小沢新党生き残りへ「オリーブの木」作戦

　明日１１日に新党を立ち上げる小沢一郎元民主党代表（７０）が９日、地域政党とのタッグに動きだした。「減税日本」の河村たかし名古屋市長（６３）が、都内で開いた東京事務所開所式に駆けつけ、「基本的な考えは同じ」とアピール。次期衆院選で台風の目となる第３極との連携を模索するが、河村氏は「まずは東京、大阪」と、つれない返事。ほかの勢力との連携も、青写真は描けていない。一方、小沢氏に近い達増（たっそ）拓也岩手県知事（４８）が、知事として初めて民主党離党→小沢新党参加を表明した。

　小沢氏が“意中”の相手にラブコールを送った。９日夜、新進党時代から親交がある河村氏が開いた「減税日本」東京事務所開所式に出席。かつて自民党本部や田中角栄元首相の派閥事務所、中曽根康弘元首相の事務所が置かれ、戦後日本政治史の中心舞台だった砂防会館に、東京の城を構えた河村氏を「いよいよ天下取りを願っているのでしょうか」と、持ち上げた。

　さらに「私と河村さんは細かい点では見解が異なる」としながらも、「基本的にはまったく同じ考え。今後も皆のために役立つという気持ちを持ち、力を合わせて頑張りたい」と述べた。「河村さんは、自分の信念を貫き通す男。悪く言えば頑固でわがままだが、その意味では私も似ている」。減税を訴える河村氏と、増税法案に反対して民主党を離れた自身を重ね合わせ、蜜月をアピールした。

　党内最大勢力を率いた民主党を離れ、「数の力」を失った小沢氏は、次期衆院選後をにらんで、全国の首長が率いる地域政党と共闘する「オリーブの木」作戦に、新党の生き残りを託している。次期衆院選では、既存政党と距離を置く第３極の台頭が見込まれており、共闘先の枝葉を増やし、勢力拡大につなげるもくろみだ。「減税日本」のほか、橋下徹大阪市長（４３）の「大阪維新の会」や、大村秀章愛知県知事（５２）の「日本一愛知の会」などが取りざたされている。

　ただ、河村氏は、小沢氏が帰った後の取材に、「いろいろ応援はさせてもらうが、ずっと東京、大阪（との連携）でやってきた。まずはそれをちゃんとやりたい」と述べ、小沢新党より、橋下氏や石原慎太郎都知事の「石原新党」との関係強化優先を明言。小沢氏のラブコールには消極的だった。ほかの地域政党も総じて、小沢新党とのタッグに慎重で、現状は小沢氏の“片思い”になっている。

　これに先立ち、国会議員時代から小沢氏と行動をともにしてきた達増氏が、小沢新党に参加する意向を示した。小沢新党に参加を表明した知事は初めて。地域政党との連携を円滑にしたい小沢氏の「サプライズ」との見方もあるが、木の枝葉が広がる見通しはまだ立っていない。【中山知子】

　◆オリーブの木　９６年に小選挙区制のイタリア政界で生まれた「中道左派連合」のこと。政界再編が進んだ９５年、右派連合ベルルスコーニ政権に対抗するため、１２の中道、左派政党が、産業相として財政改革の実務経験があったプロディ氏のもとに結集。「右と左」の不毛な激突を回避、幅広い政党による緩やかな連合体「オリーブの木」で勝利した。０１年にベルルスコーニ氏の中道右派が政権奪回。０５年に中道左派９党が「ユニオン」の名で再びプロディ氏を首相候補に迎え、０６年の総選挙で勝った。

　［2012年7月10日9時4分　紙面から］