ソウルの地下鉄1号線鍾閣駅近くにある鍾路の路地裏に入ると、1軒の老舗韓国料理店がある。1904年に開業してから110年もの間、客足が途絶えない「里門ソルロンタン」だ。牛の各部位の骨と肉を17時間ほどじっくり煮込んで作ったソルロンタン(7000ウォン=約500円)は、これまで多くの名士の舌をうならさせてきた。今では日本人観光客の定番グルメスポットとして知られ、1日に500-600食が売れるという。
農林水産食品部(省に相当)と韓食財団は11日、50年以上の歴史を持つ韓国料理店100カ所を紹介する冊子『韓国人が愛する老舗の料理店』を発行した。ただし、冊子への掲載を拒んだ店は除かれている。
冊子に掲載された店の大半は、ソルロンタン、クッパ(スープにご飯を入れた料理)、冷麺、ビビンバなど庶民的な料理が主なメニューになっている。庶民の空腹を満たす店が、長年愛され続けているというわけだ。
100店のうち、里門ソルロンタンに次いで最も歴史が長い店は、全羅南道羅州市にあるコムタン(牛の内臓煮込みスープ)とゆで肉の専門店「ハヤンチプ」(1910年開業)だ。19年に開業した釜山市の「ネホ冷麺」は、6・25戦争(朝鮮戦争)の際に故郷を離れ避難した失郷民の心を癒す場となり、24年にオープンした蔚山市の「ハムヤンチプ」は4代にわたり変わらぬビビンバの味を守り続けている。ネホ冷麺のイ・チュンボク社長は「3代にわたり受け継いでいる北朝鮮式冷麺の味を求め、多くの失郷民が訪れる」と語った。
老舗店100店の所在地を見ると、ソウル市が28店で最も多く、次いで全羅南道が12店、釜山市が11店、慶尚南道が9店などとなっている。韓食財団の関係者は「おいしい店や老舗店といえば全羅道が一番多いように思えるが、(人口が相対的に少なく)商圏が形成されず、老舗店は意外に少ない」と説明した。
冊子は間もなく市販される予定で、「韓食世界化」のウェブサイトでも電子版を閲覧できる。