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(24.7.9) NHK特報首都圏が報じた高額医療費問題は解決できるのか?

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 今回のNHKの特報首都圏高額医療費の問題を取り上げていた。

 私のように普段重篤な病気にかかったことのないものにとっては医療費は健康保険の3割負担で支払っており、時に「高いな」と思うことがあってもその程度で済んでいる。

 しかし今回映像で紹介された慢性骨髄性白血病の患者の場合は抗がん剤としてスプリセルという薬を投与されていたが、一錠9000円でこの薬を毎日飲まなければならないと言う。
単純計算で月に27万円だ。
これは通常の家族の月収に等しい金額でとても支払うことが不可能だろう。

 日本にはこうした高額医療費を補填する高額医療費制度(ただし正式名称は高額医療費という仕組みが国にあって、年齢別・所得別に1ヶ月間に支払う医療費の上限が決められており、それを越える分については国の補助がある。
たとえば年間所得210万円以下の70歳以下の人の場合は、限度額が35,400円を越える金額の支援があり、この患者が実際に支払っている金額は44,400円だった(金額が合わないのは他の費用がかかっているのだろう)。

 この高額医療費制度の支援を受けている人は毎年増加して、今では金額が10年前の約2倍、1兆8千億円の規模に膨らんでいて、財政硬直化の一因になっている。
もともとこの高額医療制度ができた理由は、入院して手術を受けた場合など一時的に高額の医療費を支払わなければならなくなる患者を想定していたのだが、実際はこのように慢性的な疾患を持った患者の医療費補助に変わっている。

 なぜ患者が高額医療費を支払うようになったのはがん患者が増え、手術後も長い間最近開発された副作用の少ない抗がん剤の投与が必要になったからだ。

 従来の抗がん剤は非常に副作用が強くがん細胞以外の正常細胞にまで攻撃をかけて、がんで身体が弱まっているのか抗がん剤の副作用で弱まっているのか分からないような状態になっていた。

 私もガンの治療だけは受けたくないと思ったのは会社の後輩ががんにかかり、約半年の入院治療の後死去したからだ。
その人はインターフェロンの注射を受けていたものの、注射後はほとんど意識が朦朧として投与を受けるたびに身体が弱まっていった。
がんよりインターフェロンの副作用のほうがきつそうに見えた。
こんな症状になるのなら治療を受けないほうがましだな」そう思ったものだ。

 しかし昨今は副作用の非常に少ない抗がん剤が開発されておりこうした医薬品を分子標的薬といい、遺伝子工学の成果としてがん細胞だけを標的にする抗がん剤だと言う。
とてもすばらしい抗がん剤だが、問題はほとんどの分子標的薬が高価で、患者の経済負担を超えてしまうことだ

 番組に出ていた乳がんの患者の場合はその他費用が膨らみ毎月10万円の負担をしていた。
この人はハーセプチンという標準的な抗がん剤を使用していたが、それでもこのように医療費が高額になる。

 この個人負担の増額に対処するために民間の支援機関もあるが十分な支援にはなっていないと言う。
一方国庫負担もその増額に悲鳴を上げており、早晩限界に達しそうでこの高額医療費の問題は社会問題化しそうだ(現実にしている)と番組で紹介していた。

 どうしたらいいのだろうか。ゲスト出演していた評論家の鳥越俊太郎氏は「社会全体で支える仕組みが必要で、民間の支援団体に対する寄付は税額控除すべきだ」と言っていた。
政府にこれ以上負担はかけられないので民間でサポートしようと言う案だ。
また東北大学の教授は「医薬品のうち通常の医薬品の個人負担割合を上げて、一方高額医薬品の個人の負担割合を減少さす必要がある」と述べていた。
簡単な病気の患者負担を重くして重篤な病気の患者負担を減らそうと言う案だ。

 いづれも一定の効果はあるがそれだけではこの医療費問題を解決するのは不可能だろう。
私の案は世界には日本の医療を受けたがっている外国人はいくらでもいるのだから、外国人からは十分な医療費を負担してもらい、その分日本人の医療費を低く抑える方法を検討すべきだというものだ。
いわば医療による国家の再生で、輸出産業が崩壊した後の日本の基幹産業を医療・介護部門にすえると言う案だ。


 どれが良いかはともかくあらゆる選択肢を試行してこの難問を解決しなければならないだろう。

なお、医療・介護分野を成長産業の要にする案については以下の記事に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat48360072/index.html

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(24.7.3) NHK  「日本のがん医療を問う」 世界最先端の医療大国になるために

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 私は常日頃から日本が21世紀に生き残る戦略は医療大国になって世界中の患者を引き受けることだと主張してきたが、今回NHKスペシャル「日本のがん医療を問う」を見て、まだまだ道半ばだなと言う感を強く持った。

 日本では今から5年前に「がん対策基本法」が制定され、日本全体にがんの拠点病院を整備して「日本のどこにおいても世界で標準とされているがん治療をできる」ことを目標とした。
そして5年後の現在397箇所の拠点病院は設定されたものの中身はまだまだと言う状況のようだ。

注)5年前には拠点病院がない県が3県あった。

 日本は世界にまれに見る高齢化社会で老人が圧倒的に多く、その分がん患者が多い。年間70万人が発病し、死亡原因の二人に一人ががんだという。
いわば世界に冠たるがん大国なのでその対策が問われてきて、がん対策基本法もその対策の一環であるが、せっかく設定された拠点病院ごとの格差が大きいのが問題だと言う。

 拠点病院では内科・外科・放射線技師・抗がん剤担当医等のチーム医療がなされることになっているが、特に抗がん剤担当医が不足していて多くの地方にある拠点病院がチーム医療ができていない。
たとえば和歌山県には6つの拠点病院があるが、抗がん剤の専門医がいるのは1箇所だけで、他の病院には専門医がいない。

 実は専門医の育成は時間がかかり年間200人程度しか育成できないので、現在まで1000名程度の育成が終ったが、本当に必要な人数は約2000名だという。
現状では目標までは5年程度の時間がかかると番組に出ていた国立がん研究センター堀田教授が言っていた。

 また新潟県の事例では拠点病院といってもレベル差がおおきく、国立がんセンター新潟に難しいがん患者が殺到していた。
他の拠点病院では満足できる説明や治療を受けられなかったのがその理由だが、医師のレベル差が大きく、標準的な高度の治療と言うわけには行かないようだ。

 しかしこのあたりになると、私でも通常近くの病院を選ぶ場合に、知人から知識を得たりインターネットで検索して病院の評判を確認してからかかっている。
ただしこれは手間隙かかる方法で、自らチェックをしなくて済む様に「がん対策基本法」では医療登録制度を設けすべての拠点病院の治療結果国立がん研究センターに集めて分析し公表するようにしていた。
この病院の○○がんの治癒率は高く優秀な病院だ」とか「この病院では標準的な治療をしていない」等の情報を与えるためだが、残念ながら登録情報に不足があって治癒率については正確な情報が得られていないのだそうだ。

 なぜ正確な治癒率が分からないかと言うと、拠点病院の治療結果は分かるのだが、患者が病院を変えてしまった場合は(抗がん剤の治療は近くの病院で行う等)データが得られなくなり、また最も重要な術後生存率の情報が死亡時期が不明のために分からないのだと言う。
この死亡を確認するためには住民票の確認が必要になるが個人情報保護の観点から情報を地方自治体が出してくれないのだそうだ。
通常手術後5年間生存すればその手術は成功とみなされるが、せっかく手術や抗がん剤治療をしてもそれが成功したのか失敗したのか分からないと言う。

注)あまりに個人情報保護法の取り扱いが硬直的なため、厚生労働省では法律を改正して術後死亡率を自治体から教えてもらう変更を検討していた。

 また一般的な胃がんや大腸がんはともかく、小児がんのような年間発生件数が2500人程度の症例が少ないがんについては、すべての拠点病院で対応するのではなく10箇所程度に集約してそこで集中的に小児がん患者を見るように今回見直しをすると言う。
そうしないと執刀医がまったく小児がんを知らずに専門書を確認しながら手術をすることになり、生き残る命も生きながらえることができなくなるからだと言う。

 私がこの番組を見て最も残念に思ったのは、滑膜肉腫と言う特殊ながんに対する抗がん剤の開発が日本では不可能でアメリカで臨床試験をしているとだった。
この抗がん剤を開発したのは東大の中村教授だが、厚生労働省に臨床試験の申請と補助を求めたところ、臨床例が少ないからとの理由で却下されてしまった。

 中村教授は仕方なしにアメリカのシカゴ大学に移り、そこでアメリカの国立がん研究所の支援で臨床試験を行っていた。
私はまったく知らなかったが日本では臨床試験を行うことが非常に難しいらしい。
新薬の研究については文部科学省と経済産業省が後押しをしてくれるのだが、臨床試験とその結果の審査・承認は厚生労働省が行い、研究から開発にいたる流れが途切れていて厚生労働省が待ったをかけていることが多いようだ。

注)臨床試験には多額の費用がかかるため、厚生労働省は多くの患者が見込まれる新薬にしか臨床試験を認めない。せっかく文部科学省が後押しして実施した画期的な研究も日の目を見ることがない。

 厚生労働省主体の開発でないため、他の省の成果になる新薬承認には積極性がなく、それよりも副作用等で訴えられないように承認には消極的になっている。
それでも「がん対策基本法」ができたおかげでかつては10年かかっていた新薬承認が今では1年2ヶ月に短縮したのだから相応の成果はあがっている。

 それにしても残念なことだ。日本人が開発し、また日本国内にその臨床試験に応じたい患者がいるのに厚生労働省は予算措置との関連で待ったをかける。
アメリカでは国立がん研究所が研究から承認まで一貫して権限を持っており、臨床試験の予算規模は800億円だと言う。
これはアメリカが医療産業を戦略的に支援しているからに他ならない。

 何度も言うが日本の21世紀の成長産業は医療・介護以外には考えられない。何しろ老人大国で患者数は世界最高にいてしかも次々に病気になるのだからこれこそが最高の成長産業だ。
それなのに日本には医療産業を国家戦略として育成する意思が弱く、各省庁が縄張り争いをして臨床試験一つをとってもアメリカに遅れているのはなんとも残念なことだとため息が出た。

なお私が常日頃から言っている医療・介護産業を成長産業の中心にすげるべきだとの主張は以下の記事を参照してください。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-03c8.html

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(24.3.30) 閉鎖社会日本の現実  外国人介護福祉士の試験結果

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(ブログ「ちば公園のベンチから」に掲載されている利根川から見た朝日。このブログでは毎日のように利根川の朝日の写真を掲載しています

 日本はやはり閉鎖社会ではなかろうかとしみじみ思ってしまった。
1月に実施された介護福祉士検定試験の結果が発表されたのだが、EPA(経済連携協定)で受け入れたインドネシア人94名のうち合格者は35名で、他に1名のフィリッピン人の合格者がいたため外国人の合格率は37.9%だと言う。

 日本人を含めた全体の合格率は63.9%だと言うからインドネシア人にとって合格するのは並大抵のことではなさそうだ。
インドネシア人の介護福祉士候補者は4年間日本で介護の現場にいられるのだが、3年間の実務経験が受験条件だから実際に試験を受けられるのは4年目の1回だけになる(ただし特例として不合格者でもある一定の成績をとればもう一年間試験を受けられる。なお合格すればそのまま日本で仕事ができるが不合格になるとインドネシアに帰らねばならない)。

 37.9%と言う合格率は看護師試験の外国人合格率10%に比較すればはるかに高いが、厚生労働省の本音は外国人労働者の排除にある。
なぜそれが分かるかと言うと厚生労働省は試験において外国人に一切配慮をしないからだ。

 インドネシア人が日本語を覚えるのも大変なのに、ましてや一般の日本人でさえ読むこともできないような言葉を平気で試験問題に出す。
たとえば「嚥下という言葉が試験問題に出ているが、私はこの言葉を読むことも内容も知らない。
私のように大学を出て金融機関で40年近く勤務し、誰が見ても日本人そのものの私が知らないことを、日本語がまともに理解できないインドネシア人が知っているほうがおかしい(ただし来年からはすべての漢字にひらがながふられる)。

 厚生労働省としては介護福祉士専門職だから当然こうした漢字を外国人も知るべきだと思っているようだが、それなら厚生年金基金689人も天下っている厚生労働省と旧社会保険庁の資金運用担当者にインドネシア人と同様の試験を課したのか聞いてみたいものだ。

 基金の運用担当者は専門職である。
運用担当者として天下る以上は、金融機関での3年間の実習とディリバティブを含む運用関連知識の試験を受けるべきだ(特にディリバティブの契約書は英語だから英語で出題する。専門職だから当然だ)。
そうでなければAIJにころりとだまされ、厚生年金の特例運用部分が食いつぶされてしまうし、実際そうなっている。

 厚生労働省のダブルスタンダードはひどいものだが、さらにひどいと思われるのは介護報酬の支払い基準である。
介護対象者3名に介護者1名を配置するのが基準で、この介護者に対し厚生労働省は介護料を支払っている。
この場合の介護者は日本人であれば介護福祉士の資格を持ってなくともかまわないが、外国人の介護福祉士候補者はカウント対象外になっている。

 日本人なら誰でも介護者と認定するのに外国人の場合は国家試験を通らないと一人前に扱わない。
しかし日本にやってくるインドネシアの研修生は本国で介護士の認定を受けた人ばかりで、日本のど素人よりはるかに仕事ができる。
しかし実態はそうでも受け入れ施設では厚生労働省から介護料が支払われないので自腹を切って雇わなくてはならない。

 このため外国人研修生を受け入れる介護施設は毎年のように減少し、それに伴ってインドネシアやフィリピンから日本にやってくる外国人研修生も減ってきて、そのうちにゼロになりそうだ。
だがこれこそが厚生労働省の目的だから、試験にはできるだけ難しい漢字を出すし、介護料は一切支払わない(最近や夜勤だけは支払うようになった)。

注)研修生の推移 08年 104名、09年 406名、10年 159名、11年 119名。

 なぜ厚生労働省がサボタージュとも言えるような研修生に対するひどい仕打ちをするのかというと、このEPA締結に伴う研修生の受け入れは経済産業省と外務省が主導しているからだ。
経済産業省としては国内産業の空洞化を防ぐ目的で日本製品の輸出先で高関税をかけられないようにしたいし、そのためには国内産業を開放して相手国の要望を聞き入れなくてはならない

 日本において閉ざされた産業部門としてはこの医療・介護部門農業部門しかない。
特に医療現場は四六時中人手不足だ。だから外国人研修生を受け入れると現場では大助かりだが、厚生労働省としては天下り先のようなメリットはまったくない。
何しろ相手は海外で厚生労働省は海外に利権を持っていない。
経済産業省や外務省の得点だけになる外国人研修生など受け入れるな。ポーズだけして最後はゼロになるような制度をつくれ。制度の所管はわが省だ」と言うことだ。

 日本は省あって国家がない。輸出産業亡き後の戦略的な産業は老人が世界で最高速度に増えている医療・看護の分野しかない。
しかしここは厚生労働省の所管で、厚生年金基金のような天下り先がない限り外国人研修生を受け入れるメリットはない。
だから国家試験と制度の両面から外国人労働者を締め出すのが厚生労働省の戦略になっている。
嘆かわしいことだ。

なお、経済成長と医療部門の関係の記事は以下にまとめてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat48360072/index.html


別件 )
先日おゆみ野クリーンクラブのカンパを依頼しましたが、そっさく何人かの方が応じてくださり心から感謝いたします。花見までには塗装を終了させておきます。

なお、依頼文は今月いっぱい下記に継続して掲載いたします。


従来おゆみ野四季の道の清掃関係や塗装関係費は自費で調達してきましたが、生活費がかさみ思うに任せなくなってきております。
おゆみ野在住者で、かつ四季の道を日常的に利用されている方で、四季の道を世界でもっとも美しい道にする活動に賛同される方に、ペンキ代のカンパをお願いいたします。


① カンパは一人3000円(ペンキ1.8L 一缶の値段)をお願いできないでしょうか。年間のペンキは約20缶程度です。

② カンパの件数、金額は毎月1回このブログで報告します。また決算報告は年1回行います。

③ 賛同していただける方は以下の口座に送金いただければ幸いです。なお送金していただいた場合は同時にこのブログのメール機能を使ってその旨連絡いただけると幸いです。


・千葉銀行 鎌取支店(092)
・おゆみ野クリーンクラブ 普通預金口座(3743511)



 

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(24.2.13) 日本再生のために 医療・介護産業の振興を!! 再録

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  信じられないかも知れないが、私が医療・介護産業こそが日本の唯一の成長産業だと確信している証拠がある。
私の住んでいるおゆみ野の最寄の駅はJR鎌取駅なのだが、鎌取駅に設置してある広告掲示板線路をはさんでホームの反対側にある)のほとんどが医院の看板なのだ。
かつてはここに予備校大学消費者金融不動産会社の広告が掲示されていたのに、今では病院以外の広告を見つけることが難しい。
なんだい、おゆみ野には病院しかないのかい!!!」笑ってしまった。

注)さらに言うとこの19日に「四季の道駅伝」が開催されるが、そのスポンサー50社のうち30社が医療関係だった。

 実際日本においては医療・介護産業以外の成長産業は見当たらない。
長い間日本は輸出産業により収益を稼ぐ構造だったが、11年度はとうとう貿易収支約2兆円の赤字に転落してしまった。
輸出産業があまりの円高や、東日本大震災の影響を見て日本から逃げ出してしまったからで、日本はすでに貿易立国ではなくなっている。

 唯一の稼ぎ頭は蓄えた資金の投資収益で、アメリカ国債の利息や、直接投資をした結果の配当金や、株式や投資信託の利息がそれに相当する。
11年度の経常収支約10兆円の黒字になったのはこの投資収益所得収支という)の14兆円があったからで、これがなかったら日本は経常収支の赤字国になっていたところだ。

注)経常収支=貿易収支+所得収支+サービス収支+その他(ODA)

 しかしこの状態も楽観視できないと週刊エコノミストが警告を発した。早ければ2015年にも経常収支の赤字転落が予想され、そうなると日本はギリシャ並みの経済になってしまうと言う警告だ。
貿易収支の赤字が拡大し、一方所得収支がアメリカ国債のような低利回り商品(3%程度)への投資ばかりだと、所得収支で貿易収支の赤字を埋めることができなくなるという。

 実際問題として輸出産業が崩壊した後に残された成長産業は医療・介護産業だけだろう。
これは少し考えてみれば誰でもわかることで、日本は現状でも65歳以上老人人口が23%で世界最高で、しかもこの比率は平均寿命が伸びることによってますます高くなっていく社会だ。
すでに過疎の村や地方の小さな町を見てみるとどこでも現れている現象で、歩いてみると老人しかいない。

 私の住んでいるおゆみ野毎年500人程度の人口増があるまれな町だが、それでも整形外科医に行ってみると老人がわんさと押し寄せており、スポーツジムのような器具を使ってリハビリを行っている。
そこにいる人が老人でなければほとんどスポーツジムと見間違うぐらい壮観だ。

 厚生労働省は少子高齢化年金医療保険制度問題としてのみ捉えており、年金がパンクして医療費で国家財政が崩壊すると警鐘を鳴らしている。
しかし、この高齢化をそのようにマイナスに捕らえるのは間違いだ。
老人は病気がないほうが不思議と言うくらい病気持ちなのだが、これは医療・介護産業にとっては増大する需要が無尽蔵に存在していることを意味する。

 産業にとっては需要があることが絶対の条件で、病気であってもそれが需要であれば大歓迎だ。
日本は世界最速の高齢化社会なのだから、結果的に医療・介護産業は世界最大規模で栄えることができる。
石を投げれば老人に当たってもいい。それが需要者ならば!!」経済学的にはそうなる。

注)ただし詳細に見ると医療産業と言っても小児科や産婦人科は衰退産業と言える。何しろ子供が少なくなっていくのだからここには需要がない。

 さらにこの世界最高水準の医療・介護産業を世界に開放すれば、世界中の金持ちが日本にやってくる。
こうした人々は自由診療の世界だから最高のもてなしをすればいい。

 現在日本のサービス収支は海外旅行等で赤字だが、海外の金持ちの患者を受け入れれば医療サービスで黒字化が可能になる。
貿易収支の赤字を所得収支とサービス収支で埋める構造が定着するので、日本経済の崩壊をとどめることができるだろう。
何事も「禍福は転ずる」のだ。

 世界最大の老人大国がもっとも豊かな国になるのはこの医療・介護産業の振興と国際化しかないと私は思っている。

注)医療従事者は医師と看護師と薬剤師とレントゲン技師だけかと思っていたら実に広い裾野があることを知った。
助産師、理学療法士、作業療法士、カイロプラター、歯科衛生士、細胞検査士、診療情報検査師、整体師等上げればきりがない。
さらにそうした専門家を育てる教育機関や、製薬会社群を含めると一大産業と言える。


なお経済成長に関する記事は以下にまとめてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43696146/index.html

 

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(24.1.4) 日本の医療の現状と成長産業としての役割




 私のように普段医者には患者としてしか接していないものから見ると、日本の医療問題というのはわかりにくい。
一番わかりにくいのは日本では医者が不足しているのかそれとも過剰なのかさっぱりわからないことだ。

 ながらく日本では医師は過剰だといわれてきた。このあたりは医師会のギルド体質があって、平成9年からは明確に医師・歯科医師の抑制策がとられてきた。
この状況がいっぺんに変わったのが平成15年から導入された新臨床研修医制度である。

 それまではインターン医師は医局実際はその医局のボスである大学教授)の支配下にあり、大学病院で研修しその後地方の病院等に派遣されていたが、新制度導入でそうした縛りが効かなくなった。
研修は学生が望む場所であればどこでもよくなり、また配属される診療科も自由に選べるようになったため、「大学病院で奴隷のようにこき使われるのはいやだ」という学生が多くなり、また「産婦人科や小児科や脳外科は勤務がきつすぎるので割りに合わない」と敬遠されだした。

注)当時医局制度は奴隷制度だとのキャンペーンがマスコミを中心にされていた。

 このため医局が強権でバランスをとっていた医師の適正配分が崩れて自由競争下におかれるようになったため、過疎の病院や割に合わない産婦人科などはたちまちのうちに医師不足に陥ったのである。
現在はこうした状況下にあり、絶対数としては医者はいるのだが偏在が激しいというのが実態だと私は思っている。

注)ただし厚生労働省は2008年(平成20年)以降医師は絶対数が不足しているという立場をとっている。

 厚生労働省の調査では私の住んでいる千葉県は意外にも医師数が少ない県で、最悪は埼玉県、次が茨城県で、千葉県ワースト3位ということになっている。
この数字はどう見ても実感とは乖離している。
私の住んでいるおゆみ野などは町を歩けば医者に当たるぐらいで、病院にいくのにも「どの医者が評判がいい?」なんて聞きまくってからいくくらいだから、患者側に選択権がある。

 知り合いの歯科医師が「最近は歯科医が増えすぎて病院経営も大変なんだ。倒産している病院もあるよ」といっていたくらいだからこの不足と過剰問題はどのような立場(地域、診療科、大学病院、役所等)で発言するかで異なっているようだ。

 実は私にもこの問題については意見があって、日本ではさらに多くの優秀な医師を育て上げることが急務だと思っている。
それは日本が完全に閉塞感に陥り、輸出産業が海外に出てしまった後の成長産業がまったく見当たらないからだ。
そうした中で医療費は毎年確実に2~3%増加している。自動車や家電産業は毎年縮小しているから、医療は日本における唯一といっていいほどの成長産業だといえる。

注)医療費の増加を成長産業だという視点で捕らえる人はなく、通常は国庫負担の増大問題として認識される。

 
日本の生きる道は唯一残されたこの成長産業を磨きをかけ医療大国になることだと思う最大の理由が日本の優秀な学生がすべて医学部に進んでいるからだ。

 学生側から見るとこれほど投資効率のいい職業はなく、「絶対にくいっぱぐれがなく、地位と名誉は思いのままだ」という職業はそうはない。
そんなわけで日本の人的資源はほとんど医学部に吸収されているのだが、残念ながら国内だけの競争にとどまり世界レベルでの競争力はほとんどない

 たとえばノーベル賞受賞者16名国籍の関係があって数え方で人数が異なる)を見ても、受賞者は理学部工学部出身者で占められ、医学賞利根川進氏のたった一人だ。
これは「頭がいい人が医学部に進む」という現実とまったく合わない。

 実際は唯一の人的資源が眠っている。
現在世界の医療はアメリカが引っ張っていて多くの金持ちのアラブ人やアジア人がアメリカで治療を受けている。
金持ちの病人にとっては費用はどうでもよく、最高度の医療で病気を回復させてくれることを願っているのだから、最高のお客様だ。

 私はこうした患者を日本で治療を受けさすようにして外貨を稼ぐのが一番だと確信しているのだが、信じられないことに医師会は絶対反対で、今回のTPP参加においても「日本の世界に誇る医療保険制度が崩壊するので反対だ」と言っていた。

注)金持ちの外国人が多く日本にやってくると日本人の診療に支障が出るというのがその論理。

 だが考えても見てほしい。日本でもっとも優秀な人材を投入している医療の分野で「世界と競争することができない」といっては、私のような医学部以外の出身者は立つ瀬がない。
日本は輸出産業で食ってきた国なのにそれがなくなって貿易収支が赤字11年度)に転落し今後とも期待できない。
残った競争力が期待できる分野は医療以外に見つけることができないではないか。

 これからは医療業務といったサービス収支を増やさない限り日本に未来はないと腹をくくるべきだと私は思っている。
医師会は個人的利益ではなく日本のために貢献すべきだ。

なお経済成長に関する記事は以下にまとめてあります。http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43696146/index.html


別件)「おゆみ野四季の道」のカウンター10000を追加しました。
 


 

 

 

 

 

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