※サイト掲載は年末を考えておりましたが、同人誌『
SAO:ME7
』の再版がしばらく困難となる状況を鑑み、少し早いですが公開させて頂きます。
ME7
をご購入頂いた皆様には申し訳ありませんがご容赦ください。また、掲示板の記事も併せて一読下さるとうれしいです。（九里）※〔 〕内はフリガナです。続・星なき夜のアリアアインクラッド第二層主街区《ウルバス》は、直径三百メートルほどのテーブルマウンテンを、外周部だけ残してまるごと掘り抜いた街だ。南のゲートから中に入ると、視界に【ＩＮＮＥＲ ＡＲＥＡ】の表示が浮かび、スローテンポな街区ＢＧＭが耳に届いた。弦楽器が主役だった一層各街の音楽とは異なり、哀愁を帯びたオーボエの音色が主旋律を奏でている。通りを行き交うＮＰＣの服装も微妙に意匠が変わっていて、『新しい層に来たんだ』という思いを新たにさせる。門から十メートルほど進んだところでぐるりと周囲を見回したが、プレイヤーを示す緑色のカーソルはひとつも目に入らなかった。それも当然だ。なぜなら、この第二層に続く階段を守護していた第一層迷宮区のボスモンスター《イルファング・ザ・コボルドロード》はほんの
四十分前に倒されたばかりであり、俺以外のボス攻略メンバーは全員一層の拠点へと戻ったからだ。つまり、いまこの瞬間、広大な第二層に存在するプレイヤーは俺
――
《元
β
テスター》改め《ビーター》のキリトただ一人、ということになる。何とも贅沢な話だが、もちろんこの状態が永続するわけではない。フロアボスの消滅からきっかり二時間後に、
次
層主街区（つまりこのウルバスのこと）の中
央
に存在する《
転移
門》が
自動的
に
有効化
〔アクテ
ィベ
ート〕され、下層の主
立
った街と
連結
されるからだ。その瞬間、
待
ち
構
えていたプレイヤーが
洪水
の
よ
うにゲートから
溢
れ
出
すは
ず
だ。もっとも、それは
逆
に
言
えば、もし
望む
なら俺はあと一時間二十分にわたってこの街
――
あるいはこの層を
独占
できるということでもある。それだけあれば、
普
通なら
他
人とモンスター
湧出
〔Ｐ
Ｏ
Ｐ〕の
取
り
合
いになりがちな
虐殺
〔スローター〕
系
クエストをさくさくと二つ、い
や
三つはクリアできるだろう。
究極的利己
主
義者
のソロプレイヤーとしては
実
に
魅力的
なアイ
デ
アだが、ゲート開通をいまかいまかと
焦
れているであろう
数
百
……
ことに
よ
ると
千
人以
上
を
本気
で
怒
らせる
よ
うな
度胸
はさすがに
持
ち
合
わせていない。
ゆ
えに、俺は
小走
りになりながらウルバスの街の目抜き通りをまっすぐ
北
に抜け、
幅
広の階段を
上
った
先
の広
場
に
辿
り
着
くと、中
央
に
設置
された大
型
の門に
歩
み
寄
った。門、と
言
っても
石積
みのアー
チ
がでんとそびえているだけで、
扉
も
格子
もついていないので
向
こう
側
の
光景
が
素
通しだ。しかし、間
近
から
よ
く見ると、アー
チ
中
央
の
空
間が
仄
かに
揺
らいでいるのに
気付
く。まるで、ごく
薄
い
水
の
膜
を通して見ているかの
よ
うだ。俺はアー
チ
の
手
前でぐるりと周囲を見回し、
退路
を
確
認
してから、
揺
れる
透明
な
べ
ールへと
ゆ
っくり
右手
を
伸
ばした。
黒革
のグローブに
包
まれた
指先
が、
垂
直に広がる
水面
に
触
れた
――
その瞬間。
ぱ
っ、と
眩
いブルーの
光
が
溢
れ、俺の
眼
を
射
た。
光
は同
心円
状に
脈動
しながら、
幅五
メートルほどもあるアー
チ
いっ
ぱ
いに広がっていく。
空
間が全て
満
たされたその時こそが、
転移
門の開通すなわち《街開き》というわけなのだが、俺はその
壮
大な
現象
を見届けることなく
身
を
翻
した。事前に見
定
めておいた、広
場
の
東
に
立
つ
教会
めいた
建物
へと
猛ダ
ッ
シュ
。入り
口
に
飛
び
込むや
、
奥
の階段を
転
がる
よ
うに
上
り、三階の
小
部
屋
の
窓際
に
背
中をつけるとそっと広
場
を見下ろす。ち
ょ
うど、ゲートの内
側
がひときわ
眩
く
輝
き、広
場
の
片隅
に
陣取
るＮＰＣ楽
団
が
高
らかに《開通ファンファーレ》を奏で
始
めたところだった。一瞬ののち、
青
い
光
に
満
たされたゲートから、
無数
のプレイヤーたちが色とりどりの
奔流
となって
溢
れ
出
た。広
場
の中で
立
ち
止
まり、き
ょ
ろき
ょ
ろ
辺
りを見回す
者
。
情報屋
から
買
ったと思しき
羊皮紙
の
地図片手
に一目
散
に
走
り
去
っていく
者
。そして
――
拳
を
突
き
上げ
、
「
二層来た
ぞ
――――
!!
」
と
絶叫
する
者
。
β
テスト時
代
には同様の《街開き》が
合計
九回行われたが、その時はもちろん
転移
門前に前層のボスを倒したレイド
パ
ーテ
ィ
ーが
並
んでいて、下からテレポートしてきたプレイヤーたちが
惜
しみない
拍手
と
賞賛
を
浴
びせるという
光景
が
繰
り広
げ
られた。しかし
今
回、
唯
一人の《開通
者
》である俺が
ダ
ッ
シュ
で
逃亡
してしまったため、そのイ
ベ
ントは
発生
し
よ
うがない。き
ょ
ろき
ょ
ろ
組
のプレイヤーたちはもしかしたら俺を
捜
しているのかもしれないが、残
念
ながら
名乗
り
出
るわけにはいかない。なぜなら、
数
十分前にボスが倒された直後、俺は四十人以
上
のレイドメンバーに
向
けて
宣言
したからだ。この
of 00
星なき夜のアリア「sao」SEQUEL
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| Upload Date: | 04/08/2012 |
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