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震災がれきを活用、東北に「森の防波堤」を 横国大の宮脇氏に聞く
編集委員 滝順一

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2012/2/1 7:00
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 東日本大震災で被災した東北地方の海岸線に「森の防波堤」をつくろう。国内外での植樹活動で知られる植物生態学者、宮脇昭・横浜国立大学名誉教授は森づくりの長い経験に基づくユニークな復興計画を提唱する。森を育てる土台には処分に困っているがれきが使えるという。

宮脇昭・横浜国立大学名誉教授
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宮脇昭・横浜国立大学名誉教授

 ――震災がれきを活用した「森の防波堤」とは。

 「震災で生じたがれきのほとんどは、家屋などに使われていた廃木材やコンクリートだ。これらはもともと自然が生み出したエコロジカルな『地球資源』だ。捨てたり焼いたりしないで有効に活用すべきだ」

 「海岸部に穴を掘り、がれきと土を混ぜ、かまぼこ状のほっこりしたマウンド(土塁)を築く。そこに、その土地の本来の樹種である潜在自然植生の木を選んで苗を植えていけば、10~20年で防災・環境保全林が海岸に沿って生まれる。この森では個々の樹木は世代交代しても、森全体として9000年は長持ちする持続可能な生態系になる」

 「将来再び巨大な津波が襲来しても、森は津波のエネルギーを吸収する。東北地方の潜在自然植生であるタブノキやカシ、シイ類などは根が真っすぐに深く地下に入る直根性・深根性の木であるため容易に倒れず波砕効果を持つ。背後の市街地の被害を和らげ、引き波に対してはフェンスとなって海に流される人命を救うこともできる」

 ――タブノキなどは常緑広葉樹ですが、東北地方の海岸で育つのですか。

 「人の手が加わらない自然の森を形づくる樹種を潜在自然植生と呼ぶ。岩手県釜石の北までタブノキなどの常緑広葉樹が自生できる環境だ。日本人が農耕生活を始める以前には常緑広葉樹の森があった。私たちの祖先が定住生活を始め耕作地をたくさん必要にするようになったため古来の森を伐採した。また古い森を伐採した後にスギやヒノキなどを植林したりもした」

 「しかし賢明であったのは、土地本来の森を全部なくしてしまわずに一部を残してきたことだ。各地に残る鎮守の森こそ日本の潜在自然植生を残した森だ。タブやカシ、シイを主木とし、ヤブツバキやシロダモ、ヤツデなど様々な樹種が混在して育つ多様性の高い森だ。東北の海岸線に南北300~400キロ、幅30~100メートルほどの鎮守の森を再生できれば、緑の防波堤となるだけでなく、鎮魂の場にもなり、後世の人々が緑を満喫できる自然公園にもなる」

 ――がれきを使うことに問題はないのですか。

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