嘘だろ・・・。見失ったのか・・・!?」

絶望が再び僕に襲いかかる。藁にも縋る思いで辺りを見渡す。
やばい、泣きそうだよ。というかもう半泣きだよ・・・。

そんな時、突然背後から声を掛けられた。

「おや、アンタが今日からここに越してくるっていうアキラ君かい?お昼前にはここに着くって聞いていたから心配していたんだけどちゃんと来れたようだね。」

振り返るとそこには見るからに快活なおばちゃんがいた。どうやら向かいのアパートから出てきたようd・・・って、え?なんで僕の名前を知っているんです?えっ?あれっ?

「荷物はもう届いているよ。今はおばちゃんの部屋に置いてあるからさっさと持っていっておくれ。あぁ、アキラ君の部屋は2階の一番奥だからね。はいこれ鍵さね。なくさないよう気をつけるんだよ」

「えっ?あの・・・えっ?」

状況を把握できない。
流されるままにおばちゃんに連れていかれ、届いたという荷物の前へ。

「なっ、なんで僕の荷物がここにあるんだっ!?」

そこには何故か僕が前日に送った荷物があった。

「なんでってアンタ、さっき言ったじゃないか。アキラ君の到着より先に荷物が届いたから私の部屋で預かってるって。話聞いてなかったのかい?」

「いや、そういう意味じゃなくてですね・・・え~っとその・・・」

どう答えればいいんだ。というか状況が全く理解できない。

「ほらっ、もういいからさっさと持っていっておくれ。うちは部屋が狭いんだから邪魔になるんだよ」

あっという間に部屋から追い出される。

とりあえず自分の部屋とやらに行こう。落ち着いて考えられる場所が必要だ。

カンカンと音を立てながら階段を上り、おばちゃんに言われた2階奥まで移動。
扉を開けて部屋に入り、一息つこう・・・としてできなかった。

なぜならすでに先客がいたからだ。

「きっ、キミはっ!!」

ぴっちりきまったレディーススーツに髑髏の装飾が付いた帽子とバッグ。
先ほどまで追跡していた赤毛の少女が薄い笑みを浮かべながらそこに居た。

思いがけないことの連続に焦り、僕は荷物を落としてしまい床に中身が散乱する。

そんな僕の様子を見てさらに笑みを深めた彼女は唐突に指をさす
訳も分からず彼女の指した先を目で追ってしまう。

そこにはたった今ぶちまけてしまった荷物の中身、遊戯王カードが散乱している。
そしてその中で彼女が指しているものを見つけた。何を指しているのか分かった。

彼女の指さす先にあったのは1枚のカード。


《Tour Guide From the Underworld》


彼女が描かれているカードだった。
Tour Guide From the Underworld

効果モンスター 
星3/闇属性/悪魔族/攻1000/守 600
このカードが召喚に成功した時、自分の手札またはデッキから
レベル3の悪魔族モンスター1体を特殊召喚する事ができる。
この効果で特殊召喚した効果モンスターの効果は無効化され、シンクロ素材とする事はできない。

遊戯王カードwikiより引用。

地獄のツアーガイドと訳されることが多いようなので、本作でもこの訳で。

海外先行カードで日本にくるのは来年の9月。待ちきれません


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