「大津中2自殺」を後追いで報道するメディア
2012.07.09 12:00:00 記者 : 夕刊ガジェット通信 カテゴリー : 政治・経済・社会 タグ : 夕刊ガジェット通信
9カ月前の大津中2自殺がなぜ再び問題に?
2011年10月に滋賀県大津市の公立中学に通っていた男子生徒(当時13歳)が学校でいじめを受け、マンションから飛び降りて自殺した。「なかったこと」にされつつあったこのいじめ問題が、ここ数日でよみがえり、注目されている。
話がよみがえった理由は、男子生徒が通っていた学校が全校生徒に対して行ったアンケート調査の詳細が、いまになって明らかになったからだ。アンケートには、男子生徒がいじめた側の生徒から「自殺の練習」を強いられていたという記述が複数あったと言う。
学校側と大津市教育委員会(以下、市教委)は、男子生徒の自殺直後に「いじめはなかった」と言っていた。その後、アンケート調査を実施して、その結果からいじめがあったことは認めたものの、いじめと自殺の関連性は「不明」としていた。そして、調査はたった3週間で打ち切られる。
この時点で、アンケートの記述で「自殺の練習」を指摘する生徒がいたにもかかわらず、そのことは公表せず、いじめと自殺の関連性を認めないなどと言い張っていた市教委は、隠蔽体質だと指摘されて当然であろう。しかし、7月4日の記者会見で、市教委は厚かましくも「隠したとはとらえていない」などと言っている。
元々、学校と市教委がアンケート調査を行ったのは、いじめと自殺の関連性を「不明」とするための免罪符づくりだったのではないか。つまり、アンケートにそれらの関連性を示す記述があっても、はじめからそういう記述はスルーする。そして、「不明」にするための材料になる部分だけ抽出して、公表しようという意図が感じられる。
加えて、メディアの側には、なぜもっと突っ込んだ取材ができなかったのか、と問い正したい。いじめと自殺の関連性が疑われている問題なのだから、昨年のうちにあらゆる手段を講じた上でアンケート調査の結果を入手し、分析し、実態を明らかにすることなど、やろうと思えばやれたのではないか。なぜ、それをやらなかったのか。
今回、いじめと自殺の関連性が明らかになったのは、自殺した男子生徒の両親が大津市と加害側の生徒3人、そしてその両親に対して損害賠償を請求する訴訟を起こしたからだった。原告側である両親は、いじめと自殺を関連づける証拠として、学校が行ったアンケートを裁判所に提出した。
自らは動かないメディアの不誠実
ここ数日のメディアは、鬼の首を取ったかのように大津市や市教委、加害側の生徒らを糾弾している。報道で得られた情報によれば、大津市や市教委、加害側の生徒らが責められるのは仕方がないと筆者は思う。とはいえ、自殺した男子生徒の両親が入手できたアンケートを、なぜメディアが入手できないのか。入手しても黙っていたのか。それとも、入手する気がなかったのか。
いじめと自殺の関連性が疑われる問題について、自らはまともな調査や取材をせずに半年以上も放置しておきながら、今になって外部からの情報に基づき、「自分は正義だ」と言わんばかりに報じ続けているメディアに、読者のみなさんは何を感じるのだろうか。
(谷川 茂)
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