無罪:死亡事故起こした男性 視野狭まる難病知らず
毎日新聞 2012年07月09日 23時19分(最終更新 07月10日 00時22分)
奈良市で昨年3月、歩行者をはねて死亡させたとして自動車運転過失致死罪に問われた男性に対し、奈良地裁(今井輝幸裁判官)は9日、無罪(求刑・禁錮1年8月)を言い渡した。男性は視野が狭くなる難病「網膜色素変性症」であることを知らずに運転しており、「事故は病気が原因」として無罪を主張していた。今井裁判官は「網膜色素変性症により、被害者を見つけることができなかった疑いがある」と判断した。
男性は奈良県宇陀市の農業、小林智被告(43)。判決は、小林被告の目の状態について「網膜色素変性症に罹患(りかん)し、正面はよく見えるがその周辺はドーナツ状に視野が欠けていた」とし、被害男性(当時69歳)を見つけられた可能性は低かったと指摘した。
検察側は「前方注視義務を怠って運転していたのが事故の原因で、病気は関係ない」と主張した。しかし、判決は「前方を見ながらも歩行者を見つけることができなかったという被告の証言は信用できる」とした。また「網膜色素変性症はゆっくりと進行し、自覚することは困難」と述べ、罹患に気づかなかった責任を否定した。