野田佳彦政権は、沖縄・尖閣諸島を国有化する方針を固めたが、中国は着々と尖閣奪取計画を進めている。中国人民解放軍のタカ派少将が、尖閣諸島に中国の行政区を設立したうえで、周辺海域を軍事演習区にするといった「6大戦略」を発表したのだ。日本固有の領土を強奪する悪だくみ。中国の恫喝外交に対して、野田首相は毅然とした姿勢を貫けるのか。
許し難い発表をしたのは、これまでも「尖閣諸島に中国軍の軍事施設を建設せよ」などと発言してきた羅援(ラ・エン)少将。中国人民解放軍のシンクタンク、軍事科学院世界軍事研究部元副部長で、中国軍事科学学会常務理事・副秘書長を務めるなど、「強硬派の論客」と目されている。
今月1日、香港のフェニックステレビに出演して、以下の6大戦略を発表した。
(1)尖閣諸島に「中国台湾宜蘭県釣魚島鎮(=町)」を設立。
(2)不明確な尖閣諸島の領海の基線を設定。
(3)周辺海域を軍事演習区とし、航空部隊の射的場に使用する。
(4)日本の海上保安庁に対抗する国家海岸警衛隊の設立。
(5)開発集団(=企業)を設立し、石油探査と漁業、旅行を担当。
(6)世論を味方に付ける。
この6大戦略を「タカ派少将の突出発言」と軽く見てはならない。
羅援少将は今年3月、ベトナムやフィリピンと領有権争いがある南シナ海に対しても同様の「5大提案」を行ったが、中国政府は3カ月後の6月、提案を受け入れて、南シナ海の西沙、南沙、中沙の各諸島を管轄する「三沙市」を設立すると発表したのだ。
尖閣諸島は1895年、日本がどの国にも属していないことを確認して領有を宣言した。ところが、国連が1971年、尖閣付近の海底に石油や天然ガスなどが埋まっている可能性を指摘すると、中国は突然、「自分たちの領土だ」と言い始めた。
最近では、尖閣諸島について、チベット自治区や台湾などに限って用いてきた「核心的利益」と呼び始めるなど、さらに領土的野心をあらわにしている。羅援少将の発言もあり、中国政府がいつ「尖閣諸島に行政区を設置する」と発表してもおかしくない。
尖閣諸島を、都が保有するか、国が保有するかでもめているが、そのような時期は過ぎた。野田首相にも、石原氏にも、尖閣の実行支配に向けて具体的な手を打ち始めた中国から、「国を守る」覚悟が求められる。(ジャーナリスト・仲村覚)