(24.7.9) NHK特報首都圏が報じた高額医療費問題は解決できるのか?
今回のNHKの特報首都圏は高額医療費の問題を取り上げていた。
私のように普段重篤な病気にかかったことのないものにとっては医療費は健康保険の3割負担で支払っており、時に「高いな」と思うことがあってもその程度で済んでいる。
しかし今回映像で紹介された慢性骨髄性白血病の患者の場合は抗がん剤としてスプリセルという薬を投与されていたが、一錠9000円でこの薬を毎日飲まなければならないと言う。
単純計算で月に27万円だ。
これは通常の家族の月収に等しい金額でとても支払うことが不可能だろう。
日本にはこうした高額医療費を補填する高額医療費制度(ただし正式名称は高額医療費)という仕組みが国にあって、年齢別・所得別に1ヶ月間に支払う医療費の上限が決められており、それを越える分については国の補助がある。
たとえば年間所得が210万円以下の70歳以下の人の場合は、限度額が35,400円を越える金額の支援があり、この患者が実際に支払っている金額は44,400円だった(金額が合わないのは他の費用がかかっているのだろう)。
この高額医療費制度の支援を受けている人は毎年増加して、今では金額が10年前の約2倍、1兆8千億円の規模に膨らんでいて、財政硬直化の一因になっている。
もともとこの高額医療制度ができた理由は、入院して手術を受けた場合など一時的に高額の医療費を支払わなければならなくなる患者を想定していたのだが、実際はこのように慢性的な疾患を持った患者の医療費補助に変わっている。
なぜ患者が高額医療費を支払うようになったのはがん患者が増え、手術後も長い間最近開発された副作用の少ない抗がん剤の投与が必要になったからだ。
従来の抗がん剤は非常に副作用が強くがん細胞以外の正常細胞にまで攻撃をかけて、がんで身体が弱まっているのか抗がん剤の副作用で弱まっているのか分からないような状態になっていた。
私もガンの治療だけは受けたくないと思ったのは会社の後輩ががんにかかり、約半年の入院治療の後死去したからだ。
その人はインターフェロンの注射を受けていたものの、注射後はほとんど意識が朦朧として投与を受けるたびに身体が弱まっていった。
がんよりインターフェロンの副作用のほうがきつそうに見えた。
「こんな症状になるのなら治療を受けないほうがましだな」そう思ったものだ。
しかし昨今は副作用の非常に少ない抗がん剤が開発されておりこうした医薬品を分子標的薬といい、遺伝子工学の成果としてがん細胞だけを標的にする抗がん剤だと言う。
とてもすばらしい抗がん剤だが、問題はほとんどの分子標的薬が高価で、患者の経済負担を超えてしまうことだ。
番組に出ていた乳がんの患者の場合はその他費用が膨らみ毎月10万円の負担をしていた。
この人はハーセプチンという標準的な抗がん剤を使用していたが、それでもこのように医療費が高額になる。
この個人負担の増額に対処するために民間の支援機関もあるが十分な支援にはなっていないと言う。
一方国庫負担もその増額に悲鳴を上げており、早晩限界に達しそうでこの高額医療費の問題は社会問題化しそうだ(現実にしている)と番組で紹介していた。
どうしたらいいのだろうか。ゲスト出演していた評論家の鳥越俊太郎氏は「社会全体で支える仕組みが必要で、民間の支援団体に対する寄付は税額控除すべきだ」と言っていた。
政府にこれ以上負担はかけられないので民間でサポートしようと言う案だ。
また東北大学の教授は「医薬品のうち通常の医薬品の個人負担割合を上げて、一方高額医薬品の個人の負担割合を減少さす必要がある」と述べていた。
簡単な病気の患者負担を重くして重篤な病気の患者負担を減らそうと言う案だ。
いづれも一定の効果はあるがそれだけではこの医療費問題を解決するのは不可能だろう。
私の案は世界には日本の医療を受けたがっている外国人はいくらでもいるのだから、外国人からは十分な医療費を負担してもらい、その分日本人の医療費を低く抑える方法を検討すべきだというものだ。
いわば医療による国家の再生で、輸出産業が崩壊した後の日本の基幹産業を医療・介護部門にすえると言う案だ。
どれが良いかはともかくあらゆる選択肢を試行してこの難問を解決しなければならないだろう。
なお、医療・介護分野を成長産業の要にする案については以下の記事に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat48360072/index.html
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