日本−オーストラリア 後半、チーム3点目のゴールを決め喜ぶ沢(中)(畦地巧輝撮影)
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◇キリンチャレンジカップ2012 日本3−0オーストラリア
ロンドン五輪で初の金メダルを狙うなでしこジャパンは11日、東京・国立競技場で壮行試合を行い、オーストラリアに3−0で快勝した。1−0で迎えた前半ロスタイムに、エースのFW大儀見優季(24)=ポツダム=が追加点を決め、自身3度目の国際Aマッチ4試合連続ゴールを奪取。後半にはMF沢穂希(33)=INAC神戸=が昨年のワールドカップ(W杯)決勝戦以来の得点を決め、五輪本大会へ大きく弾みをつけた。一方、男子の壮行試合では、後半ロスタイムに追い付かれ、日本はニュージーランドと1−1の引き分けに終わった。
吸い寄せられるようにボールが足元へと来た。ゴール前の混戦。沢に迷いはなかった。振り幅小さいコンパクトな右足キック。相手GKは反応しきれず、ゴールネットが揺れた。後半13分、日本中が待ちわびた沢の復活ゴールが生まれた。
昨年7月17日、W杯ドイツ大会決勝の米国戦で決めて以来、実に約1年ぶりの得点だった。「久しぶりでうれしかった。それも国立(競技場)で。サッカー選手として国立で決めるのはなかなかないので」。日の丸を背負って、国立では2007年8月12日のタイ戦以来、実に1795日ぶりのゴールとなった。
「ピークのときよりはまだだけど、本当に自信が戻ってきた」と言う。確かにこの日は再三攻め上がり、相手ゴールを脅かした。チーム2点目も沢が危機察知能力を発揮し、相手ボールを奪ったのがきっかけ。佐々木監督も「昨日(10日)の練習で間とか、相手のプレッシャーへの感覚が戻ってきた」と納得顔だ。
「夢は絶対に逃げていかない」。沢が大事にしている言葉である。良性発作性頭位めまい症を発症。時間が経過すれば全治するケガではなく、原因不明で、再発の恐れもある病との闘いに心は折れかけた。だが、ロンドン五輪の金メダルという夢を抱き続け、ここまで来た。あきらめたら最後。「グッと来る言葉」と言い、今も前を見ている。
これまではスタッフやチームメートにも「顔色が違う」「顔色が悪い」と言われてきたという。不安な気持ちから失敗を恐れ、われを見失ったこともあった。今は「本当に楽しんでできている」。そんな状況でロンドン五輪の壮行試合で待望のゴールが生まれた。なでしこジャパンの大黒柱は最高の形で日本を飛び立つ。 (島田明)
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