T.
「またか…」
俺は夢の世界へとダイブしていた。 淡く輝く青い紋様が辺りを取り巻き、その下に白い地面が見えている。 俺はゆっくりと目を瞑ると、降下する感覚が風と共に駆け抜けた。 Caerulaと一つになってからというもの、俺は以前にも増して、よく寝るようにになった。 巨大化の反動らしい。 そして、よく夢をみるようにもなった。 Caerulaが絶対現れて、なにやら喋る夢だ。 夢を見るのは眠りが浅いってことじゃないのか? とか思うのだけど…彼との夢では、そんな夢ばかりだ。 目を開けると、真っ白な空間にポツリとCaerulaが座っていた。 夢の中でこんなに意識がはっきりしているのも、彼と一つになってからだった。 今日はいったい…何を喋るんだろう? ある意味期待しながらCaerulaの第一声に耳を傾ける。 『桜が…咲いたよね?』 「? …うん」 なんでそんなこと聞くんだろう? 「それが…どうかした?」 『桜はね…前ぶれなんだ』 意味深な言葉を呟いて、Caerulaは目を閉じた。 そして、 『春陽なら…上手くやれるさ』 続けてそう言った後、俺の夢は途切れた。 -------------------------------------------------------------------------------- 「にゃ!?」 目が覚めると、最初に見えたのは少しボヤけた天井だった。 もう…朝か。 今日も何気無い一日が始まる。 特に…何をするでもない。 特に…何をしなければならないこともない。 いたって普通な日常及び朝。 とはいえ…いつもと違う…というか、ほんの些細な違いはあった。 夢の内容が思い出せないのだ。 これは…珍しい事だ。 でも…所詮は“些細”は“些細”。 そんな事…本当に些細な違い…。 俺は背伸びをすると、そそくさと部屋を出た。 バタンと、ドアが閉まる音がこだました。 誰も居ない家(マンションだけど)というのはこんなにも静かなのか…と慣れたはずの空気に俺は驚いていた。 平凡とは言い難い現状。 …両親の自殺。 自分の自殺未遂。 他人の死から自分の臨死体験まで…狂った負の体験のオンパレード。 その重みを、その反動を…俺は感じていた…のかもしれない。 多分違うけど。 ふと、時計を見ると、針は七時五十分を回っていた。 「……もうこんな時間か」 世間一般でいう…銀行員の父親と弁護士の母親とその高校生の息子という円満な家庭が崩壊してからというもの、 死ぬことから取り残された俺は一人で暮らすことを余儀なくされている。 両親の保険金と貯金、バイト、親族の仕送り…それらで、今の所は不自由の無い生活をおくることができる。 いずれは住居は変えるだろうけど…。 そんな…ありがたい現実に対し、俺はそれを何とも無いと思ってしまっている。 と、いえば語弊があるかもしれないが。 顔を洗い、タオルで滴を拭き取る。 そんな…今の今行った下らない日常の行動と同一視しているのだ。 両親の死も何もかも。 「だからどーという訳じゃないけど……」 例えば…凸凹で、進みづらい道と平で進みやすい道があったとする。 普通の人はそれを進むのは困難で両者に差を感じるのだろう。 しかし…俺の場合、凸凹だろうが普通の道だろうが、同じなのだ。 外見では矛盾しているが…自分から見れば、それは概念では同一。 というわけ。 なんら差もない。 ただの道と見える。 たとえ俺の目の前で大量殺人が起ころうが、新手のスタンド使いが現れようが、同じ。 何にでも刺激が同一。 今の俺にとっては…。 それが、Caerulaとの合体が原因なのは明白なのだけど、別にそれ自体どうということではない。 楽しみのない人生に意味は無いという言葉があった気がする。 たしかに…無いといえば無い。 何せ全てが同一なのだから。 つっても、例外は勿論ある。食事…セックス…友達…巨大化…殺人。 まだまだあるかもしれない。俺の“同一視してしまう感覚”を楽しませる何かは…。 いや…新手のスタンド使いが現れたら…楽しいな…。 -------------------------------------------------------------------------------- テーブルにコップと陶器の皿を並べた。 市販のサンドイッチを皿にのせ、コップに牛乳を注ぐ。 椅子に腰を下ろし、テレビをつける。 「ニュース見なきゃ…」 朝はそう決めているから。 リモコンでチャンネルを切り替える。 余計な事をやらないNH系のニュースが俺のお気に入り。 余計な占いとか…特集とかは…朝は不必要なのだ。 格好つけて言うならば必要な情報の入手の確率とスピードが下がる、というわけ。 サントイッチを口に運びながら…ニュースに目を向け、耳を傾ける。 『───地震による被害は先日発生した局地型地震と──』 ん?……昨日、地震があったのか。 気付かなかったな…。 『──震源地は青羽市近郊を周辺とした局地的な──』 「………」 まさかな…。 「………」 -------------------------------------------------------------------------------- ついテレビを見ていたから、もう時間がない。 急いで学校の支度をする。 そろそろ幼馴染にして、親友の竜乃助が来てしまう。 制服に着替え、ネクタイをしめて…。 「春樹ー!」 「あ〜今行く〜」 インターホンと同時に竜乃助の呼ぶ声が聞こえる。 ドアを開けるときに、A4サイズの封筒が郵便受けに入っているのが見えたけど、 もしかして、そう、いろいろなモノが脳裏によぎった。 しかしながら、急いでいたのでそのまま放置して俺は家を出た。
…俺の“普通”の“日常”は両親を失ったとしても何も変わりはしなかった…。 -------------------------------------------------------------------------------- 市立青羽高校。
俺の通う高校だ。 いたって普通、普通すぎるただの普通科高校。 制服は襟と袖にラインが入った白いシャツに青と黒の縞のネクタイ。 それに黒いズボンだ。 俺はこの制服をえらく気に入っている。 校則がゆるい為にどんな格好をしてもいいんだけど…、俺はいたって“普通”な格好をしている。 だからどーということも無いが…。 兎に角…俺はこの学校の制服が大好きだ。
放課後、十五時四十分ごろ。
掃除をしていない掃除の時間の途中で竜乃助と、そんな…何でもない話をしていると…。 あまり聞いていなかったからか、竜乃助がグラウンドを見て呟いた。 二階からはグラウンドかまるまる見渡せる。 「春陽、あれさー」 「何?」 竜乃助の指差した先には、この学校とは違う制服の生徒が何人かいた。 「どこの学校だ?」 「あ〜たしか…典麗じゃない?」 俺は自分の学校の制服が好きな故に、他校のモノと比べる癖がある。 いわゆる制服オタクな訳で、近隣の学校ならば何でも分かる。 典麗学園は超々々…超金持ちが通う私立の学校だ。 上流階級及び、資産家など、何ともいかついやつらが市外からも数多く通っているとか。 中学、高校、大学と昇降機式に卒業できるらしい。 何でも施設や教育環境が世界トップクラスだとか…。 まっ…俺ん所みたいな庶民とは格が違う学校だ。 そもそも比べるのが間違っているのだが…。 「なんで典麗の生徒がいるんだろー…???」 「試合とかじゃねぇ?」 「あ〜」 どうやら陸上部の試合らしい。 トラックに白い線を引いている。 わざわざこんな学校でやらなくても…と思うけど…。 何かしたらの理由があるんだろうが…。 「まっ関係無いか…制服は可愛いけどな〜」 箒を竜乃助に渡して、背伸びをする。 その動作と一緒に「あ〜そ〜かぃ」という落胆の声が聞こえた。 竜乃助は制服とかにまったく興味が無いから、俺の話をメンドいとか言って…聞いてくれやしない。 いつも、俺を見てぽゎ〜っとしてるだけだ。 そんなに見つめて何が楽しいのやら…。 いや…馬鹿にしてるのかな? う〜ん……? 「まっ…いっか」 考えるのを止めて、俺はグラウンドを再び目を向けた。 竜乃助が箒を片付けに行く間、制服の観察と洒落こもうと思う。 典麗の制服は水色のシャツに、灰色のズボンだ。ネクタイは赤。 「あれはあれでやっぱ可愛いよな…」 ジーッと制服を見つめていると、一人の生徒が振り向いた。 「……なんだ?」 思わず目があってしまう。 耳が隠れる位の髪のその生徒は俺の方を…じっと見つめていた。 別に…関係ないはずなのに…。 いや…可能性は限りなく零と等しいというのに…。 俺の頭の中に一つの考えが浮かんだ。 「………」 まさかね。 -------------------------------------------------------------------------------- その日は、竜乃助は部活で、水泳部を休み続けている俺はいつも通り、一人で帰路につくつもりだった。 「部活行けよ。俺がいないときにお前になんかあったらどうすんだよ」 と過保護な竜乃助が五月蝿かったけど、 「俺は女の子じゃないから大丈夫だよ」 と軽くスルーした。 そもそも…俺は襲われたら…そいつを確実に殺すから…大丈夫だ。 もちろん竜乃助にはそんな事は言えない。 友達や親しい人以外の人間は俺にとって虫けらと同一だとは。 別に急ぐ理由が見つからないから、俺はゆっくり駐輪場まで足を進めた。 その途中…、季節は夏…というのに、あの桜がまだ咲き続けていた。 ここまでくると、不気味なもんだ。 いったいどんな理由があって、こんなにも…。 「あの…」 ? 後ろで声がする。 低い…けど、竜乃助の低さとは違う…何か絹のようなしなやかな声。 俺が振り向くと、そこには陸上のユニフォームを着た生徒が立っていた。 …高校生で童顔の俺が言うのも何だが…この生徒は何とも女顔な男子だった。 童顔……。
………。
自分のトラウマに自分でスイッチを押してしまった。 こんなデカい(竜乃助よりかはもちろん小さいけど)のに、俺は童顔…。 もっと顔が大人っぽければ良いのに……。 「?」 俺の悩みなんて、知るよしもなく、目の前の男子は首を傾げた。 そういや…この人、俺に声かけたんだっけ。 少し間をあけて、気持をしきりなおした。 「…何ですか?」 ちょっと不自然に時間が空きすぎた…。 でもこの人は気にもかけず淡々と会話を繋げた。 「ちょっと、確認したかっただけなんで、もう結構です」 は? 意味深な言葉だった。 けど、その前に…この人は…結構な性格をしていらっしゃると…感じた。 人の事は言えない、そう断言はできるが…、この人もなかなか。 「あ…そーっすか」 余計に関わりたくないな…。 「じゃ…僕はこれで」 わざとらしく“僕”と一人称を変えて、無理矢理立ち去ろうとすると、彼も。 「あぁ…では僕も」 お互いに背を向けて、歩き出す。 「……じゃあまた」 そう…彼が呟いた。 「?」 振り向くと、ゆっくりと歩く後ろ姿が見えた。 「いったい何なんだよ…?」 後には、ただ、俺と、舞い散る桜の花びらが残された。 ソレガハジマリダッタ。
-------------------------------------------------------------------------------- 矛盾な季節。
矛盾だらけの質問。
矛盾、矛盾、矛盾。
儚くも散っていくのに、消える事がない絶対的な存在価値。
それこそ矛盾。
否、花は生殖器であり、美しさは飾り。
否、それは人の主観的な一概。
否、それこそ矛盾。
矛盾無くして生きる存在など皆無。
生存=矛盾。
我等が王とて矛盾の化身也。
青が風とて、
桜が桜とて、
黒が深淵とて、
白が絶対零度とて…。
全ては矛盾を抱いた存在。
それが、どうして世界を変えようか…。 |
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2010/04/13(Tue) 20:51:25 no.134 |
□ KING's第2話"Cerasus" ( w / - ) |
U. 凛と駆け抜けてゆけ、後ろなんて見なくていい。 ただ、吹き荒ぶ、あらぶる風のように。
例えるならば、それは世界の異物。 例えるならば、それは世界に対する危険因子(リスファクター) 例えるならば、それは反逆者。 例えぬならばそれは……“敵”。 この異物は、 この危険因子(リスファクター) は、 この反逆者は、 この…“敵”は……、 俺の眼の前に存在した。 世界全体の合計質量内には存在しない様な存在。 それすなわち、違和感。 外の存在。 俺が巨大化して、こんなことは初めて、だ。 いや、生まれてきて初めて…か。 これは異常……。 異常だ。 まともとは到底言えない。 完全に人生のマニュアル外。 このビル街にも、この世界にも、馴染まない存在。 こいつは…?
少しだけ、後退りする。 足もとにいた何匹の小人がそれで死んだ。 いつもだったら“楽しんで”るとこなのに…。 今日は厄日…かもな。 超喫驚最悪な。 小人をイジメて一発抜いて…おもいっきり楽しんでやるつもりだったなのに…。 今日はスパッツの上で小人をイジメようと思ってたのに…。 あ〜あ… あんたいったい何なんだァ───? って感じ。 夕陽をバックに眠っているかのような…。 いったい…? その影は長くなりビルの影と重なっていた。 …なんか不気味だ。 いったいなんなんだよ? なんなんだ? なんなんだよ? 俺以外に巨大化する奴がいるなんて…いや、そもそもこいつは…。 そして、更に一歩、後退り。 それは不思議な感覚に対して、だ。 自分に似ているようで、何かが決定的に違う。 そんな違和感。 限りなく似ているけど、決定的に、破壊的に、破滅的に“違う”。 そんな……感じ。 矛盾してるな…。 「う〜ん…」 夕陽は沈むまでにはまだ時間がある。 オレンジに染まる世界もまだ続く。 その中にポツンと在る…何か…。 ある意味の静けさ。 恐怖に叫ぶ小人達の悲鳴。 後ろに遠ざかるバスの音…。 ある意味の騒がしさ。 何を望む? 何が望み? これは悪い夢だろうか? 夢? 前のように夢ではないかと思ってしまう。 でも、これは現実。 まがう事なき現実。 及び真実にして事実。 実相及び実情にして史実になりうる出来事。 「……」 そして…彼は眼を覚ました。 それは望まれざる事。 夕日を臨み、覚醒…。 それは望まれる事の無い事。 目覚める。 封印が解けるかの様に……。 その瞬間、まるで、怒り狂ったような咆哮が爆発した。 全てを破壊するような、低い低い低い、圧倒的に巨大な声。 辺りの建物を音波が襲う。 窓ガラスは当然割れ、コンクリートも崩れそうな勢いだ。 耳が痛い。 鼓膜に直接叩き込まれる振動は不快で、不快でしかなかった。 「!???????????????!!!!」 眼は血の様な紅。 四肢の先は、太く長い爪。 そして橙がかっている鱗。 長い尾。 あくまで人の形を保った…獣。 亜人…いや、半獣と言えばいいのだろうか…。 そう考えれば、トカゲの半獣。 「ひゃは…ひゃはは…ひゃははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 悪人笑い。 何がそんなに愉しいのか、彼は笑っていた。 ただただ愉快そうにその顔を醜く歪めて。 -------------------------------------------------------------------------------- ニヤッと笑ったトカゲの青年は、突然、俺に向かって進み始めた。 でも、それは知れた事の様な。 以前から知っていた様な…。 “当然”いや…“必然”の様にも思えた。 襲いかかるような勢い。 そして、徐々にスピードを増す。 それに比例する破壊音。 崩れていく街。 俺を殺すという行為が生んだ結果…。 その瞬間、俺の頭の中に純粋で、無垢で、純度百パーセントの、殺意が満たされた。 相手が殺意を抱いたが為の防衛本能。 殺意。 殺意。 殺意。 殺意。 殺意。 殺意。 殺意。 殺意。 殺意。 今まで抱いたことの無い、殺意。 殺したい、殺したい。 この眼の前に存在する、敵を。 殺したい。 眼の前の存在を殺したい。 殺したい。 胴体をまっぷたつにして、内臓を引き裂きたい、ブチ撒けたい。 肉を切り刻み、もとの形なんて残らない程に破壊したい。 純粋に…ただ、そんな風に…思った。 言葉を付け加えるなら、完全に殺意が頭を支配していた。 とでも言おうか…。 俺が抱いた殺意。 彼が抱いた殺意。 それは…イコールだった。 絶対殺意。 絶対純粋殺傷衝動。 百パーセントと百パーセント。 彼は鱗の巨大な足で、ビルを薙ぎ倒し、俺に跳びかかってきた。 あ〜、それ、俺が壊したかったのに…。 でもまぁ悠長な事は言ってられない。 彼のスピード。 それは俊敏。 それはトップスピード。 これは、ヤバイ。 「ひゃは♪」 一回転した足が俺の前髪をぎりぎりかすめた。 避けるのがあと一瞬遅かったならば、クリーンヒットだった。 剣呑、剣呑。 第二撃がくる寸前…。 後ろへ更に後退。 殺意があれど、武器は無し。 当たり前だけど…俺には鋭い爪は無い。 「これってアンフェアだよなァ」 愚痴を溢す余裕は無い。 …が、つい口が動く。 トカゲの爪が俺の首を狙い、足が頭を狙った。 建物が壊れる音が、風をきる音が、それに続く。 こんなことなら竜乃助に柔道教えてもらうんだった。 応用すれば…何とかなったかもしれない。 「って今更無駄だけどさ」 と、独り言。 白兵戦では、凶器がないこちらが不利過ぎる。 反撃に転ずることがかなわないかもしれない。 逃げるのが精一杯。 でも…逃げてばかりではらちがあかない。 反撃しなきゃ。 このままでは…殺される。 殺される前に殺さなきゃ。 でも…どうやって? この速さは避けることしか…。 逃げながら頭をフル回転させる。 この状況ではいっきに決める事が必要だ。 そして、こちらに武器が無い事、スピードが劣る事。 この三つを考慮するならば、答えは簡単。 不意をついていっきに攻める…。 それしかない……。 「ちぇ」 舌うちをして、屈みこんだ。 ぐんッと視界が急降下。 チャンスが無いのなら作るまでだ。 そうでもしなければ、体力がもたない。 そして、半獣の首めがけて、手をおもいっきりのばした。 片腕で首を掴むと、全体重で一気に地面に叩き付けた。 土煙と一緒に建物の残骸が飛び散った。 もう、小人は何百人も死んだだろう…。 いとも簡単に。 でも、この巨大な生物はそう簡単には殺せなかった。 そのまま…両手をそえて、強く強く絞めあげる。 「死ね!死ねよ。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね!」 あくまで原始的。 あくまでシンプル。 トカゲ青年の体が少し痙攣した。 が、次の瞬間、鋭い三白眼が俺を睨んだ。 そして、また…ニヤッと笑った。 それは何か含みを持たせる様でなおかつ確信的な…不気味な表情だった。 その次の瞬間、俺の首を拘束感が襲った。 長く鱗に覆われたモノ。 嗚呼…尻尾か。 ……俺は、絶望した。 「ひゃはは♪♪♪」 トカゲ野郎がまたもや醜く笑う。 窒息ギリギリまで締め付けられ、俺の手は自然と離れた。 締め付けをほどこうと、四苦八苦するが、そのまま蹴りをくらってしまう。 爪が腹に刺さり、そのまま吹っ飛ばされた。 いっきに世界が回る。 流れる景色……。 そして…何かの建物に衝突し、俺の体は停止した。 もう周りには町という景色は残ってはいない。 グラウンドゼロ。 戦地。 そんな情景だった…。 と、顔の目の前に先ほどのバスが転倒していた。 小人が何人も必死に逃げていた。 ちぇ…。 いたたまれない気分になる。 ……。 瓦礫の山の街。 そのなかに見えるトカゲ野郎。 あ〜やっぱ駄目? このまま殺されちゃう? 眼の前に立った彼は、無表情だった。 髪を掴み、持ち上げられると、腹をまた何回も蹴られた。 吐血、出血、内出血。 苦しい…苦しいよ…。 苦しいんだ。 ………苦しい。 死ぬ。 死ぬ。 死ぬ。 死ぬ。 死ぬ。 ………。 俺の上に跨り、その爪で俺の体が切り刻まれる。 顔も何もかも。 「痛…い」 ……………。 ていうか…いきなり出てきた新キャラ? のくせに…。 なんで俺がこんな風にならなきゃ駄目なんだよ…。 意味不明。 理解不能。 でも…やっぱ悔しいなァ…。 喧嘩にゃあ負けたくないな。 負けたくない。 勝ちたいよ。 視界も終には真っ暗になった。 嗚呼…。 なんか…やだ。 いったい、何を望んでいる? 俺の破滅の先に何があるの? 「ぅぅぅ……ぅぅぅ」 頭のなかでノイズみたいな風の音が聞こえた。
ザザ、ザザザ。
ザ─────。
ノイズが止まらない。 コレが終焉? コレが死?
ザッ──ザザ───。
終わり?
T H E E N D?
弥終?
………ザ─────────────。
-------------------------------------------------------------------------------- それはまるでそよ風の様に微か。 しかし、突風が如く力強い鼓動。 それは戦いの気運の胎動。
「……The fools who angered KING.Compensate by dying.…(王の怒りに触れし者よ。死をもって償いなさい。)」
歌ったこともない歌。 呟く様な微かなその声は、俺の様でもあり、まったく違うような声にも聞こえた。 正確には、途中から、俺の声が始まっていたと言うべきなのだろう。 俺ではない声、は、彼でしかなかった…。 多分。 まるで、それが自然。 それが流れ。 それが運命。 と、次々に歌う俺…。 狂ってしまった様にも見えるのかもしれない。 操られているかの様な感覚で歌はまだ続く。
「……Ah, fools defy KING of blue wind.(嗚呼、青い風の王にたてつく愚者たちよ)」
止まらない詩。 止まらない声。 それに関係あるのか無いのか、体が…軽い。 さっきまでの痛みも辛さも苦しさも、段々と薄れている。 「……??」 徐々にはっきりしていく視界に異形の者を見るような…何かを恐れているような…そんな眼のトカゲ野郎が見えた。
「Kneel! When its life is killed by KING, sin will be forgiven!(さあ、ひざまずけ!命の絶たれるその時に、罪は許されるだろう!)」
そこで歌は終わった。 その歌は、聞いた事が無いくせに、まるでどこかで聞いた様な…懐かしい感じがした。 いつしか、トカゲ野郎の体重が無くなり、起き上がる。 気のせいか頭がくらくらする。 ノイズはいつの間にか止んでいて、歌はいつの間にか歌っていた。 何がなんで何れがどうで…。 もう破壊的に訳が分からない。 …が、一つだけははっきりしていた。 それは、まだ続くという事。 それは……。 「勝負はまだ終ってない♪」 そういうこと。 俺は笑った。 ニッと、トカゲ野郎に向かって中指をたてた。 「絶対ェ(ゼッテェ)ぶっ殺ーす」 完全に傷がふさがって、体が軽い。 反撃の狼煙は、今あげられた。 こっからは俺の番(ターン)だ。 アンタが何を望むか知らないけど、俺の望みはハッキリクッキリしてる。 アンタを殺す。 ただ、それだけ。 -------------------------------------------------------------------------------- 咲かしてみせましょう、青き風で、紅き血の華を…。
もし風に色があるなら…。 コバルトブルーの風がもし在ったなら…。 こんな感じなんだろうな。 辺りは真っ暗。 そこに闇しか無いような…そんな暗闇。 そんな中に、青い風だけが輝いて見えた。 「………」 この感覚は…夢だ。 夢の世界だ。 でも…何故、今? この類の夢はある程度周期化していた。 しかし、今はそうではなく、夢の中だ。 この現象が意味するものは、何かが起こるということ。 夢は前ぶれ。 青き夢は胎動。 輝く青き風は只、それが世界の秩序で、それが世界の仕組みかの様に、極々自然に、俺の周りを舞い踊っていた。 そして、声がした。 周りに木霊する様に。 予定されていたことの様に。 『さァ…一緒に行こう』 彼の声だ……。 その台詞…たしか前にも聞いたなァ…。 そして、今度は違う台詞。 『裁きの剣を…執って』 それは切望するかの様な言い回し。 何を望む?キミは…。 -------------------------------------------------------------------------------- ……夢は本当に束の間で一瞬だった。 実際の時間では、ほんの数秒にも満たないのだろう…。 トカゲ野郎の顔は夢の前に見た顔のままだ。 引きつり、何かに脅えるような顔だ。 さて…体は絶好調、心はハイテンション。 トカゲ野郎の相手をどうやってするかな…? まるで遊ぶ様な感覚で、俺は笑っていた。 楽しい、とっても。 I'm very very very very very fun! 優勢だから。 俺が。 主導権は俺。 こんなに嬉しい事は無い…ってね。 とりあえず、足元のバスを踏み潰し、小人達を挽肉にした。 あはは。 楽しすぎる。 「あはは。あはははははははは。最高!!!!!!!!!!!!!!!! あははははははははは」 左頬が熱くなる。 “裁きの剣” それが俺の爪…すなわち武器?
「The time when you are judged comes.(裁かれる時が来る。)」
あの歌を、その意味を、この言葉を、俺は理解した。 1+1=2。 簡単な式を理解するように。 理解。 それはとるにたらない当たり前な事なのだと……。 風が吹いて、大気が動く。 世界が裁きの時を祝福した。 左頬が更に更に熱くなり、淡く輝く………。 “裁きの剣”は、その姿を現した。 刺青の様な。 第三の腕。 刺青の様な。 大剣。 形は腕と大剣。 しかし表面のみしか存在しない、刺青の集合体。 微妙に動きつつ存在し続ける。 これが武器。 これが“裁きの剣”。 腕が一本増えた感覚は不思議だったけど、案外普通だった。 握り締めた刺青だけの拳を更に強く握り締める。 戦う喜びといえば良いのか…、今この時が…嬉しくて仕方がなかった。 戦い=快楽、だ。 それが、その先が、望みだから、俺は大地を蹴り、トカゲ野郎を襲う。 廃墟をさらに廃墟たらしめながら…。 スピード、最高速度。 殺意、最高純度。 刺青の大剣は風を纏い、敵に向かった。 何度も何度も。 時には円を描く様に、時には十字に剣を振りかざし、トカゲ野郎を追い詰めていった。 「あははははは♪ 殺してやる。殺す。殺す。あはははは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 追っている最中、何回も避けられた。 けれど、時間がたつにつれて体が新しいパーツに慣れてきた。 より速くなる。 より正確になる。 一瞬前より、より強くなる。 これは進化。 成長を遥かに凌駕する身体能力向上。 進化。 戦いによる進化。 はぐれメタルをいっきに何十体も倒した様な、 矢で射たれた様な、 使徒を喰った様な、 真理を見た様な、 石仮面(エイジャの赤石をつけたもの)を被った様な……。 瞬間的超速進化。 そして……、トカゲ野郎はついにバランスを崩し倒れかけた。 「一本貰い(もーらい)!!」 俺は最高の笑顔で大剣を振り下ろした。 トカゲ野郎の片腕が鮮血を散らし、宙を舞った。 「ひゃ…はっ…!?」 一回転して、体勢を整える。 痛みに顔を歪め、血の止まらない片腕をかばっている。 断面からは、まるで滝の様にどすぐろい血が流れ落ちていた。 辺りにその臭いが立ち込める。 痛みの象徴の様なドス黒い臭い……。 さて…そろそろ決着をつけようか? 心の中でそう呟く。 …足を一歩進める。 望みよ叶え。 ゆっくりと、愉快に、軽快に。 歌をくちずさみながら…。
「When its life is killed by KING,sin will be forgiven.(命の絶たれるその時、罪は許されるだろう。)」
振り下ろした青き裁き。 沈み始めた夕陽をバックに、輝いた。 世界で一番青い青。 鈍い音が響いた。 鉄どうしがぶつかるような、反発音だった。 「な…」 頭から切り裂いてやるつもりが、俺の刃は何か固い物に弾き返されてしまった。 これはトカゲ野郎の力では無い、だろう。 これは…? …盾…か? 紫の刺青の盾だった。 そして、突然、誰かが何処かで呟いた。 テレパシーの様に、此処ではない何処かから。 「この続きは……また今度」と。 トカゲ野郎の声ではなかった。 「な……。え…!?」 次の瞬間、トカゲ野郎は忽然と姿を消した。 いなくなった。 消失。 「……ァ」 “裁きの剣”も消失した。 残ったのは、破壊しつくした街の残骸及び廃墟。 そして、一陣の風。 髪が揺れ、体に少し温度が低い風が当たった。 沈みかけた夕陽は瓦礫の街を照らしていた。 「まあ…一応は、終ったな…」 溜め息混じりにそう呟いた。 その刹那、突然体がズシッと重くなった。 あ…れ…何が…起こった? これは…反動なのかも。 “裁きの剣”の。 巨大化すると、反動がくる。 それと同じか。 眠いなァ…。 あまりの眠気に体が崩れ落ちそうになる。 「……」 でも、楽しかったから……。 いいか…。 睡魔に襲われ、意識が遠ざかる。 人間…ましてや巨人でさえ、睡魔に勝てる時代は絶対に来ないのかもしれない。 人類はまだまだ克服できないものが有るようだ。 ……。 マジ眠い…。 …………。 瓦礫の上に膝をつく。 その時だ。 俺の目の前に人影が現れたのは。 「まっ…最初にしては上出来だぜ」 どこかで聞いた声。 抱き寄せられる体。 暖かい…腕。 「久しぶりだなァ……兄弟」 |
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2010/04/13(Tue) 20:56:46 no.135 |
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□ KING's第2話"Cerasus" ( w / - ) |
V. 「………ん」 目が覚める。 「……」 気のせいか体が重い。 いつかと同じ感じだ。 いつだったかは思い出せないけど。 最近、寝てばっかだなァ…。 「…にゃ……」 何かいい臭いがする。 花の香りみたいな……。 まだ寝惚けた眼に映ったのは順和風の部屋だった。 木の天井、襖に、障子。 そして、床の間に架けられた掛け軸に、生けられた桜の花。 「ここ…どこ?」 どうやら俺は見知らぬ場所にいるらしい。 見覚えなんてあるはずが無かった。 りあえず、状況を把握しよう。 薄いベージュの掛け布団を退けて、起き上がる。 「あ〜……れ???」 俺って、たしか……。 記憶を辿っていく…。 そうだ…、ぶっ倒れる前…。 どこかで聞いた声がした。 誰だっけ? いつだっけ? その記憶が消え失せてしまったのか、ただ思い出せないだけなのか…分からないけど…。 こんな自問が虚無に等しい事を知っているのに…。 意味が無い事を知っているのに。 こんな事を考えてしまうのは、まだ寝惚けてしまっているのか……? 勿論、答えが導き出される事は無いようだった。 「う〜ん……」 首を傾げながら、腕組みする。 その時、障子に人影が写った。 「……」 女性の様だ。ゆっくりと、障子が開く。現れたのは、一人のメイドさんだった。 -------------------------------------------------------------------------------- メイドさんに言われるまま、導かれるままに、俺はある部屋まで連れていかれる。 別に興味があるわけじゃないけど、初めての生メイドだった。 何というか、どこもかしこも高級なものばかり(俺の勝手な判断だが…)だった。 客間らしきこれもまた順和風の部屋に待つように言われたので、おとなしく座布団の上に座っていると……。 しばらくして、ゆっくりと襖が開いた。 裸足の足が最初に見えた。 次の瞬間には人物の全体が見えた。 「あ…」 思わず指をさす。 女顔で、耳ほどの髪の…。 あの…イイ性格していらっしゃる人だ。 えっと…たしか、陸上部で、典麗の生徒だった様な…。 当たり前だけど今日は陸上のユニフォームじゃあなかった。(ジンベイだった) 「…やっと起きたかよ」 それが第一声。 「?」 首を傾げる。 やっと? その表現が引っ掛かる。 なんだか凄く長く寝てたみたいな…。 「……。丸一日寝てたんだぜ? お前」 「あっ、そうなんだ。へ〜。それは、ご迷惑をおかけしました。………。……? って、えぇ!?」 一日!? 一日って丸一日ですか? 二十四時間なんですか? 「えっ……」 と、驚きを隠せないでいると、開けっぱなしの襖からメイドさんが二人現れた。 片方はお膳を持っている。 今時メイドさんがいる家なんてあるのか…って、メイドさんがいる時代があるどうかすら定かじゃないけど…。 兎に角、喫驚な訳で…。 つうか…こんな“和”な雰囲気の建物にメイドさんって……。 洒落た彫刻が施されている美しい木の机に手をつくと、 メイドさんの片方が、ティーポット、ティーカップ、サンドイッチ(がのった皿)等をお膳からテーブルに移した。 「腹減ってる…よな?」 そう言われてみれば…と、タイムリーに腹が鳴った。 「ぁ……うん」 うはぁ…恥ずかしぃ…。 ちょっと目をそらすように、サンドイッチを手を伸ばす。 そして、ゆっくりと口に運んだ。 何だか…滅茶苦茶美味しかった。 でも…なんで…こんな“和”な雰囲気なのにサンドウィッチって……。 しかもお膳にサンドイッチかよ。 「で…まあ本題に入るんだが」 そう言って手をポンっと叩くとメイドさんたちは礼をして、部屋を出ていった。 俺はサンドイッチを咀嚼しながら軽く会釈をした。 「うん」 頷くと、ストン、と襖が閉まった。 「三度目か? 会うの」 「うん…」 「……」 黙々と食べる俺を気遣ったのか、他に理由があるのか、目の前の人は俺を黙って見つめた。 人に見つめられながら食べるのは少し恥ずかしかったけど、とにかく食事を済ませた。 五つあったサンドイッチはすぐに無くなってしまった。 「…ご馳走様でした」 「お粗末様でした」 多分この人が作った訳じゃないんだろうな…。 って…そんな事はどうでもいいけど…。 考えても意味が無い。 美味しかったし。 俺にはそれで十分過ぎる。 「……」 そういえば、やっぱこの家…滅茶苦茶金持ちだよなァ。 部屋の内装を見ながら思う。 う〜ん…流石は典麗学園生徒だな…。 いったい何の仕事したらこんな儲かるんだよ。 そもそもお手伝いさんがいるって事自体金持ちだよな〜…。 家政婦は見た…みたいな…。 いやみたいなって…違うけど。 と、余計な事に頭を巡らせながら飲んだ紅茶もすごく美味しかった。 そんなこんなで、まだお腹一杯では無いけど、空腹感は収まったのであった。 -------------------------------------------------------------------------------- 「で…、やっと本題に入るけどな…」 目の前の人は、半ば呆れた様な口調で俺に話しかけた。 「うん」 上目使いで返事をする。 「感想としては……まあ…最初にしては上出来だったぜ? それに、見世物としてもまあまあだ」 「それはどうも」 誉めているのか、馬鹿にしているのか…。 あまりいい気がしない。 「ボクとしてはあのまま駄目だったら加勢しようと思ってたよ。 内心ハラハラっつう感じ? 大事な大事な弟だからよぉ〜」 「は?」 いつ俺がアンタの弟に? 「なんだ、知らねえのか」 この言い方、なんか感に触るんだよなぁ。 って、もしかして生き別れた兄弟なんてオチが……。 有るわけ無いよなァ…。 つうか有ってたまるか…。 「なら、折角だからボクが知ってる事を教えといてやる。後々聞かれて逐一答えるの、ウザいし」 分かった…この人…一言多いんだ。 「え…ちょ…何」 「この櫻崎空、末っ子の為に一肌脱いでやるよ」 あと、人の話、全く聞いてない………。 -------------------------------------------------------------------------------- 目の前の人は、上蔵をかきなおして、机に手をついた。 「まあ…あれだ。あんま気ぃ張らなくていいぞ? 大まかに話すからな。まあ質問は後でお願いするわ」 「了解」 そう了承すると、ゆっくりと落ち着いた様子で、“さくらざきそら”は、話を始めた。 -------------------------------------------------------------------------------- 「昔、有るところに、狂った二人の魔術師がいました。 AsiaとCorneliaっつう名前の二人。 その二人の研究は、“完全な生命の生成”。 何十年もの間、その二人は研究に没頭し続ける訳なんだが…まあ取り付かれた程に狂って…な。 地位も、名誉も、恋も。 何もかもを犠牲にして。 やがて、そいつらは、“答え”を導きだす。 …“個体としての肉体を持たない生命”=“エネルギー生命体”=“完全な生命”だってな。 その、“答え”から生まれたのは、 まず赤色の刺青の少女。 次に、白色の刺青の少年。 次に、黒色の刺青の少年。 そして、最後に、桜色の刺青の少年。 “種”としては限りなく個体数が少ない生命。 しかし“個”としては限りなく強い。 そんな存在。彼らこそは恐らく無敵の存在。 ひとたび人に憑けば、刺青となり自らを同化し、 宿主を巨大化させる(正確には高エネルギー生命体である為に、宿主の耐久性をある程度確保しなければならず、なおかつ定期的なエネルギーの調整の為で、結果的に巨大化するだけである)。 戦うべき時がこれば、個々の武器を用いる(実際は実験の副産物)。 その“種”を二人は“王(KING)”と、名付けた。なぜなら、“個”として無敵の“種”だったから…だ。 ヒトに寄生し共生し続ければ、寿命も無ければ、死も無い。 しかも恐ろしいほど強いとくる。 誰がどう見たって、無敵の生命だろ? そして、その後は…お決まりの展開だ。 Asiaの方は彼らを兵器にしようと企んだ。 まあ…戦争は儲かるからな。 もう片方はそれに強く反発したんだが…。 そこで、Corneliaは姉弟全員を連れて逃げ出した。 兵器にだけはするまい、と…な。 もともとは研究として、実験の副産物として武器を創った。 それが間違い…いや研究自体間違いだったかもしれないが…。 しかし、まあ研究は完成していたから、Asiaはその集大成として紫の刺青の少年を生み出した。 姉弟全員と何ら遜色も…いや優れている最悪の奴を。 そこからはイタチゴッコになってしまうんだが…。 “二人”の子らは姉弟で争う事になっちまったっつう訳だ。 一対四の比率で。しかも死なないし、それぞれに無敵。 しかも…人間に憑いて、巨大化して戦うから、規模が半端無い。戦争みたいなもんだな。 姉弟戦争っつうんか? まあいいか。 んで、イタチゴッコに終止符を打ったのは、最後にCorneliaが生み出した青色の少年。 “どうやって”かは知らないが、そいつは紫の野郎を破壊した。 というかある程度……消滅寸前まで破壊した。 で……、その後は、事態は急速に終息に向かう。 もちろん危険因子の紫の野郎の行動が沈静化したからだな。 あと、それは魔女二人が死んだことか…。 そして、だんだんと姉弟はバラバラになっていく。 人から人に、流れに流れ、また流れて、今にいたる。 今までは何も起こらなかった。 しかし、面倒な事に、“今は”起こってるんだ。むしろ本当は、今まで水面下で起きていただけなのかもしれないがな…」 -------------------------------------------------------------------------------- と、長々と話した終わった後、“さくらざきそら”は 「まあ…分からんトコは無くなったハズだな? なぜ刺青が生まれたのか、なぜ巨大化するのか、なぜ戦わなければならなかったか、とか……」 と付け足した。 「………」 俺は少々考えた。 刺青がなぜ生まれたのか…それが、なぜ人間を巨大化させるのか……か。 「そうそう…。ボクたちの間では、刺青の宿主のことも“王”と呼んでる」 「?」 「例えば、ボクの場合、桜色の刺青の少年。…名前はCerasus(ケラスス)なんだが…。だから刺青の色からとって桜の王…だ」 「………」 信じられない話だった。 今までならば。 何も知らないままだったら誰でもそうだろうな、とも思う。 刺青の効力を知ってこそ、実際に宿主になってこそ、初めて理解できる。 …って、俺みたいな奴があとこの人も合わせて五人もいるのか…。 物騒な世の中になったもんだよ。 「そういや…」 「ん?」 「あの…トカゲ野郎は、王なのか?」 「トカゲ…? ああ…。違うな。あいつらは王じゃない」 手をヒラヒラと振りながら、彼は笑った。 「? 巨大化するのは王だけじゃないの?」 「そんなことは言ってないがな…。って…あいつらは王の僕だ。vasallus(ワーサルス)っつうんだが…」 「…僕って…さっきの話には無かったよ」 「ぁん? ああ…そっか…すまんすまん。王の僕はな、その言葉のままだ。 王の従者。 王の召使い。 王の奉仕者。 とか、なんでもいいんだが、通常の人間の体に王の……あ〜…その…」 不意に止まる言葉。 「?」 「その…分泌液を…だな」 不思議がる俺から目をそらすように、ボソッと言うのが聞こえた。 「ああ…」 顔を赤らめたところを見ると、まあ言いたいことが何なのかはよ〜く分かった。 いわゆる通常サイズの時にヤるとそいつが僕になる訳だ…。 …にしても、こんなことで恥ずかしがるなんて…餓鬼か…。 と、笑ってしまう。まあ…童貞確定ですな…。 -------------------------------------------------------------------------------- それから…、何十分か話して、帰り際に、お互いメールアドレスの交換をして、お互い名前も確認した。 なんと、御丁寧に名刺をくださった。 流石は典麗の生徒、と感心する限りで……。 加えて、驚いた事がもう一つ。 不在着信:70件。 Eメール:860件。 全て竜乃助の携帯電話からだった。そんなこんなで、俺は“櫻崎空”宅を後にした。 |
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2010/04/13(Tue) 21:12:07 no.136 |
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□ KING's第2話"Cerasus" ( w / - ) |
W. 「ぁ……ん…竜乃…助……苦しぃ…よ」 声が漏れる。 強く絞まる筋肉質な腕が、太い指の一本一本が、厚い胸が、全てが…温かい。 竜乃助の、ほの赤い頬。荒い吐息。熱る体は、夏の暑さも気にならない程、熱かった。 -------------------------------------------------------------------------------- 「って…、痛いよ竜乃助」 ヤケに猥褻な描写だった事…。 と訳不明な事を思いながらそう呟く。 「ぉ…おう…すまん」 目の前の顔が真っ赤になって、腕が離れる。 「???」 なんか…一日会わないだけで、凄く久しぶりに会った気がする。 短い間に沢山のことがあったから…か。 沢山のことがありすぎて、ありすぎて…頭がパンクしそうだった。 とは言え、無事にこう帰ってこれた訳だから、結果オーライかな? と、ここで話を戻すと、俺は竜乃助に再会するやいなや、またも強ぉく抱きしめられてしまった訳だ。 竜乃助には抱きつき癖があったのか…。 と言うことも分かった。 感極まると、どうも抱きつくらしかった。 夏の夜。 俺の家(マンション)の玄関。 目をそらしたつり眼の三白眼。 閉じたままの薄い唇。 真っ赤な顔の竜乃助…。 何だか気まずい…。 竜乃助は俺の住んでる階(六○六号室)の三階下に住んでいる。 そこからダッシュで来たらしい。 まあ息が切れてるのはそのセイだ。 昨日の夕方に巨大化して、一日たって、色々あって、今は午後七時半を回っている。 竜乃助に連絡をしたのは、家についてからだった。 このままじゃ良知があかないから、俺は「まあお茶でも飲んでったら?」と、竜乃助の手をとる。 「ぅん…」 ゆっくり、優しく、握りかえしてくるその手は、素敵に暖かった。 -------------------------------------------------------------------------------- 「本っ当に心配したんだぞ!!」 と、麦茶を一気に飲み干した竜乃助がコタツ机(勿論布団は無い)を叩いた。 その振動で、一日休んだ分の授業のノートが少し浮いた。 竜乃助が気をきかせて持っていてくれていたのだった。 竜乃助ったら物に当たるんだから…。 と笑って竜乃助に謝る。 まあ…公然に言える事をしてきた訳ではないので、あったことは全て黙っておく。 黙っておけば嘘はつかないで済むから…。 「…怪我無かったから……良かった…けど、な」 優しげな目でそういうと竜乃助は軽く溜め息をついた。 先程にもまして気まずく、しんみりになってきたので、俺はテレビの電源をつけた。 竜乃助の前に座り、チャンネルをパチパチと変えていく。 どこもかしかも、どのチャンネルも、衛星放送さえも、街が全壊するほどの大災害を報じていた。 今回は局地的な地震と竜巻。 それによる、爆発事故及び火災の多発だった。 まったく…刺青(カエルラ)には頭が下がるねぇ…。 何とも無責任な話だが、事実を書き換えてくれる、この力は便利なものだ。 「大変だったみたいだな。隣町だろ、これ」 テレビを観ながら竜乃助が何のことはないといった表情で俺を見た。 え…何? 何でこっち見んの? 「そ、そうだね…」 「まァ兎に角お前に怪我が無くて良かったゎ」 そういや…あのトカゲ野郎…まだ生きてるんだったな…。 邪魔が入って………。 あいつ俺みたいに怪我…治るのか? もしそうであったとしても、そうでなかったとしても、撃退して、殺傷して、破滅させてやるけど…。 そんな殺伐した考えが浮かぶ様になっても、何も知らない竜乃助は俺に優しく接してくれる。 それは…例え故意の裏切りではない裏切りだとしても、裏切っている事に変わりがない裏切りに対して、限りなく虚無で、限りなく喜びだった。 「…ありがと」 そう微笑んで返すと、竜乃助は何故か目をそらすように立ち上がった。 …? 「じゃ…俺、そろそろ帰るわ。今日、母さんと兄貴が帰ってきてるしな」 今日はやけに付き合い悪いじゃん。 なんて、言おうとした。 けど、そういう事ならしょうがない。 竜乃助のお母さんとお姉さんはどちらも博士号を持つツワモノ。 海外に出張が多い為か、いつも家にいない。 小さい頃はよくお姉さんには面倒をみてもらったな…。 お父さんは教師らしいし、今更ながら勉強のお好きな家庭だなァ…。 家訓は "知らぬまま終るな" らしい…。 まあ竜乃助もその血を受け継いでいて、家系(俺の知る限り)唯一の体育会系という点を除けば、(偏っているけど)頭が良いし、勉強ができる。 「と…説明はこれくらいにして…」 「?」 意味不明な独り言に続いて、 「お姉さん達によろしく言っといてね」 そう、玄関に向かう竜乃助の背中に言った。 「……あ〜…。おう、あと二、三日居るらしいから暇だったら顔出してやってくれ」 「りょーかい♪」 そう俺が軽く敬礼のポーズを取った後、竜乃助はフッと笑って、手を軽く振った。 いつもみたいな口調で。 いつもみたいに気だるく。 すこし億劫に。 「良く頑張ったな」
そのセリフは──。
バタン…というドアが閉まる音。 彼から聞いたセリフ。 竜乃助から聞いたセリフ。 まるで、同じことを指している様な。 「え……?」 気のせいだ。 気のせい。 きっと…。
──いつもと違う表情で……。
-------------------------------------------------------------------------------- それから、何日かたったある日…。 初夏の暑さが本格的になり始めた頃。 昼下がり。 第五時間目。 何人かが抜けた教室。 クラスで亡くなった人の葬式も終わり、通常の授業に戻り始めた日。 気だるい空気の中、携帯電話のバイブがムームー鳴った。 差出人は、櫻崎空だった。 そういやメアド交換したっけ……。 机の中で、傾けたケータイの画面に目を凝らした。 内容:[こんちわっ(>O<)/★ハルキン今日、巨大化して遊ばない?] あ〜…この人こんなメールするんだ…。 なんとなく左手で顔を覆う。 って、ハルキンはどうだろう……。 そんな風に、呼ばれたのは初めてだ…。 カタカタとメールを返す。 内容:[分かった。君の家に自転車でいく。] と、すぐに返事がくる。 レスポンス早いなぁ…。 内容:[迎えに行くからハルキンの学校の西門に居て(-人-)時間は四時より少し前に] 更にその返事。 内容:[了承。] それ以上メールは来なかった。 っていうか、ちゃんと文末には"。"をつけろよォォォ。 それにちゃんと改行しやがれェェェ。 今日会ったら言ってやろう。 なんて、少し気になることがあったけど、俺はおとなしくその時間を待つことにした。 まあ…たまには平凡な日常も楽しまなければ…と。 -------------------------------------------------------------------------------- 「ぅゎぉ」 と軽く驚くと、櫻崎空はニッと笑った。 「や」 俺の遥か頭上に位置する場所からの声は、やけに爽快だった。 この櫻崎空が巨大化した(四十メートルくらい)姿で現れたのはつい先程だ。 よもやこんな風にやって来るとは思いもしなかった。 車か何かかなと思っていたんだけどな…。 キャラ的に。 まだまだ明るく青い空。 くっきりしたシルエット。 櫻崎空は迎えにやってきた。 -------------------------------------------------------------------------------- 腰を屈め、俺の目の前に巨大な手が伸ばされた。 この展開からして…取りあえず乗るしかないな。 なんて、思いながら俺は櫻崎空の人指し指に足をかけて掌に上った。 「…ぅわ」 暖かい掌の上に乗ると、ゆっくりと上昇した。 ある意味、もう見慣れた風景が俺の目に広がった。 「…」 少し揺れるな。掌の上はあまり乗り心地はよくなかった。 -------------------------------------------------------------------------------- 「どこに行くの?」 ふと、移動中の巨人に聞いてみる。 「取りあえず〜…前んとこと逆側の町だろ」 「ふぅん……」 と、巨人はどうやらまだ被害にあっていない町に足を進めるようだ。
俺の住んでいる青羽町はかなり大きな町なんだけど、その周りの町もなかなか大きな町だ。 壊しがいがあるのは嬉しい事だけど、だからといっていろいろと困る事もある。 例えば、この前トカゲ野郎と戦った所も周囲四キロはほぼ壊滅状態だった。 そんなに壊すつもりはなかったんだけど…と今更後悔している。 あそこには安い服屋が多くて重宝してたのに……。 だから、暴れる場所も考えようだ。 まあ今日今から行くところはあんまり行かないし、あまり知らないからどうでもいいんだけど…。 知ってる事といえば、海に面している町で、デカイ橋があるくらいだな。 ガキの頃社会見学にいったような記憶がある。 -------------------------------------------------------------------------------- それから五分もたたずに、巨人はその町までついてしまった。 早くて渋滞にもひっかからない。何ともいいではないか。 巨人タクシー登場。 ただしお代は………。 儲かる見込みはまったく無いな。 きっと。 -------------------------------------------------------------------------------- 「じゃあそろそろ俺…」 そう上を向いて話しかけると、「ん」と短い返事がした。 メールと現実のキャラが違いすぎるなぁとか思ったりしながら。 「よいしょっと…」 そう言って、これからの展開に心踊らせながら、俺は掌から飛び降りた。 風が取り巻く。 どんどん近付いてくる地面。 それは…まるでアノ時の様で、少し心が痛かった。 -------------------------------------------------------------------------------- 一瞬視界全体が青くなり、次の瞬間には、俺の視界は櫻崎空と同じ比率のサイズになっていた。 何度か巨大化すると、巨大化した後すぐに立っていられるようになった。 前は毎回倒れてたんだけど…。 櫻崎空は俺より少し低い身長で、女顔で、髪が長くて、垂れ目で、まあ巨大化しても通常サイズの時と変わらない。 変わったのは、櫻崎空は巨大化すると、髪が桜色に、そして、獣の耳と尾がついていることだ。 狼?っぽいなぁ…。 「うわ…奇抜…」 桜の王という通り、勿論、刺青は桜色だった。 腕に見えるのが確実にそうだろう。 たしかケラススって言ったっけな。 刺青の名前。 彼はいったい櫻崎空にどのような武器を与えたんだろうか??? 「悪いかよ。お前だって青色だぜ?」 まるで答えが決まっていたかのように返事が早かった。 もしかしてそうじゃなくて頭の回転が早いからレスポンスが早いのかな? 「そっか…。そんなもんか?」 と、無理矢理消化し、理解しようとした。 ……でも、ピンクだよ? 誰かに話しかけるように、俺は誰かに同意を求めていた。 「…って話は変わるけど、今から何して遊ぶの? 言い出しが考えてないって事は無いよね?」 「そうだな〜…、まあ取りあえずは……」 -------------------------------------------------------------------------------- 「負けるかぁ…!」 「現役陸上部をなめんな」 俺たちは何故かカケッコをしていた。 住宅街の様な低い建物が多いせいか前よりか走りやすい。 あの時は必死だったからあんま覚えてないけど、とにかくビルよりかは住宅街の方が幾分かマシだった。 とは言え、踏み潰しながら走るのは大変なんだけど…。 ゴールはこの街のシンボルの橋らへん。 あと少し。 というところで櫻崎空に抜かされてしまった。 「ふっ…勝った」 「畜生っ」 やっぱ負けた。 うわぁ息一つ切れてない…。 橋に向かう直前の直線の道路で足を止めた櫻崎空がクスッと笑う。 うわあ…ムカつく。 負けず嫌いな俺に戦線布告かっつうの!! 「馬──〜──鹿!」 はらいせにそのまま足に力を込めてジャンプする。 前方に続く橋の上に綺麗に着地、…とはいかなかった。 失敗した時の走り幅跳びみたいに、けつから着地すると、簡単に橋は打ち壊れ、海水が飛び散り、しぶきが上がった。 車も人間もゴミみたいに飛び散って、浅い海に沈んだ。 分かっていたことだけど、俺はずぶ濡れである。 「ぅわっ」 櫻崎空にも大いにしぶきは飛んだらしく、髪も耳もびちょびちょだった。 「ちょっ…テメぇの方が馬鹿だろうが!」 なんて言われたもんだから。 「あははは」 櫻崎空の腕をおもいっきり引っ張ってみる。 「ちょ…おっ…」 またまた大しぶき。 「びしょ濡れおそろいだねー」 「馬鹿野郎」と笑って櫻崎空は答えた。 -------------------------------------------------------------------------------- 橋の残骸の周りでは人間や瓦礫が散らばっていた。 別に気にせずに座ると、櫻崎空も俺の隣に座った。 「そーだ」 「何だ?」 まだ生きている人間をつまみあげて、隣の男はゆっくり返事をした。 その玩具を楽しそうに眺めている。 「君ってさ」 「〜…っ。名前でいいぜ。呼ぶの」 「そっか。分かった」 呼びにくかったんだよね…実は。 名前で呼んでいいって許可がでたので、そうさせていただきますか。 -------------------------------------------------------------------------------- 「空ってさ、初めて巨大化した時ってさ、エッチィぃ事した?」 唐突エロ会話。 「なななななっ何ですと!?」 顔から湯気でもでるんじゃないかって程真っ赤になる。 人間の頭がプチっと潰れる。 「な…何でそんなこと聞くんだよ…」 「俺は、したから。空はどうしたのかな?って」 ……。 …………。 ……………。 「…〜〜〜〜。…した…ょ…」 けっこう間があって、返答がきた。 「そっか」 何だか反応が可愛かった。 やっぱやるんだねぇ…オナニーとか。 ……。 「よぉし…じゃあエッチぃ事しにいきますか!」 立ち上がって、空の手を取る。 「ぅわ!?」 空も慌てて立ち上がる。 足をズカズカと進めた。 空の股間のものは大きく膨らんでいた。 -------------------------------------------------------------------------------- 今日のファッションは俺が白地にピンクのラインが入った競パンで、 ソラは黒地にブルーの模様が入ったスパッツだった。 背の低い建物ばかりの町には直線状に瓦礫の道が出来ていた。 「って、言っても何やろうかね〜?」 瓦礫を踏み潰しながら、足を進める。 ソラに問いかければ、うつ向き加減の顔を少し赤らめて「…知らねぇよ」と、はにかみ気味に答えた。 「……」 マジでカワイイ事で…。 ソラのウイウイシイ態度に微笑む。 ところで、本当に何をしようかな。 えっちぃ事がしたいし、小人ちゃんでも遊びたいし…。 辺りを見回して………………見付けたのは学校。 私立白雪中学校。 あはは。 見付けちゃいました。 御愁傷様。 美味しく、素敵に、ぐちゃぐちゃっとツカわせてもらいます。 -------------------------------------------------------------------------------- さっきの追い掛けっこせいもあってか、学校には生徒がかなり少なかった。 つっても、遊ぶのに十分な量は確保できた。 逃げ遅れた生徒の足を踏み潰しておく。 「さて…と」 何だか笑ってしまう。 「ちょ、ちょ…ちょっと待ってくれ!」 「やだよ。えっちぃ事したいもん♪」 ソラのスパッツを無理矢理剥いでいく。 「や…やめ…」 逃げ出そうとするところを尻尾を掴み、押し倒す。 そして、腕に力を込めて、股を開けた。 「やめろ〜ッ」 竜乃助には劣るけど俺の腕っ節も強い方だ。 ソラは細い方だから俺に抵抗出来ない。 ピンクの陰毛といきりたった男根が姿を表す。 全裸になったソラが腕で顔を隠した。 「……っ」 耳と尻尾は小刻に震えている。 「可愛いね。何だか犬みたい」 「五月蝿ぇ…狼…だぁ…っ」 小人を一匹、つまみあげる。 小人はかなきり声で命ごいをした。 下半身が潰れているのによく叫べたもんだ。 それに対し、ニコッと笑って、俺はソラのケツの穴に押し付けた。 ドップラー効果で悲鳴が消えていった。 何度も何度も、頭からすりつける内に、小人は潰れ、赤い液体になり、ローションになった。 そうなるとアエギと連動したソラの足や手が校舎や辺りにある物を薙ぎ倒した。 「っ…は……ぁ…ッ」 中指を徐々にずぶずぶと挿入するにつれて、呼吸は荒くなり、猥褻な顔付きになってきた。 指だけでこんなに反応するっつうことは今日は処女体験なのかな? ますますカワイイなぁ…。 真っ赤に染まった指の抜き指しの速さを速める。 すると、「や…そこ…や…ぁ」あえぎ声と一緒に、ソラが何か言った。 「とろけそうな顔して…何言ってんだよ」 どうやら余り深く挿さず、中途半端な位置をいじり回されるのがイイらしい。 「さて…と」 体勢を変えて、競パンから自分の息子をゆっくりと抜き出した。 ソラのケツの穴はヒクヒクしてなんとも………。 とにかく準備万端…ってこった。 「挿入れるから力抜いて」 「…いれ!?」 「うん?」 「………」 やっぱ抵抗があるのかな…。 ソラって……ドウなんだろうか? 俺は…バイセクシャルって自覚してる。 ソラは…いったい??? 「そっか…」 いくら義兄弟っと言っても初対面に近いもんなァ…。 抵抗あるのかな…。 …………。 我慢汁でとろとろなソラの息子を見つめた。 …………。 ……。 「あは」 …ソラの腰の辺りに馬乗りになる。 そして、俺の穴にソラの息子を迎え入れた。 ゆっくり…ゆっくり…挿入していく。 「っ…あ」 「♪」 ソラの眼が薄く涙で潤う。 「どう?」 ニッと笑ってソラに問掛けた。 どうって何も…って自分で思った。 自分が童貞を捨てた時もこんなんだったなぁ…なんて…懐かしい記憶を思い出す。 「あ…あったかい…な」 「だろーね」 もう一回笑う。 ソラが俺の温もりを感じている様に、俺もソラの肉棒の温もりを感じていた。 何だか…こういうのは久しぶりだな…。 竜乃助は…きっと嫌がる…いや退くだろうな。 ふと…そんなことが頭をよぎった。 いくら幼馴染みって言っても、竜乃助はノンケなんだから…。 ちょっとだけ、嫌なこと思いだしちゃったな………。 -------------------------------------------------------------------------------- 「ふぅ…」 一息ついて、小人を一匹つまみあげる。 今はソラの事に集中しよっ。 今度の小人は…虫の息だった。 残念な事に何匹かはソラの足や手がすり潰してしまっていた。 最後の…十センチくらいの小人を自分の息子に押し付けた。 「死ぬ前に面白いことしてやるから」 笑って、手の上下運動を始める。 それと同時に、ケツを閉めあげ、こちらも上下運動を。 急な行動にソラは驚く。 「あ…待て…ちょ………ぁ」 段々と赤い汁が、俺の息子を覆い、気持よくなってきた。 小人様様だねっ。 歩飛ばしる快感に、ソラは顔を真っ赤にして何か唸っている。 そして…、唸りが止まり、何秒かたった後に、櫻崎ソラは射精した。 暖かい液体が…感じられた。 早いなぁ…。 俺は手の運動を速める。 やっぱ…気持イイ。 一瞬、電撃のような快感が走り抜け、俺もソラに続いて射精した。 ピンクがかった精液は…辺りに飛び散り地面を汚したのだった。 一匹の小人が、その精液に溺れていた。 まだ生き残りがいたのか……、まあどうでもいいか…。 -------------------------------------------------------------------------------- その後、俺とソラは、お互い向かい合うように壊れかけた校舎にもたれかかった。 「どうだった?」 「……気持よかったっす」 「あは、良かった良かった。アンドオメデトー。脱童貞でしょ?」 「………」 ソラの顔が真っ赤になる。 「あーあ…何だか小人との絡みが少なかったな〜…なんて」 「そうか?十分殺しちまったぜ?」 ………。 「ん…まあね」 罪の意識ってやつか? ソラは何だか少し悲しげな顔をしている。 「ねえ」 「何だよ?」 「気になってたんだけど…」 「早く言えよ」 「ソラの家って何やってるの?」 話題変換。 転換会話。 「はぁ? 今の話からまったく脈絡無ぇぜ?」 「いいからいいから、教えてよ」 「……あのなぁ…」 少し辛そうになる、ソラの顔。 そして、言葉が続いた。 「罪で悪の最低でしかない…下劣な事で金儲けしてんだ…ボクの家はな……。って思った所で商売を突然やめられるわけでもないけどな」 「ふーん…………。」 しばしの沈黙。 ソラも真剣に考えたりするんだ〜。 って、失礼だけど…。 「じゃあ…さ、…その……罪は、誰が罰を与えるの?それとも、誰が許すの?」 「え……」 突然…ソラの顔が幼く見えた。 罪なんて…、そんなこと…。 誰でも、罪なんてものは持っていて…。 誰かの価値観がそれを決める。 どんなに悪だって、どんなに最低だって、どんなに下劣だって、だいたいは…結局人の価値観なんだから……。 だいたいは っていっちゃうのはなんだけど。 「許してあげるよ」 「は?」 「俺がソラの分の罪も何もかも背負ってあげるってこと〜」 「お……お前…ボクは……誰に殺されてもいいような…最低な人間なんだぞ!?」 ソラの手を掴んで、引き寄せる。 そして、抱き締めて、抱き締めて、抱き締めた。 「何…」 そしてキス。 「〜〜〜〜〜!?」 ザラザラしたソラの舌が俺を拒んだが、そのまま絡み付いて、熱〜い濃厚なキスを。 「っは…ぁ……だから…友達になろ? 理屈は抜きにして、正直、罪とかそんなことって関係ないし」 少し息が荒いながらも笑う。 「…馬鹿だろ、お前…」 「アホだよ。お義兄ちゃん♪」
桜と青は繋がった。 |
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2010/04/13(Tue) 21:27:25 no.137 |
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