浜松市中区のマンション屋上から落ちて死亡した市立曳馬中学校二年の男子生徒(13)をめぐり、石川和男校長が保護者集会で「いじめがあったと思う」と発言したことが分かった。市教委は取材に「死との因果関係が認められるものは確認できていない」と、いじめが死につながったとの認識は否定した。
集会は、亡くなった十六日後の六月二十八日、学校が二年生の保護者向けに開いた。
学校によると、男子生徒は四月、自宅近くで五〜六人の同級生らに囲まれ、自転車を蹴られたり、体を押されたりした。周辺住民が目撃して注意すると同級生らは逃げた。これを知った関係者が同級生らを指導した。
学校がこうした経緯を把握したのは男子生徒の死後。「いじめがあったのではないか」と遺族側の指摘を受け、関係者から事情を聴いて確認した。その後、同じクラスや部活の生徒らに聞き取りや記名式のアンケートをしたが「新たな事実は見当たらなかった」(市教委)という。
森貴明教頭は取材に「(関係者から)『四月の件は終わったことで、生徒の死亡とは関係がない』と言われた。学校としても、死には直接結びつかないと考えている」と説明。しかし、遺族側が真相究明を求める中、無記名調査を検討する考えも示した。
学校は当初、報道陣に「いじめは確認されていない」と説明していた。集会に出席した保護者の一人は取材に「いじめを知っている子どもは、学校がいじめを否定するのを見て不信感を持っていた」と不満を漏らした。
◆県教委 いじめ調査徹底を
大津市で市立中学二年の男子生徒が自殺した問題を受け、静岡県教委は近く、静岡、浜松の両政令市を除く県内三十三市町の全ての公立小中学校四百九十七校にいじめの実態調査を徹底するよう文書で通知する。県教委への取材で分かった。
大津市の問題をめぐっては、全校アンケートで「自殺の練習をさせられていた」などの回答が寄せられていたことが発覚。市教委や学校の対応に批判が集まっている。
今回の調査は各市町教委に方法は任せるが、いじめの被害者、加害者の聞き取りや、解決済みとされる事案の再調査などを実施。日常の児童生徒の観察を強化する狙いがある。
県教委はこれまでも定期的に県内の小中学校を対象にいじめの実態を調査してきた。その結果、いじめの認知件数は二〇〇八年の四千五百三十件から減り続け、一〇年度は三千二百十一件となった。
ただ一〇年度も四割近くが解決しておらず、教員が気付かない潜在的ないじめが多いのが実情。県教委の担当者は「いじめはどの学校でも、クラスでも起こり得る。原点に立ち返り、個々の事例をもう一度見直すことが必要」と指摘する。
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