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第2章 出会い
匣の意味が解らないまま、1週間が経過。

高橋美咲21歳・M大学4年生。4年の春になった今も、やりたい仕事が見つからないでいた。
それどころか、成績も思わしくない。卒業すら危うい状況だ。
そんな美咲は日々課題のレポートに追われ、あの匣の言葉さえ忘れていた。

課題のレポートも終盤に差し掛かり、こうなったら集中してやろう。と、何時も利用している
図書館でやることにした。

美咲は図書館に着くと、辺りを見回して席を探す。
館内は思っていたよりも空いていて、席は直ぐに確保できた。

あとは集中してやるだけ。だと、レポートに手をつけるが、すぐさま手詰まりになる。

資料を集めるべく席を離れ、目当ての項目がある棚へと足を運ぶ。
さすがに探すのに時間を要してしまったが、なんとか良い本を選ぶ事ができた。

目当ての本に手が届かないから背伸びをする。それでもまだ届かない。
絶対に諦めてなるものか。と手を伸ばしていたら、一人の長身の男が視界に入る。
こうなったら、この人に取って貰おう。と美咲は声を掛けることにした。

「あの、すみません。この本取ってもらえませんか?俺では届かなくて」
「あぁ。はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございました。って…イタッ!!」

本を受け取った瞬間、この男に右手首を掴まれた。
こんなことをしておいて、その男は至って冷静だった。

「おまえ」
「あの…俺なんか失礼なことしましたか?」
「いや…」
「じゃぁ。離してください」
「あぁ。すまなかった。つい……」
「いえ…では俺はこの辺で。ありがとうございました」
「美咲」
「えっ!?」

美咲は一礼をして踵を返した時、男に名前を呼ばれ目を丸くする。

「なぜ俺の名前を知ってるんですか?」
「俺は、おまえの兄、孝浩の親友だ」
「って……もしかして貴方が宇佐見秋彦先生!」
「そうだが?」
「うわぁ~すげぇ~本物だぁ」

この男、宇佐見秋彦はベストセラー作家で、美咲の兄・孝浩とは高校時代からの親友だ。
美咲は兄に、幼い頃から宇佐見のことを聞かされており、作品は読んでいないが名前は知っていた。

ミーハーな気持ちが出て、サインをもらおうとしたら、宇佐見からとんでもない事を云われた。

「成績がよくないと孝浩からきいたが、それは本当か?」
「はい。実は就職もまだ決まってなくて…」
「そうか。ならば、俺が家庭教師をしてやる」
「えっ!いいんですか?でも…すごく嬉しいんですが、お仕事忙しくないんですか?」
「大丈夫。何も心配するな」
「はい!では宜しくお願いします」
「ただし、条件がある」
「なんでしょうか。俺にできることがあれば何でもします」
「俺の家で住み込みでやること。条件は以上だ」
「はい。俺頑張ります」

宇佐見と約束を交わし、課題のレポートを片付けるべく席に戻っていく。
思わぬところで想わぬ人と出会ってしまった美咲。
この先、大きな運命が待っていようなど、この時は知る由もなかった。


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