つながる:ソーシャルメディアと記者 ネットと新聞の補完関係=高原克行
毎日新聞 2012年06月30日 東京朝刊
情報の拡散力に優れるソーシャルメディアと、情報の一覧・記録性に優れる新聞の融合。ネットと紙の補完関係の具体化。これが首都圏タブロイド紙「MAINICHI RT」のミッションだ。
そこで2年前の創刊から、ネットで読まれたランキング順で掲載記事を選んでいる。記事への意見をツイッターで募り、転載が承諾されたものを載せ続けてもいる。その結果、発行日の前日か2日前のニュースと、それがどう読まれたかが同時に読める新聞になった。
ただ、融合、補完などと言いながら、紙がネットを一方的に利用している傾向がまだ強い。「ネットを取材源の一つにしただけ」「ネットの拡散力に乗ろうとしているだけ」などと言われても返す言葉がない。外見的な姿は「ネットにすり寄るマスコミ」なのかもしれない。
ところが先月末、ネット側から紙への働きかけが起きた。「制度を改正するために個人を攻撃する必要はありません!緊急意見広告プロジェクト」である。
呼びかけ人はツイッターのフォロワーを9000人以上も持つ匿名の個人。人気芸人が母親の生活保護受給で国会議員から批判されたことを契機に制度見直しが始まったという事態に憤り、プロジェクト名と同じコピーを大書した意見広告を全国紙に載せようと、ツイッターで寄付を呼びかけた結果、半月ほどで500万円以上集まったという。有名人がネットを通じて費用を集めた例はあるが、無名人による事例は他に聞かない。