8月20日、阪神甲子園球場。高校球児の誰もがあこがれる全国高校野球選手権大会の決勝。7回途中から背番号10はマウンドに上がった。
相手は強打の日大三高。エースは7回までに9失点していた。同大会で一度登板し「甲子園でも通用するという自信を得られた」というが、続く8回に2失点。チームは0―11で敗れ、東北勢初の優勝は叶わなかった。
それから半月もたたない9月上旬、進学先の東北福祉大学で練習する李選手の姿があった。同大学は、尊敬する叔父で、光星学院の元監督を務めた金成奉氏の出身校である。同氏もたまに指導に訪れ、野球に打ち込める環境が決め手だった。
野球を始めたのも叔父がきっかけだった。小学校1年生のときに甲子園で叔父が率いる光星学院を見て「光星に入って甲子園に出たい」と夢を抱いた。入学当時はベンチに入れる自信もなく、時に日付けが変わる頃まで続く練習と、その後の洗濯などでやめたくなることもあった。そんなとき、母からの「今までやってきたことを思い出して。全力を出せばできるから」という言葉に励まされた。
練習を休んだことは子どもの頃からほとんどない。今は、ストレートのキレと球種を増やすことを目標に練習に打ち込む。全国屈指の強豪校でベンチに入り、いつかは神宮の舞台に立って大学日本一になることが今の目標だ。 |